【J1:第19節 C大阪 vs 鹿島】レポート:笑顔と怒りと涙の乾貴士C大阪ラストダンス。チームは鹿島に逆転負けも、会心のゴールを置き土産に、海を渡る。(11.08.01)
7月31日(日) 2011 J1リーグ戦 第19節
C大阪 1 - 3 鹿島 (18:04/長居/28,039人)
得点者:22' 乾貴士(C大阪)、38' 田代有三(鹿島)、45'+2 田代有三(鹿島)、90'+3 小笠原満男(鹿島)
タイムアップの笛が鳴ると、乾貴士は涙に暮れた。大好きなC大阪でのラストゲームは、鹿島に1-3の逆転負け。勝てなかった悔しさ、走馬燈のように蘇ってきたC大阪で過ごした約3年間の思い出などあったのだろう。「いろいろ考えてしまった」思いから、試合後、そしてセレモニーでは、涙をこらえきれず、顔をくしゃくしゃにした。でも、その姿も、乾らしさの1つ。最後は胸を張って、次のステージに向かって、ピッチを後にした。
大阪長居スタジアムには、J2時代から香川真司(現ドルトムント)と切磋琢磨しながら、C大阪をJ1へ、そしてACLへと導いた7番の勇姿を一目見ようと、今季ホーム最多となる28,039人が集まった。そして、乾自身も、キックオフから全力プレーを見せ、前半22分、サポーターの思いに自ら応えた。
ハーフウェイライン付近でボールを受けると、鮮やかなタッチとターンで一気に2人をかわし、そこから猛然とドリブルで中央突破。そして、「間を抜けて、シュートを打つイメージ」から、ペナルティーエリア手前付近から豪快に右足を振り抜くと、ボールはきれいな弾道でネットを揺らした。その瞬間、場内からは大歓声。観衆を魅了する「セクシー」な一撃で、新たな門出を自ら祝うゴールで、C大阪に先制点をもたらした乾は、ベンチで待つ仲間のところに一目散に駆け寄り、喜びを分かち合った。
2009年J2第48節草津戦で乾自身が4得点を決めてJ1復帰の切符を勝ち取った時のように、今回の試合もここから「乾祭り」が展開されるのかと思われたが、C大阪はリードしてからの前半、鹿島に一瞬の隙をつかれて逆襲に遭う。38分、GKキム ジンヒョンがキャッチしたボールを不意にピッチに転がし、そこから味方につなごうとした瞬間、背後から虎視眈々と狙っていた鹿島FW田代有三に奪われ、無人のゴールに流し込まれた。それまでは好セーブを連発するも、この1プレーで動揺したキム ジンヒョンは、終了間際にも相手FKからのゴール前の競り合いで判断に躊躇し、またしても田代にヘッドを決められ、逆転を許した。当のキム ジンヒョンは失意のどん底のような様子も、リザーブGK松井謙弥をはじめ、C大阪の選手たちに励まされ、気分新たに後半へ臨む。
後半は逆転を目指し、途中から清武弘嗣、永井龍、黒木聖仁をピッチに送り込んだC大阪。鹿島との次の1点を巡る攻防戦のなか、清武、乾、倉田の3シャドーでスピードのあるショートパスを何本もつなぎながらリズムを作っていく。すると、77分に得た乾のFKは相手に当たり枠をわずかに逸れるも、そのすぐ後の乾のCKから、ペナルティーエリア内でキム ボギョンが倒され、PKのチャンスを得る。
キッカーは乾、と思いきや、レヴィークルピ監督が指名したのはキム ボギョン。「PKを獲得した選手がPKを蹴るということを話していた。さらに、そのPKを獲得したのが、PKではチームで1番確実に蹴ることのできる、うまいと思われるキム ボギョンだった。そのため、本来蹴るべきであるキム ボギョンにキッカーを任せた」。
場内は当初「乾コール」に包まれていただけに、蹴ることを熱望していた乾もピッチで怒りの感情を露わにする場面もあり、ピッチ内外で雰囲気が異様なものとなる。そのなかでキム ボギョンが蹴ったボールは、鹿島GK曽ヶ端準にセーブされた。絶好機を決められなかったC大阪は、終了間際に小笠原満男の約50mはあろうかという、GKの動きを見た技ありロングシュートでダメ押しを食らい、万事休す。順位も鹿島に抜かれ、暫定15位に下がった。
喜怒哀楽のドラマに包まれた90分。C大阪イレブンは「今日はいつも以上に(負けたのが)悔しかったし、いつも以上に勝ちたかった」(倉田)と、チームメイトの花道を飾れなかったことを悔やんでいた。しかし、乾は、敗北を残念そうにするも、「この3年間は本当に最高だった」と、C大阪でのプレーを振り返り、また新たな一歩を踏み出した。チームも、「乾くんがいなくても、絶対やっていかないといけないので、切り替えて、準備して、次の試合に臨みたい」(丸橋祐介)と、前を向いていた。
一方の鹿島は、中3日のタイトな日程をものともせず、田代の2ゴールの活躍もあり、連敗を2でストップ。1998年以来となる長居での白星となり、順位も暫定12位に浮上した。「このセレッソ戦のアウェイでは、いつも勝てていなかったので、そういう意味では自信になった」と、殊勲の田代。「次はホームゲーム。この前(G大阪戦で)すごく悔しい負け方をして、サポーターにも申し訳ない負け方をしたので、1つになって、勝点3だけを狙っていきたい」と、8月からの巻き返しを誓っていた。
純粋無垢で、時には感情的になるも、仲間思いで、チームメイトの藤本康太曰く「サッカーがすごく好きな男」、乾貴士。彼がC大阪に刻んだ約3年間の活躍を、サポーターは誰も、忘れはしないだろう。あの屈託のないスマイルを、異国ドイツの地でも見せてほしいものだ。
以上
2011.08.01 Reported by 前田敏勝
セレッソ目線的には、13年負けなしの長居で乾のラストゲームを飾るというシナリオが誰にでも思いつく。
そのシナリオを現実化するかのごとく、カウンターから見事なミドルを乾が決めセレッソが主導権を握ったかに思えた。
しかしながら、冷静に試合を観返せば、ラッキーな田代のゴールを除いたとしても、主導権は鹿島が握っておったと言えよう。
試合開始直後の田代の落としを豪快にボレーシュートした大迫はその主人公であったである。
前半の枠を捉えたミドルといい、後半開始直後の田代の低いクロスに飛び込んだ姿といい、攻撃の核を担うのは大迫であると言い切れる。
田代の活躍で陰に隠れておるが、大迫の才能は覚醒しつつある。
次節こそゴールという結果で証明してくれるであろう。
楽しみである。
7月31日(日) 2011 J1リーグ戦 第19節
C大阪 1 - 3 鹿島 (18:04/長居/28,039人)
得点者:22' 乾貴士(C大阪)、38' 田代有三(鹿島)、45'+2 田代有三(鹿島)、90'+3 小笠原満男(鹿島)
タイムアップの笛が鳴ると、乾貴士は涙に暮れた。大好きなC大阪でのラストゲームは、鹿島に1-3の逆転負け。勝てなかった悔しさ、走馬燈のように蘇ってきたC大阪で過ごした約3年間の思い出などあったのだろう。「いろいろ考えてしまった」思いから、試合後、そしてセレモニーでは、涙をこらえきれず、顔をくしゃくしゃにした。でも、その姿も、乾らしさの1つ。最後は胸を張って、次のステージに向かって、ピッチを後にした。
大阪長居スタジアムには、J2時代から香川真司(現ドルトムント)と切磋琢磨しながら、C大阪をJ1へ、そしてACLへと導いた7番の勇姿を一目見ようと、今季ホーム最多となる28,039人が集まった。そして、乾自身も、キックオフから全力プレーを見せ、前半22分、サポーターの思いに自ら応えた。
ハーフウェイライン付近でボールを受けると、鮮やかなタッチとターンで一気に2人をかわし、そこから猛然とドリブルで中央突破。そして、「間を抜けて、シュートを打つイメージ」から、ペナルティーエリア手前付近から豪快に右足を振り抜くと、ボールはきれいな弾道でネットを揺らした。その瞬間、場内からは大歓声。観衆を魅了する「セクシー」な一撃で、新たな門出を自ら祝うゴールで、C大阪に先制点をもたらした乾は、ベンチで待つ仲間のところに一目散に駆け寄り、喜びを分かち合った。
2009年J2第48節草津戦で乾自身が4得点を決めてJ1復帰の切符を勝ち取った時のように、今回の試合もここから「乾祭り」が展開されるのかと思われたが、C大阪はリードしてからの前半、鹿島に一瞬の隙をつかれて逆襲に遭う。38分、GKキム ジンヒョンがキャッチしたボールを不意にピッチに転がし、そこから味方につなごうとした瞬間、背後から虎視眈々と狙っていた鹿島FW田代有三に奪われ、無人のゴールに流し込まれた。それまでは好セーブを連発するも、この1プレーで動揺したキム ジンヒョンは、終了間際にも相手FKからのゴール前の競り合いで判断に躊躇し、またしても田代にヘッドを決められ、逆転を許した。当のキム ジンヒョンは失意のどん底のような様子も、リザーブGK松井謙弥をはじめ、C大阪の選手たちに励まされ、気分新たに後半へ臨む。
後半は逆転を目指し、途中から清武弘嗣、永井龍、黒木聖仁をピッチに送り込んだC大阪。鹿島との次の1点を巡る攻防戦のなか、清武、乾、倉田の3シャドーでスピードのあるショートパスを何本もつなぎながらリズムを作っていく。すると、77分に得た乾のFKは相手に当たり枠をわずかに逸れるも、そのすぐ後の乾のCKから、ペナルティーエリア内でキム ボギョンが倒され、PKのチャンスを得る。
キッカーは乾、と思いきや、レヴィークルピ監督が指名したのはキム ボギョン。「PKを獲得した選手がPKを蹴るということを話していた。さらに、そのPKを獲得したのが、PKではチームで1番確実に蹴ることのできる、うまいと思われるキム ボギョンだった。そのため、本来蹴るべきであるキム ボギョンにキッカーを任せた」。
場内は当初「乾コール」に包まれていただけに、蹴ることを熱望していた乾もピッチで怒りの感情を露わにする場面もあり、ピッチ内外で雰囲気が異様なものとなる。そのなかでキム ボギョンが蹴ったボールは、鹿島GK曽ヶ端準にセーブされた。絶好機を決められなかったC大阪は、終了間際に小笠原満男の約50mはあろうかという、GKの動きを見た技ありロングシュートでダメ押しを食らい、万事休す。順位も鹿島に抜かれ、暫定15位に下がった。
喜怒哀楽のドラマに包まれた90分。C大阪イレブンは「今日はいつも以上に(負けたのが)悔しかったし、いつも以上に勝ちたかった」(倉田)と、チームメイトの花道を飾れなかったことを悔やんでいた。しかし、乾は、敗北を残念そうにするも、「この3年間は本当に最高だった」と、C大阪でのプレーを振り返り、また新たな一歩を踏み出した。チームも、「乾くんがいなくても、絶対やっていかないといけないので、切り替えて、準備して、次の試合に臨みたい」(丸橋祐介)と、前を向いていた。
一方の鹿島は、中3日のタイトな日程をものともせず、田代の2ゴールの活躍もあり、連敗を2でストップ。1998年以来となる長居での白星となり、順位も暫定12位に浮上した。「このセレッソ戦のアウェイでは、いつも勝てていなかったので、そういう意味では自信になった」と、殊勲の田代。「次はホームゲーム。この前(G大阪戦で)すごく悔しい負け方をして、サポーターにも申し訳ない負け方をしたので、1つになって、勝点3だけを狙っていきたい」と、8月からの巻き返しを誓っていた。
純粋無垢で、時には感情的になるも、仲間思いで、チームメイトの藤本康太曰く「サッカーがすごく好きな男」、乾貴士。彼がC大阪に刻んだ約3年間の活躍を、サポーターは誰も、忘れはしないだろう。あの屈託のないスマイルを、異国ドイツの地でも見せてほしいものだ。
以上
2011.08.01 Reported by 前田敏勝
セレッソ目線的には、13年負けなしの長居で乾のラストゲームを飾るというシナリオが誰にでも思いつく。
そのシナリオを現実化するかのごとく、カウンターから見事なミドルを乾が決めセレッソが主導権を握ったかに思えた。
しかしながら、冷静に試合を観返せば、ラッキーな田代のゴールを除いたとしても、主導権は鹿島が握っておったと言えよう。
試合開始直後の田代の落としを豪快にボレーシュートした大迫はその主人公であったである。
前半の枠を捉えたミドルといい、後半開始直後の田代の低いクロスに飛び込んだ姿といい、攻撃の核を担うのは大迫であると言い切れる。
田代の活躍で陰に隠れておるが、大迫の才能は覚醒しつつある。
次節こそゴールという結果で証明してくれるであろう。
楽しみである。
頑張ってほしいです。
ちなみに鹿狂さんがおっしゃっていた田代の先制点は現地ではよく見てなかったので録画を見直しましたが、個人的には岩政のキムジンヒョンとの接触後から始まっていると個人的には思っています。(笑)あの後岩政が謝っていたので個人的にはそこからすでに心理戦は始まっていたのではないかと勝手に推測しています。(笑)考えすぎですかね。もちろん大迫のアピールが一番効いたとは思っています。そして岩政が少し相手を油断させたのな・・・ていう感じでしょうか。
これに気を取られて焦ってボールを置いたところを忍者田代がひょいっと。
次は大迫の爆発に期待。
ここ最近の大迫は自分のイメージ通りのプレーができつつあるように思います。
あとはゴールだけですね。
次節に期待です。