強さを取り戻した鹿島。トニーニョ・セレーゾは常勝軍団に何をもたらしたのか?
昨季、リーグ戦11位とまさかの順位に終わった鹿島アントラーズ。トニーニョ・セレーゾ監督を迎えた今季はここまで4位と強さを取り戻した感がある。昨季との変化とは何か? 番記者が迫る。
2013年05月25日
text by 田中滋 photo Kenzaburo Matsuoka
セレーゾ監督がまず取り組んだこととは?
第12節を終えて4位と鹿島が悪くない位置に付けている。
本来、毎年のようにこうした順位にいるチームではあるが、昨季の11位という結果のインパクトが大きすぎた。なにか久々に戻って来た印象さえある。実際、昨季は12節を終えた段階で13位に沈んでおり、そのままほとんど順位を変えることなくシーズンを終えたのだった。
トニーニョ・セレーゾ監督が取り組んだDFラインの整備【写真:松岡健三郎】
なにが変わったのかと問われれば、守備と断言することができる。数字だけを見ると16失点から15失点と、12試合を終えた段階での変化はわずか1だ。しかし、その内実は大きな変化が起きている。組織的な守備が整備され、その精度は試合ごとに高まっている。
トニーニョ・セレーゾ監督が最初に取り組んだのがDFラインの整備だ。ボールの動きに合わせてつねにラインを微調整することを選手たちに求めた。だが、それにはこれまで使ってこなかった神経を尖らせなければならない。結果、序盤戦はその集中力が試合終了まで保たず、後半に失速、失点を重ねる試合が続いてしまった。
しかし、慣れてくれば運動量の急速な減少は見られなくなってきた。選手たちからは逆転負けを喫した大宮戦あたりから「手応えを感じていました」(青木剛)という声が聞かれていた。つねにコンパクトな布陣を保ち、相手にスペースを与えない。そうした守備ができるようになってきたのである。
改善点は多いが対応力は格段に上がった
攻撃面では改善ポイントも【写真:松岡健三郎】
ただ、相手も手をこまねいているはずはない。コンパクトな守備を広げようと2列目の選手がDFラインの裏に飛び出したり、様々な動きを仕掛けてくる。昨季は、そうした相手の動きに対しての対応方法がほぼなにも無かった。
2列目の選手の飛び出しにボランチが付いていくのか、CBに受け渡すのか、その決まりがない。そのため、いつも行き当たりばったりの対処となり、勝ったり負けたりのリーグ戦成績に比例していた。
ところがいまは、ボランチが対応するという基本線が固まっている。それどころか、ボールがどの位置にあるかで、それぞれの選手が取るべきポジショニングまで細かく指示を受けているくらいだ。
それには高い戦術理解度が求められるため、応えられる選手はどうしても経験値が豊富なベテラン選手が多くなっている。開幕以来ずっと、セレーゾ監督はチームの底上げを図るため、時間を惜しまず、二部練習などで若手を徹底指導している。その期待に応えるかのように、中村充孝が本来のパフォーマンスを鹿島の戦術を踏まえた上で発揮し始めた。
とはいえ、すべてがうまく進んでいるわけではない。若手CBで臨んだ先のヤマザキナビスコ杯セレッソ大阪戦では、開始2分で高いバックラインの背後を突かれ失点している。またセットプレーの守備も、それほどマークが得意でないダヴィに優先度の高い選手を任せていたこともあり、浦和戦のようにあっさり失点する場面も見られている。
攻撃力もまだ流動性を生かし切れておらず、改善すべき点は多い。しかし、開幕から3ヶ月弱である程度のレベルまで達したことは驚きだ。中断明けの戦いが、いまから楽しみである。
【了】
守備に手を加えたトニーニョ・セレーゾである。
細かい約束事を徹底し、鹿島を見事立て直しておる。
とはいえ、まだまだ改善点も多いと語る。
この中断期間にて更なる熟成を行い、タイトルを目指そうではないか。
楽しみである。
昨季、リーグ戦11位とまさかの順位に終わった鹿島アントラーズ。トニーニョ・セレーゾ監督を迎えた今季はここまで4位と強さを取り戻した感がある。昨季との変化とは何か? 番記者が迫る。
2013年05月25日
text by 田中滋 photo Kenzaburo Matsuoka
セレーゾ監督がまず取り組んだこととは?
第12節を終えて4位と鹿島が悪くない位置に付けている。
本来、毎年のようにこうした順位にいるチームではあるが、昨季の11位という結果のインパクトが大きすぎた。なにか久々に戻って来た印象さえある。実際、昨季は12節を終えた段階で13位に沈んでおり、そのままほとんど順位を変えることなくシーズンを終えたのだった。
トニーニョ・セレーゾ監督が取り組んだDFラインの整備【写真:松岡健三郎】
なにが変わったのかと問われれば、守備と断言することができる。数字だけを見ると16失点から15失点と、12試合を終えた段階での変化はわずか1だ。しかし、その内実は大きな変化が起きている。組織的な守備が整備され、その精度は試合ごとに高まっている。
トニーニョ・セレーゾ監督が最初に取り組んだのがDFラインの整備だ。ボールの動きに合わせてつねにラインを微調整することを選手たちに求めた。だが、それにはこれまで使ってこなかった神経を尖らせなければならない。結果、序盤戦はその集中力が試合終了まで保たず、後半に失速、失点を重ねる試合が続いてしまった。
しかし、慣れてくれば運動量の急速な減少は見られなくなってきた。選手たちからは逆転負けを喫した大宮戦あたりから「手応えを感じていました」(青木剛)という声が聞かれていた。つねにコンパクトな布陣を保ち、相手にスペースを与えない。そうした守備ができるようになってきたのである。
改善点は多いが対応力は格段に上がった
攻撃面では改善ポイントも【写真:松岡健三郎】
ただ、相手も手をこまねいているはずはない。コンパクトな守備を広げようと2列目の選手がDFラインの裏に飛び出したり、様々な動きを仕掛けてくる。昨季は、そうした相手の動きに対しての対応方法がほぼなにも無かった。
2列目の選手の飛び出しにボランチが付いていくのか、CBに受け渡すのか、その決まりがない。そのため、いつも行き当たりばったりの対処となり、勝ったり負けたりのリーグ戦成績に比例していた。
ところがいまは、ボランチが対応するという基本線が固まっている。それどころか、ボールがどの位置にあるかで、それぞれの選手が取るべきポジショニングまで細かく指示を受けているくらいだ。
それには高い戦術理解度が求められるため、応えられる選手はどうしても経験値が豊富なベテラン選手が多くなっている。開幕以来ずっと、セレーゾ監督はチームの底上げを図るため、時間を惜しまず、二部練習などで若手を徹底指導している。その期待に応えるかのように、中村充孝が本来のパフォーマンスを鹿島の戦術を踏まえた上で発揮し始めた。
とはいえ、すべてがうまく進んでいるわけではない。若手CBで臨んだ先のヤマザキナビスコ杯セレッソ大阪戦では、開始2分で高いバックラインの背後を突かれ失点している。またセットプレーの守備も、それほどマークが得意でないダヴィに優先度の高い選手を任せていたこともあり、浦和戦のようにあっさり失点する場面も見られている。
攻撃力もまだ流動性を生かし切れておらず、改善すべき点は多い。しかし、開幕から3ヶ月弱である程度のレベルまで達したことは驚きだ。中断明けの戦いが、いまから楽しみである。
【了】
守備に手を加えたトニーニョ・セレーゾである。
細かい約束事を徹底し、鹿島を見事立て直しておる。
とはいえ、まだまだ改善点も多いと語る。
この中断期間にて更なる熟成を行い、タイトルを目指そうではないか。
楽しみである。