鹿島アントラーズ原理主義

愛する鹿島アントラーズについて、屈折した意見を述べていく場です。

逆転の布石

2011年08月21日 | Weblog
【後藤健生コラム】アントラーズに火をつけたC大阪の先制ゴール
3月の震災以来初めてカシマ・スタジアムに行ってきた。第9節の延期分、鹿島アントラーズ対セレッソ大阪の試合である。震災で被災したスタジアムは、外見的にはすっかり元通りに戻っていた。大きな違いは、屋根に取り付けられていた照明が落下したため、上段スタンドのコーナー付近に照明が取り付けられていること。カシマ・スタジアムの記者席はスタンドの最上段の高いところにあるので、自分の目の高さよりも下に照明が設置されているということになる。このスタジアムは、照明が屋根に付いていたときでも、視線と同じくらいの高さだったのでかなり眩しかった。それよりも下に照明があるというので、「それで眩しくないのか?」と思っていたが、存外眩しくは感じなかった。照明は下に向けられているからだろう。もっとも、選手の立場から見ると、照明の位置が多少低くなった分、眩しいようだ。

慣れていないセレッソ大阪の選手は、時折、ボールが照明に入って眩しそうにしていた。茨城県ではまだまだ余震も多発しており、試合当日朝にも震度4を感じる大きな余震があったし、試合終了直前にもスタンドが揺れた。それでも、スタジアムも元に戻り、そして、低迷していたアントラーズも3連勝と強さが復活して向かえたC大阪戦だった。

前半のアントラーズは、良い意味でも、悪い意味でも、いつものアントラーズに戻っていた。「良い意味」というのは、ボールを丁寧に扱うところである。しっかりとキープして、けっして焦ることなくつなぐ。暑いコンディションを考えても合理的な試合の進め方である。C大阪の方もボールを丁寧につなぐチームだから、前半はともにパスが回る試合だった。

面白かったのは、トップの選手が次々と離脱したアントラーズで、本来はMF(サイドアタッカー)のフェリペガブリエルが大迫勇也と組んでトップでプレーしていたこと。もともとがMFだから、トップに張らずにポジションを動かし、パス回しに参加する。左サイドの野沢拓也とポジションを入れ替える動きなども有効で(C大阪のレビー・クルピ監督好みのプレーでもある)、25分にフェリペガブリエルが左のサイドに開き、野沢がその開いたスペースに走りこんだ場面は大きなチャンスだったが、その動きを狙った小笠原満男のパスは珍しく流れてゴールラインを割ってしまった。

また、フェリペガブリエルと組んだ大迫も、前半からいい働きをしていた。大迫は、後半、すばらしいミドル・シュートで同点ゴールを突き刺して注目されたのだが、前半からトップでしっかりボールを収め、大きなフェイントで相手DFをはずしてシュートまで持ち込む動きがじつにスムースだった。選手によって、突然、何かの拍子に大きく、飛躍的に成長するタイプと、着実に、徐々に成長を続ける選手がいる。どうやら大迫は後者のタイプのようで、見るたびに少しずつプレーの幅が大きくなってきている。鹿島をよく見ている同僚の話では、「U-22代表に呼ばれたことも刺激になっているのでは」ということだったが、U-22代表のためにも大迫の成長は喜ばしいことだ。

閑話休題。「良い意味」でのアントラーズらしさが見えた前半だったが、同時に「悪い意味」でのアントラーズらしさも見えていた。つまり、ボールは持っているのだけれど、強引にしかける場面が少なすぎるのだ。せっかく相手のDFをうまくはずして、突破できる場面を作ったのに、安全第一で後方に戻してしまう場面が目に付いた。もっとも、これはC大阪の方も同じで、こちらも、しっかりキープして、ボランチの中後雅喜や扇原貴宏(リーグ初スタメン)からキム・ボギョンや清武弘嗣へつなげて良い形は作るのだが、決定力には欠けた。

そんな膠着状態に変化を与えたのが、38分の茂庭照幸の一発退場だった。ロングボールを受けた大迫に入れ替わられ、スピードで置いていかれた茂庭が追いかけて、ペナルティーエリア前で後ろからタックル。得点機会の阻止と併せての退場だった。この日の主審の広瀬格氏はファウルの判定が厳しすぎる傾向があったが、この退場の判定は正当なもの。そして、この退場の判定が膠着状態を崩してゲームを動かしたのだから、ゲームの演出としても絶好の判定だった!

さて、1人多くなったアントラーズとしては、どうしても勝点3を取らなければいけないゲームとなった。首位の名古屋グランパスとは勝点で14もの差がある9位。これから逆転優勝を狙う立場のチームとしては、勝点1を積み上げていても意味はない。勝点3を奪うために、後半、どこまで無理をして仕掛けられるか……と注目していたら、ゲームはさらに動いてしまう。

なんと、1人少ないC大阪が先制したのである。

52分、カウンターの場面である。中盤で選手がちょっともつれて、この日の判定基準からするとFKになるかと思われたが、そのままプレーオン。これで、集中が欠けたのか、C大阪が左サイドに展開し、清武のクロスに中央で小松塁とキム・ボギョンが絡んで、あっさりとC大阪が先制したのだ。そして、「1人少ない相手に先制された」という状況で、さすがの鹿島アントラーズにも火がついたのだ。

先制ゴールからわずか4分で、大迫が左から右へと大きく切り替えし、20メートル以上の距離から右足でゴール左上に突き刺す豪快なシュートを決めて同点とすると、オズワルド・オリヴェイラ監督も、興梠慎三、田代有三とFWを2人投入して攻めに入る。そして、選手たちにも、いつもは足りない「強引さ」のようなものが見られた。74分には前線で激しいプレッシャーをかけて、キム・ボギョンのミスを誘い、増田がカットしてチャンスを作り、大迫からのリターンを受けた増田がフリーになって決めて逆転に成功した(逆転した後すぐに大迫を退けて、青木剛を入れて守りに入るあたりは、あの監督らしかった)。

しっかりボールはつながるが、強引に決めきれないいつものアントラーズだった前半。「これでは、逆転優勝は難しいか」と思っていたら、茂庭の退場とC大阪の先制ゴールがアントラーズに火をつけた。もし、今シーズン鹿島アントラーズの逆転優勝があるとしたら、このC大阪戦は大きな転機となった試合として記憶されるはずだ。

後藤 健生 08月18日14:54

後藤氏によるセレッソ戦のコラムである。
鹿島の強さが詰め込まれたこの試合を観戦し、逆転優勝の目を感じておる様子。
我等は後藤氏に言われなくとも信じておる。
今季の最後に笑顔を以って終わりたい。
楽しみにしておる。

最新の画像もっと見る