【第93回天皇杯 2回戦 鹿島 vs ソニー】レポート:多くの若手が先発した鹿島だったが試合を決めたのは交代出場したベテランたち。キャプテン小笠原は、若手を叱咤激励して成長を促す。(13.09.08)
9月7日(土) 第93回天皇杯 2回戦
鹿島 3 - 0 ソニー (17:04/カシマ/3,194人)
得点者:81' 山村 和也(鹿島)、89' 野沢 拓也(鹿島)、90'+4 遠藤 康(鹿島)
小笠原満男が、試合に勝ってもミックスゾーンで苦い表情を見せることは珍しくない。しかし、この日は珍しく本当に怒っていた。
「言いたいことはいっぱいあるけど、本人に直接伝えます」。
聞けば試合中から、そしてロッカーに帰ってからも怒っていたらしい。チャンスをもらった若手選手たちが見せた姿勢と、小笠原が予想していたそれとでは、大きくかけ離れていた。
小笠原には強く心に刻み込まれた試合があった。
つい1ヶ月前に行われたスルガ銀行チャンピオンシップである。17歳や19歳の選手たちが先発として起用されたサンパウロFCは、いわば2軍と呼んでも差し支えない陣容だった。しかし、チャンスを与えられた若手選手にとっては、願ってもないアピールのチャンス。必死にボールに食らいつく姿に改めて感銘を受け、「若い選手がやってやろうという姿勢を向こうが見せたのが自分としては印象的だった」と感想をもらしていた。鹿島の若手にも、そうあって欲しいという親心だった。
しかし、同じようにチャンスを与えられた鹿島の若手選手たちからは、飢餓や渇望を満たすギラギラした目つきはなく、勝負に対する執念もソニー仙台の方が若干上回る展開となる。ボールは鹿島がキープしたものの、攻撃の形がつくれずシュートも散発。前半の終わり際に、小笠原のフリーキックを山村和也が頭で合わせポストを強襲する場面もあったが、前半はわずか4本に抑えられてしまった。
後半は、ソニー仙台がペースを掴みチャンスを迎えたが曽ヶ端準が阻止。瀬田貴仁がゲームをつくり、小泉慶治や中村元が驚異的な走力を見せていたソニー仙台は、この時間帯で得点が欲しいところだった。しかし、前半から守備の時間が多かったこともあり徐々に足が止まると、77分に松岡祐介が2度目の警告を受けて退場。流れは完全に鹿島へ傾いた。スペースができはじめれば、後半頭から入っていた本山雅志、70分に入った野沢拓也、77分に入ったジュニーニョが自由に動き出す。81分にコーナーキックの流れから山村が押し込み先制点を奪うと、89分には本山、ジュニーニョ、野沢と流れるような崩しから2点目を奪い、90+4分にはジュニーニョのクロスを遠藤康がプロ初となるヘディングでのゴールを押し込み、終わってみれば3-0での快勝となった。
若手にとっては結果が残せなかった試合となったが、この試合で学んだものも少なくなかった。試合中、クロスの精度について小笠原から厳しい言葉で指摘された伊東幸敏は「今日の1日は、いままでのなかでも良い経験になった試合だった」と話していた。先発の一角を得ようとしている土居聖真も、若手が先発してベテランが試合を決めたことに「それがベテランと若手の関係性」と触れながらも「逆の立場になってもそうしないといけない」と課題を見出していた。
タイトルを取り続けるクラブでレギュラーとなるためには、どのレベルに達しなければならないのか。若い選手たちには、いままでは漠然としていたものが試合に出たことで、実感として掴めたはずだ。この試合を契機にして、練習で切磋琢磨するようになれば、クラブ全体の質は高まる。次の時代を担う選手たちには、とても良い経験となる試合だった。
以上
2013.09.08 Reported by 田中滋
有り体に申せば、出場機会のない若手にはそれなりの理由があり、重用されるベテランには起用される才能があるということがはっきりしたということであろう。
とはいえ、さすがにこの1試合にて全てを結論づけるわけには行かぬ。
しかしながら、インパクトを残せぬものが、この先もっと手強い同カテゴリーの相手に通用すると考えるのは難しい。
そして、この結果は持っておる能力と片付けるよりも、この試合に臨むモチベーション、気持ちの持って行きようと考えることが出来る。
だからこそ、小笠原主将が憤ることとなったのだ。
今は経験不足の若手で済まされることであるが、来季になれば、新しい選手が入団し、若手から遠ざかっていく。
この数少ないチャンスをものに出来ぬようでは、鹿島にてポジションを得ることは難しい。
と、厳しい言葉も彼等にとっては糧となろう。
この試合を良い経験とし、成長していって欲しい。
期待しておる。
9月7日(土) 第93回天皇杯 2回戦
鹿島 3 - 0 ソニー (17:04/カシマ/3,194人)
得点者:81' 山村 和也(鹿島)、89' 野沢 拓也(鹿島)、90'+4 遠藤 康(鹿島)
小笠原満男が、試合に勝ってもミックスゾーンで苦い表情を見せることは珍しくない。しかし、この日は珍しく本当に怒っていた。
「言いたいことはいっぱいあるけど、本人に直接伝えます」。
聞けば試合中から、そしてロッカーに帰ってからも怒っていたらしい。チャンスをもらった若手選手たちが見せた姿勢と、小笠原が予想していたそれとでは、大きくかけ離れていた。
小笠原には強く心に刻み込まれた試合があった。
つい1ヶ月前に行われたスルガ銀行チャンピオンシップである。17歳や19歳の選手たちが先発として起用されたサンパウロFCは、いわば2軍と呼んでも差し支えない陣容だった。しかし、チャンスを与えられた若手選手にとっては、願ってもないアピールのチャンス。必死にボールに食らいつく姿に改めて感銘を受け、「若い選手がやってやろうという姿勢を向こうが見せたのが自分としては印象的だった」と感想をもらしていた。鹿島の若手にも、そうあって欲しいという親心だった。
しかし、同じようにチャンスを与えられた鹿島の若手選手たちからは、飢餓や渇望を満たすギラギラした目つきはなく、勝負に対する執念もソニー仙台の方が若干上回る展開となる。ボールは鹿島がキープしたものの、攻撃の形がつくれずシュートも散発。前半の終わり際に、小笠原のフリーキックを山村和也が頭で合わせポストを強襲する場面もあったが、前半はわずか4本に抑えられてしまった。
後半は、ソニー仙台がペースを掴みチャンスを迎えたが曽ヶ端準が阻止。瀬田貴仁がゲームをつくり、小泉慶治や中村元が驚異的な走力を見せていたソニー仙台は、この時間帯で得点が欲しいところだった。しかし、前半から守備の時間が多かったこともあり徐々に足が止まると、77分に松岡祐介が2度目の警告を受けて退場。流れは完全に鹿島へ傾いた。スペースができはじめれば、後半頭から入っていた本山雅志、70分に入った野沢拓也、77分に入ったジュニーニョが自由に動き出す。81分にコーナーキックの流れから山村が押し込み先制点を奪うと、89分には本山、ジュニーニョ、野沢と流れるような崩しから2点目を奪い、90+4分にはジュニーニョのクロスを遠藤康がプロ初となるヘディングでのゴールを押し込み、終わってみれば3-0での快勝となった。
若手にとっては結果が残せなかった試合となったが、この試合で学んだものも少なくなかった。試合中、クロスの精度について小笠原から厳しい言葉で指摘された伊東幸敏は「今日の1日は、いままでのなかでも良い経験になった試合だった」と話していた。先発の一角を得ようとしている土居聖真も、若手が先発してベテランが試合を決めたことに「それがベテランと若手の関係性」と触れながらも「逆の立場になってもそうしないといけない」と課題を見出していた。
タイトルを取り続けるクラブでレギュラーとなるためには、どのレベルに達しなければならないのか。若い選手たちには、いままでは漠然としていたものが試合に出たことで、実感として掴めたはずだ。この試合を契機にして、練習で切磋琢磨するようになれば、クラブ全体の質は高まる。次の時代を担う選手たちには、とても良い経験となる試合だった。
以上
2013.09.08 Reported by 田中滋
有り体に申せば、出場機会のない若手にはそれなりの理由があり、重用されるベテランには起用される才能があるということがはっきりしたということであろう。
とはいえ、さすがにこの1試合にて全てを結論づけるわけには行かぬ。
しかしながら、インパクトを残せぬものが、この先もっと手強い同カテゴリーの相手に通用すると考えるのは難しい。
そして、この結果は持っておる能力と片付けるよりも、この試合に臨むモチベーション、気持ちの持って行きようと考えることが出来る。
だからこそ、小笠原主将が憤ることとなったのだ。
今は経験不足の若手で済まされることであるが、来季になれば、新しい選手が入団し、若手から遠ざかっていく。
この数少ないチャンスをものに出来ぬようでは、鹿島にてポジションを得ることは難しい。
と、厳しい言葉も彼等にとっては糧となろう。
この試合を良い経験とし、成長していって欲しい。
期待しておる。