【J1:第21節 鹿島 vs 東京V】レポート:前半のチャンスを確実に決めた鹿島が4得点の快勝。懸案だった右SB増田も納得のパフォーマンスを見せる。 [ J's GOAL ]
8月16日(土) 2008 J1リーグ戦 第21節
鹿島 4 - 1 東京V (18:30/カシマ/21,431人)
得点者:19' 興梠慎三(鹿島)、43' 岩政大樹(鹿島)、49' マルキーニョス(鹿島)、78' 野沢拓也(鹿島)、81' ディエゴ(東京V)
気温24.3度。試合前から雨が降り始めたカシマスタジアムは、とても涼しいコンディションだった。運動量が落ちる夏場は、本来の試合運びが出来ず、どのチームも戦い方に苦慮するものだが、この試合に限ってはそうした心配はいらなかった。
だが、試合はいきなりヒートアップするのではなく、探り合いの状態から始まった。そこで、徐々に流れを掴んでいったのは鹿島。東京Vは4-4-2で中盤をダイアモンドにする陣形だったが、ディエゴが攻撃に比重を置くため4-3-3気味になるのを見ると中盤を支配。相手の3人のMFが守るゾーンに対して、4 人の中盤やFW・サイドバックが入れ替わり侵入。10分には興梠、小笠原、増田、本山、マルシーニョが細かくパス交換。右サイドから相手を翻弄して見せた。
先制点は19分。曽ヶ端のキックが前線で競り合うマルキーニョスと土屋の元に飛んでいった。しかし、落下地点とずれた場所で競り合っていたため二人とも触れず、ボールは大きく跳ね上がった。そこに走り込んだのは興梠。「越えるかなと思って走った」と、一人だけ状況を先読みして反応。かなりの高さから落ちてくるボールをうまくボレーで叩き、ゴールへ突き刺した。ボールを支配されながらも、最後の部分では足を伸ばしてシュートをブロックしたり、センタリングを許さなかった東京VのDFにすれば痛恨の失点だった。
次の得点を奪ったのも鹿島。左CKに岩政が頭で合わせ、今季初ゴールをあげる。「2点目が取れたのがすごく大きかった」(興梠)。試合を支配しつつ効果的に得点を重ねた鹿島が2-0で試合を折り返した。
東京Vは、前半に一度、右サイドからのセンタリングを飯尾が頭で折り返すという決定機を作った。しかし、平本のシュートは中田にブロックされ、こぼれ球をフリーで打った柴崎のシュートはゴール左に外れてしまう。他にも序盤に平本が岩政と1対1となり、右足でシュートした場面もあったが、総じてゲームは鹿島のペース。シュート数も3本に抑えられていたため、柱谷監督は後半開始から交代策を打った。
大黒と福田を投入し、飯尾とレアンドロを下げ、布陣を4-4-2から3-5-2に変更して、中盤を厚くする。しかし、この交代策は功を奏さなかった。
後半もペースを握ったのは鹿島。49分、左サイドで福田を振り切った新井場がセンタリング。ニアサイドに興梠が飛び込むも触れられず、ファーサイドに流れる。そこに詰めていたのはマルキーニョス。突然抜けてきたボールにうまく体を捻って反応し3点目を奪った。
65分頃から、鹿島の選手たちの足が止まり、ガクッと運動量が落ちる。ここで東京Vは攻勢を強め、河野を投入するも左サイドで孤立。ドリブル突破を期待する余り、誰もフォローに行かないためこの時間人数をかけて守ってきた鹿島の守備網を突破することは出来なかった。
東京Vの運動量が減り、切り替えが常に遅くなると鹿島が盛り返すようになる。本山、マルシーニョを中心にカウンターを仕掛けていくと78分、交代したばかりの野沢が服部をかわしてシュートを決め、試合の行方も決定づけた。その後、81分にディエゴが1点返すも万事休す。終始、ゲームを支配した鹿島が4対1で快勝した。
鹿島にとっては勝点3を取れたことも重要だが、それ以上に意義のある試合になった。内田篤人がいなくなると不安を隠しきれなかった右SBにようやく適任者が現れたからだ。右SBとして初先発した増田誓志が、監督からも高い評価を得る納得のパフォーマンスを見せた。増田自身も、慣れないポジションながら「チャンスは今日まで」と強い気持ちで臨んでいただけに、いい結果で終えることができた。
運動量をいかしたタイミングのいい攻撃参加、縦への突破など、持ち味を十二分に発揮。守備でも高さとねばり強さを見せた。ただ前半に攻撃的に行きすぎて守備に戻りきれない場面が何度か。隣の岩政から「もう少し様子を見ながら走れ」と言われたため、後半は自重した。本人はバランスの難しさを感じていたが経験のない中で及第点以上のプレーを見せたと言えるだろう。
また、これまで周囲と噛み合っていない感が否めなかったマルシーニョもフィットしてきた。まだ、ボールを持つと攻め急いでしまう場面があるが、ディフェンスの裏を狙う動きでスペースを作った。「相手も下がったし、マルシーニョもうまくボールを持てた。あの動きをしてくれるとすごくやりやすい」。中盤でコンビを組んだ本山にもいい印象を与え、鹿島の戦力として認められつつある。
完敗となってしまった東京Vは、ディエゴを青木に封じられ、攻め手がなくなってしまった。ボールの収まるところがないため、他の選手がスペースをつくるために動き出すことが出来ず、余計に鹿島の守備をやりやすくしてしまっていた。前節、良い兆しが見えていただけに、同じようなサッカーが出来なかったのはもったいない。目指すサッカーをやり続けることが勝点を積み重ねることのみならず、ヴェルディらしい強さを取り戻す一番の早道だろう。
以上
2008.08.17 Reported by 田中滋
J's GOALの選評である。
大まかに現地の視点と一致する。
ただ失点シーンは、余計なプレイだったとしても、詳しく分析して欲しいところ。
誓志本人のコメントにあるように彼のミスであり、そこを修正できなければ、上位との対戦に不安を残す。
とはいえ、イノパン、チューヤン、(新井場を右に回して左の)石神が成しえなかった篤人の代役をこなしたことは賞賛に値する。
次は完封と攻撃への絡みを望みたい。
切磋琢磨せよ。
そして対人でボールを奪えるようになれば、次は満男の代役として期待できるようになろう。
期待しておるのだ。
2004年初出場で初得点した増田誓志の更なる飛躍を。
8月16日(土) 2008 J1リーグ戦 第21節
鹿島 4 - 1 東京V (18:30/カシマ/21,431人)
得点者:19' 興梠慎三(鹿島)、43' 岩政大樹(鹿島)、49' マルキーニョス(鹿島)、78' 野沢拓也(鹿島)、81' ディエゴ(東京V)
気温24.3度。試合前から雨が降り始めたカシマスタジアムは、とても涼しいコンディションだった。運動量が落ちる夏場は、本来の試合運びが出来ず、どのチームも戦い方に苦慮するものだが、この試合に限ってはそうした心配はいらなかった。
だが、試合はいきなりヒートアップするのではなく、探り合いの状態から始まった。そこで、徐々に流れを掴んでいったのは鹿島。東京Vは4-4-2で中盤をダイアモンドにする陣形だったが、ディエゴが攻撃に比重を置くため4-3-3気味になるのを見ると中盤を支配。相手の3人のMFが守るゾーンに対して、4 人の中盤やFW・サイドバックが入れ替わり侵入。10分には興梠、小笠原、増田、本山、マルシーニョが細かくパス交換。右サイドから相手を翻弄して見せた。
先制点は19分。曽ヶ端のキックが前線で競り合うマルキーニョスと土屋の元に飛んでいった。しかし、落下地点とずれた場所で競り合っていたため二人とも触れず、ボールは大きく跳ね上がった。そこに走り込んだのは興梠。「越えるかなと思って走った」と、一人だけ状況を先読みして反応。かなりの高さから落ちてくるボールをうまくボレーで叩き、ゴールへ突き刺した。ボールを支配されながらも、最後の部分では足を伸ばしてシュートをブロックしたり、センタリングを許さなかった東京VのDFにすれば痛恨の失点だった。
次の得点を奪ったのも鹿島。左CKに岩政が頭で合わせ、今季初ゴールをあげる。「2点目が取れたのがすごく大きかった」(興梠)。試合を支配しつつ効果的に得点を重ねた鹿島が2-0で試合を折り返した。
東京Vは、前半に一度、右サイドからのセンタリングを飯尾が頭で折り返すという決定機を作った。しかし、平本のシュートは中田にブロックされ、こぼれ球をフリーで打った柴崎のシュートはゴール左に外れてしまう。他にも序盤に平本が岩政と1対1となり、右足でシュートした場面もあったが、総じてゲームは鹿島のペース。シュート数も3本に抑えられていたため、柱谷監督は後半開始から交代策を打った。
大黒と福田を投入し、飯尾とレアンドロを下げ、布陣を4-4-2から3-5-2に変更して、中盤を厚くする。しかし、この交代策は功を奏さなかった。
後半もペースを握ったのは鹿島。49分、左サイドで福田を振り切った新井場がセンタリング。ニアサイドに興梠が飛び込むも触れられず、ファーサイドに流れる。そこに詰めていたのはマルキーニョス。突然抜けてきたボールにうまく体を捻って反応し3点目を奪った。
65分頃から、鹿島の選手たちの足が止まり、ガクッと運動量が落ちる。ここで東京Vは攻勢を強め、河野を投入するも左サイドで孤立。ドリブル突破を期待する余り、誰もフォローに行かないためこの時間人数をかけて守ってきた鹿島の守備網を突破することは出来なかった。
東京Vの運動量が減り、切り替えが常に遅くなると鹿島が盛り返すようになる。本山、マルシーニョを中心にカウンターを仕掛けていくと78分、交代したばかりの野沢が服部をかわしてシュートを決め、試合の行方も決定づけた。その後、81分にディエゴが1点返すも万事休す。終始、ゲームを支配した鹿島が4対1で快勝した。
鹿島にとっては勝点3を取れたことも重要だが、それ以上に意義のある試合になった。内田篤人がいなくなると不安を隠しきれなかった右SBにようやく適任者が現れたからだ。右SBとして初先発した増田誓志が、監督からも高い評価を得る納得のパフォーマンスを見せた。増田自身も、慣れないポジションながら「チャンスは今日まで」と強い気持ちで臨んでいただけに、いい結果で終えることができた。
運動量をいかしたタイミングのいい攻撃参加、縦への突破など、持ち味を十二分に発揮。守備でも高さとねばり強さを見せた。ただ前半に攻撃的に行きすぎて守備に戻りきれない場面が何度か。隣の岩政から「もう少し様子を見ながら走れ」と言われたため、後半は自重した。本人はバランスの難しさを感じていたが経験のない中で及第点以上のプレーを見せたと言えるだろう。
また、これまで周囲と噛み合っていない感が否めなかったマルシーニョもフィットしてきた。まだ、ボールを持つと攻め急いでしまう場面があるが、ディフェンスの裏を狙う動きでスペースを作った。「相手も下がったし、マルシーニョもうまくボールを持てた。あの動きをしてくれるとすごくやりやすい」。中盤でコンビを組んだ本山にもいい印象を与え、鹿島の戦力として認められつつある。
完敗となってしまった東京Vは、ディエゴを青木に封じられ、攻め手がなくなってしまった。ボールの収まるところがないため、他の選手がスペースをつくるために動き出すことが出来ず、余計に鹿島の守備をやりやすくしてしまっていた。前節、良い兆しが見えていただけに、同じようなサッカーが出来なかったのはもったいない。目指すサッカーをやり続けることが勝点を積み重ねることのみならず、ヴェルディらしい強さを取り戻す一番の早道だろう。
以上
2008.08.17 Reported by 田中滋
J's GOALの選評である。
大まかに現地の視点と一致する。
ただ失点シーンは、余計なプレイだったとしても、詳しく分析して欲しいところ。
誓志本人のコメントにあるように彼のミスであり、そこを修正できなければ、上位との対戦に不安を残す。
とはいえ、イノパン、チューヤン、(新井場を右に回して左の)石神が成しえなかった篤人の代役をこなしたことは賞賛に値する。
次は完封と攻撃への絡みを望みたい。
切磋琢磨せよ。
そして対人でボールを奪えるようになれば、次は満男の代役として期待できるようになろう。
期待しておるのだ。
2004年初出場で初得点した増田誓志の更なる飛躍を。