鹿島アントラーズ原理主義

愛する鹿島アントラーズについて、屈折した意見を述べていく場です。

V逸の理由は如何に

2010年12月16日 | Weblog
“常勝”鹿島に突きつけられた課題
岐路に立つ79年組体制

2010年12月16日(木)
■4連覇の可能性はかなり薄かった


4連覇を逃した鹿島は、最終的に4位に沈んだ【写真:アフロ】

 72、63、66、60。
 オズワルド・オリベイラが率いるようになった4シーズン、鹿島アントラーズが獲得した勝ち点を並べると、こういう数字となる。今季と3連覇を果たした昨季との数字を比べてみても差はわずかに6なのだ。しかし、終盤に追い付かれてしまった第26節の湘南ベルマーレ戦などを、しっかり勝ち切ったとしても名古屋グランパスの独走を止めることはできなかっただろう。

 なぜなら、数字を見れば明らかだが、鹿島の勝ち点が70を超えたのは終盤の9連勝で優勝をもぎ取った07年の1度しかない。しかし、第29節の直接対決を前にして、名古屋の勝ち点はすでに60に達していた。残り6試合を五分五分の成績だったとしても、勝ち点は69まで延びてしまう。そうなると鹿島のペースでは、追い付くのが難しかったのだ。

 そのことは、選手たちも痛感していた。まだ名古屋との直接対決を残し、わずかながら逆転優勝の可能性が残された時期でも、岩政大樹は「これだけ走られてしまうと、うちの戦い方を考えると厳しいんですよね」と、ため息混じりに漏らすこともあった。確かに、ヴィッセル神戸に引き分け、ジュビロ磐田に敗れるなど、シーズン終盤の戦い方はふがいないものだった。しかし、今季は、3連覇したシーズンと比べると、まったく違う様相を持ったタイトル争いだったのである。過去3年と同じように戦った鹿島の4連覇の可能性はかなり薄かった。

■チーム力を表す二つの要素

 変えたのは、もちろん名古屋だ。鹿島の鈴木満常務取締役強化部長も、そのことを強く認識していた。
「これまでの名古屋は100の戦力を用意しても、その半分の50くらいの力しか出せなかった。だから、うちが80の戦力だとしても、発揮率を高めて70にすれば勝てた。でも、今年は戦力を150にしてきた。そうすると発揮率はそのままでも75になる。大概、どこのチームもそこまでできないけど、久米さんはやり切った。いまの時代、そこまでやり切るは久米さんしかいない」

「久米さん」というのは名古屋の久米一正ゼネラルマネージャーのこと。くしくも2人は中央大学サッカー部の先輩と後輩になる。久米が柏レイソルに在籍していた時期から、強化担当者同士しのぎを削り、久米にとって鈴木の存在は常に「目の上のたんこぶ」だったのだ。
 鈴木によると、チームの力を表すには二つの要素があるという。一つは、優秀な選手がいればいるほど高くなるチームが持つポテンシャル、つまり戦力の「絶対値」だ。もう一つが「発揮率」。いくら良い選手がたくさんいても、その能力が発揮されなければ宝の持ち腐れとなってしまう。編成を苦慮し、選手をうまく組み合わせ、モチベーションを高く保つようにサポートを欠かさないことで、発揮率は高められる。

 鹿島というか、鈴木が得意としてきたのは発揮率を極限まで高めることだ。例え話とはいえ、80の戦力があれば70まで発揮させることができると豪語できるのは鈴木くらいだろう。発揮率は0.875。チームが持つポテンシャルを、ほとんどすべて出させているのだ。
 とはいえ、どんなに力を発揮しても絶対値が80ならば、発揮率が100%だとしても80を超えることはない。強力な布陣を敷いてきた名古屋のやり方が軌道に乗り始めたこともあり、追走することはできなかった。

■逆転を狙う場面で小笠原をベンチに下げる


オリベイラ監督の戦い方はチームの実情にそぐわなかった。来季は新しい戦い方を模索する必要がある【写真:アフロ】

 しかし、名古屋の独走を許してしまった要因は強化部の方針だけではなく、さまざまな要素が絡み合った結果だ。オリベイラ監督の戦い方が、チームの実情にそぐわなくなってしまったことも、一つの要因として見逃せない。これまでは、威風堂々とした指揮官に率いられどんな相手を前にしても戦い方を変えず王道を歩んできたが、今季はそのやり方では勝てなかった。疲弊した主力選手たちのパフォーマンスは一貫して高まらず、元気な若手は気持ちをくすぶらせてしまったのである。

 オリベイラはメンバーを固定して戦う。そのため終始一貫して戦い方はぶれず、安定した成績を残すことができていた。夏場になると毎年のように失速する鹿島だが、昨季にあった5連敗後の復活劇の際も「戻る場所があった」と小笠原満男が話したように、やり方を変えずに戦うことが3連覇につながっていた。フィジカルコーチ出身の監督らしく、年間を通じてピークをどこにもってくるのか計算され尽くしたコンディショニングで、他チームの追随を許さず、11月、12月の終盤戦は無敗を誇ってきた。ところが今季は、夏場に落ちた運動量がいつまで経っても戻らず、試合をコントロールする王道のサッカーを志すも、そこからほど遠いサッカーしか見せることができなかったのである。

 終盤戦は、その移り変わりを顕著に表していたのかもしれない。リーグ戦で8年ぶりに勝利を譲った11月23日の磐田戦後、伊野波雅彦は沈痛な面持ちだった。
「見た人が一番分かるでしょ」
 動けない中盤はセカンドボールを支配され、試合をコントロールするどころではなかった。

 次の京都サンガF.C.戦では、目を疑う光景が待っていた。速攻から左サイドを攻め上がる小笠原。ペナルティーエリアに侵入し、左足で中央に折り返そうとしたその時、軸足の右足に力が入らず左足を振り抜くことができなかった。ボールは転々とエンドラインを割っていった。
 最終節のモンテディオ山形戦では、逆転を狙うための大切な時間帯に交代を命じられたのが、その小笠原だった。こうした大事な場面でキャプテンをベンチに下げる判断を、オリベイラ監督が下したのは初めての出来事だった。

■新しいやり方を模索しなければ今季の二の舞も

「今年は良くない時期も確かにあった。チームも勝てなかったし」
 小笠原は自身の今季をそう振り返った。ただ、悔しさを糧にして天皇杯や来季に向かうわけでもないという。
「悔しい、悔しいと言って勝てるなら、次の試合にも悔しさをぶつけますけど、そうじゃない。それに、常に満足はないですね。勝ったとしても、喜びはあるけど満足はない」

 もしかしたら、その繰り返しが“常勝”を支えてきたのかもしれない。とはいえ、鹿島は来季から新たなサイクルに入る。小笠原とともにオリベイラ体制のエースFWだったマルキーニョスが退団。惜しむ声も聞かれるが、マルキーニョスがリーグ戦に先発で出場できなかった試合は、昨季の3に対し今季は7と急増した。得点は11と二けたを超えたが、その得点パターンはごくごく限られたものだけになり、衰えは隠しようがなかった。

 また、名古屋との戦力差を最小限に押しとどめる必要性もある。当初は、小笠原や中田浩二といった79年組から来季に入団するプラチナ世代への緩やかな世代交代が予定されていたが、本山雅志がこの1年でほとんどピッチに立てないなど(15試合出場)、想定外の事態を迎えている。「小笠原ら、主力が動けるうちに」という狙いも、いつ絵空事になってしまうか分からない。ちょうどその間の世代となる清水エスパルスの本田拓也獲得へ動き、戦力の充実を図る理由も推し量れる。

 ただ、そうなれば監督の采配(さいはい)も変わらざるを得ないだろう。
 名古屋があれだけの戦力を集めた以上、ある程度の戦力を確保しなければ対抗できない。しかし、まだ正式な合意はないが、オリベイラ監督続投の方針に変わりはなく、メンバーを固定する従来のやり方では不満がたまることは避けられない。控え選手たちの不満を、自らの練習姿勢で抑えていた大岩剛も引退する。勝点70を目指した戦いになった時、もし従来のまま、シーズン半ばに失速するようなことがあれば、それは優勝戦線からの離脱を意味する可能性もある。新しいやり方を模索しなければ難しいだろう。
 来季、チーム創設20周年という記念すべき年を迎える鹿島。どんな姿で現れるのだろうか。


<了>

田中氏による2010年の鹿島を振り返るコラムである。
優勝した名古屋の戦力と監督の戦い方にスポットが当たっておる。
概ね、多くの人々が思う結論に近いと思われる。
まず、名古屋の戦力は突出しておったことは事実であろう。
代表クラス、外国人をずらりと並べた選手層は他のクラブからすると羨望の眼差しであったに違いない。
特にGK、CB、FWは日本屈指と言っても過言では無かろう。
そして、それ以上にサブが充実しておった事が優勝の要因との分析である。
それもまた、一つの考え方と言えよう。
とはいえ、今季の鹿島も+1構想として、それぞれのポジションに+1人の人員を配し戦力を増強したとのことであった。
この状況は鹿島以上に名古屋は充実した戦力を有したということなのであろう。
確かに、本山の離脱や、篤人・イ・ジョンスの移籍など、戦力低下に対して手を拱いたことは紛れもない事実である。
ヤスの成長や、ジウトンの抜擢で、サブの層が極端に薄くなってしまったことは手に取るようにわかった。
また、監督の采配も一つの大きな要素と言う。
確かにメンバーを固定して戦っておるように映る戦術は、そう受け取られても仕方のないところと言えよう。
しかしながら、前述したように、選手層を考慮すると、変えようがなかったことも事実では無かろうか。
船山や修人を重要な試合で起用できたかどうか疑問である。
ジウトンや新井場に代わって出場した宮崎と當間が結果を残したかと言うとそうとは言いきれぬ。
流石に大迫にマルキーニョスの代役は荷が重すぎた。
単に監督の戦い方だけを批判するのは、浅はかのように思えるのも事実であろう。
今季の反省は反省として検討したい。
そして、来季に目を向けると、新戦力を多く抱えることとなろう。
今季とは異なる戦い方で、また新たにチャレンジしていきたいと思う。

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8 コメント

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進化と新化 (Unknown)
2010-12-16 12:51:20
責めるわけではないのですが、監督は、3連覇した成功体験に縛られていたかな、とも感じます。それは人間の性ですから、いたしかたないのですが…。もちろん、監督だけではなく選手やサポも然り。2010年、「常勝」ではなかった上に、「王者」でもなくなった鹿島。マルキが去り、大岩さんも鹿島を離れる今、鹿島はどうなっていくのか「真価」が問われます。この冬が「進化と新化を遂げる冬」であって欲しいと思っています。
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Unknown (ゆーた)
2010-12-16 14:15:48
鹿島のサッカーって面白くないですよね。オリベイラのせい?
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Unknown (Unknown)
2010-12-16 14:48:33
じゃあ、見るの止めれば。
俺は面白いと思うぜ。
負けたらつまらないけど。
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Unknown (Unknown)
2010-12-16 21:25:44
やはり、本山のポジションですよね。彼の不在が痛すぎた。特に攻撃面で。それと、満男のプレイ、やはり衰えてるのかな?79年組に頼りきってきた結果が今シーズン順位ということですね。
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Unknown (Unknown)
2010-12-16 22:25:40
このコラムを読んで、抜けている視点が二つあるなと思います。

1つ目。
監督がどうとかより、原理さんの言うように純粋に戦力の層が薄かったのが大きかったと思います。
それは名古屋と比べてというより、去年の鹿島と比べて。
田代、増田、ダニーロ、チュホが抜けてその上篤人も抜け、本山も今年は殆ど出ていません。
補強したジョンスは抜けた田代やダニーロの高さをも補う存在でしたが、そのジョンスも夏に抜けてしまった。
むしろ自分は、この戦力で最終節まで2位につけていたことに驚きます。
この戦力では、多分モウリーニョでも優勝できないでしょう。

2つ目。
名古屋は来季は今年ほど走れないだろうということです。
対戦相手が研究し、うちと同じように引いてくる相手が増えるだろうというのが一つ。
また、ナビスコや天皇杯をあっさり捨てるピクシーのやり方では、ACLとリーグ戦を両方獲るにはおそらく苦労するだろうと思われるからです。
名古屋は大補強しましたが、リーグ戦では殆ど固定メンバーで戦っているという点では鹿島と同じなので、
そこをどうするのかは見どころですね。
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Unknown (Unknown)
2010-12-16 23:24:37
守備はリーグの最小失点なので評価してよいと思う。
問題は攻撃力。外国人の補強の失敗。助っ人にふさわしい働きをしなかったこと。あと1点欲しいときやチームがピンチのときに得点やアシストでチームを救うようなプレーをして欲しかった。
ACLのタイトルを目標にしてスタートしたが
タイトルをとった城南に比べると攻撃が全然だね。ラドンチッチは横浜Mが狙っているらしいが。
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Unknown (XY16)
2010-12-16 23:51:01
 
選手層が薄い中で 
リーグ優勝を求めるのは 
鹿島であっても 
難しいことだと 
今季の戦いで痛感しました。 
 
プレミアリーグの強豪 
チェルシーも 
今季の序盤戦こそ 
首位を維持していましたが 
層の薄さが如実にあらわれ 
今では4位と低迷しています。 
 
ACL出場権を獲得した場合 
また仮に獲得できなくても 
若手が実力で 
ポジションを確保できない以上 
大型補強は 
自然な流れなのだと思います。 
 
 
とりあえず 
ACL出場権を得るためにも 
必ず天皇杯を優勝しましょう!! 
 
 
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Unknown (Unknown)
2010-12-19 21:08:45
若手が育たないのはどこに問題があるのか、
ここを突き詰めないといけない時期にあると思う
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