【鹿島】柴崎岳――全3ゴールを演出。際立った「背番号20」が示した凄味とは?
広島由寛(サッカーダイジェスト)
2015年06月21日
73分以降はトップ下でタクトを振るう。
決定的な仕事をこなしたほか、守備でも貢献。圧倒的な存在感を示した柴崎がチームを完勝に導いた。(C)SOCCER DIGEST
8分、ショートコーナーを西大伍に預け、そこからカイオの先制点が生まれる。
40分、抜け出した土居聖真の足もとにピタリとつける柔らかなスルーパスを通して、追加点をお膳立て。
59分には、左サイドからの狙いすましたクロスで決定機を作り出すも、ジネイのヘディングシュートは惜しくもバーを叩いた。
そして84分、相手DFの逆を突く巧みなパスで赤秀平のダメ押しゴールをアシストした。
日産スタジアムに乗り込んだ鹿島は横浜を相手に3-0の完勝を収める。この日、生まれたすべてのゴールを、柴崎岳は演出してみせた。
圧巻のパフォーマンスだった。あえてマイナスポイントを見出せば、金崎夢生につけるパスにやや乱れがあったぐらい。腕章を巻いたボランチは、正確なパスと的確なポジショニングで中盤の構成力を高め、素早い切り替えで守備にも貢献。土居を下げ、山村和也が途中出場した73分以降はトップ下でタクトを振るう――背番号20の存在感は際立っていた。
そして、先述したように、決定的な仕事をこなす。
「守備が安定していたので、良い攻撃ができた」
早い時間帯に先制できたが、「1点目を取ってからは、もっと上手くやれたかなと思います。攻撃の部分でちょっと慌てすぎたかな、と。そこはチームの改善点」と反省を口にする。
もっとも、「前半のうちに、より精度の高いカウンターで何回か決定機を作り出せた」とも振り返る。敵の中澤佑二も、「チーム全体で鹿島は本当に集中していた。(自分たちは)常に守備に追われていて、カウンターを喰らう場面が多かった」と認めている。
2-2で引き分けに終わった前節・山形戦からの変化について聞かれれば、「今回は良いパフォーマンスだった」と手応えを語る。「チームとしてこれだけできるところを示せた」と自信を深める一方で、だからこそ「高いモチベーションを保ちながら、次の試合も迎えなければいけない」と気持ちを引き締める。
「しっかりとチャンスを作り出すパスを供給したい」(柴崎)。
相手DFの伸ばした足はギリギリで届かず。足もとにピタリとつけるスルーパスで土居のゴールをアシストした。(C)SOCCER DIGEST
淡々と言葉を紡ぐ姿からは、揺るぎない意志の強さが感じられた。
「今日の試合に満足せず、継続することが大事」
まさかのスコアレスドローに終わったワールドカップ・アジア2次予選のシンガポール戦では、勝利に導けなかった責任を感じているはずだ。拭い難い悔しさを次にどうつなげていくべきか。その答を、横浜戦のピッチで表現できたのではないだろうか。
「しっかりとチャンスを作り出すパスを供給したいし、そのチャンスは作れていたと思います。より決めやすいボールを、味方に良いパスを供給するのが僕の役目」
その意味で、横浜戦では決定的な仕事を強く意識していたかと聞けば、「一番はそうですけど」と頷いた後、次のように続ける。
「流れを崩さないことも大事。良い流れをゴールまで持っていけるようなパスも重要で、直接ゴールにつながるパスだけが重要だとは思っていないです」と、チームをオーガナイズすべき司令塔としての役割についても言及する。
横浜戦ではボランチでスタートし、終盤はトップ下でプレーしたが、「役割は違いますし、僕としてはどちらでも楽しみな部分はある。ふたつのポジションで結果を出せて良かった」と、静かな声に安堵感が滲む。
代表戦では周囲をガッカリさせたかもしれないが、久々のJの舞台では、改めてそのスペックの高さを存分に見せつけた。
すっと背筋が伸びた、凛とした佇まいから、難しいプレーを簡単にこなしてみせる。
どれだけハイパフォーマンスを見せても、決して満足せず、課題を見つけ出し、意識を高く持って、さらなる進化を追求する。
鹿島だけでなく、次世代の日本代表を背負うことが期待される柴崎が次なる一歩を力強く踏み出した。
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
岳について記すサッカーダイジェストの広島氏である。
このFマリノス戦、岳のパフォーマンスは圧巻であった。
これを日本代表・シンガポール戦でのスコアレスドローの無念を晴らすと捉える向きもある。
それは、日本サッカー界に於いて岳の存在感が増しておることの表れであろう。
しかしながら、岳は鹿島のゲームキャプテンとして、またチームの主軸選手として才能を発揮しておるに過ぎぬ。
露出が増え、注目度は高い。
このプレッシャーを撥ね除けて躍動する岳は素晴らしい。
岳の輝きをいつまでも鹿島にて拝みたい。
楽しみなのである。
広島由寛(サッカーダイジェスト)
2015年06月21日
73分以降はトップ下でタクトを振るう。
決定的な仕事をこなしたほか、守備でも貢献。圧倒的な存在感を示した柴崎がチームを完勝に導いた。(C)SOCCER DIGEST
8分、ショートコーナーを西大伍に預け、そこからカイオの先制点が生まれる。
40分、抜け出した土居聖真の足もとにピタリとつける柔らかなスルーパスを通して、追加点をお膳立て。
59分には、左サイドからの狙いすましたクロスで決定機を作り出すも、ジネイのヘディングシュートは惜しくもバーを叩いた。
そして84分、相手DFの逆を突く巧みなパスで赤秀平のダメ押しゴールをアシストした。
日産スタジアムに乗り込んだ鹿島は横浜を相手に3-0の完勝を収める。この日、生まれたすべてのゴールを、柴崎岳は演出してみせた。
圧巻のパフォーマンスだった。あえてマイナスポイントを見出せば、金崎夢生につけるパスにやや乱れがあったぐらい。腕章を巻いたボランチは、正確なパスと的確なポジショニングで中盤の構成力を高め、素早い切り替えで守備にも貢献。土居を下げ、山村和也が途中出場した73分以降はトップ下でタクトを振るう――背番号20の存在感は際立っていた。
そして、先述したように、決定的な仕事をこなす。
「守備が安定していたので、良い攻撃ができた」
早い時間帯に先制できたが、「1点目を取ってからは、もっと上手くやれたかなと思います。攻撃の部分でちょっと慌てすぎたかな、と。そこはチームの改善点」と反省を口にする。
もっとも、「前半のうちに、より精度の高いカウンターで何回か決定機を作り出せた」とも振り返る。敵の中澤佑二も、「チーム全体で鹿島は本当に集中していた。(自分たちは)常に守備に追われていて、カウンターを喰らう場面が多かった」と認めている。
2-2で引き分けに終わった前節・山形戦からの変化について聞かれれば、「今回は良いパフォーマンスだった」と手応えを語る。「チームとしてこれだけできるところを示せた」と自信を深める一方で、だからこそ「高いモチベーションを保ちながら、次の試合も迎えなければいけない」と気持ちを引き締める。
「しっかりとチャンスを作り出すパスを供給したい」(柴崎)。
相手DFの伸ばした足はギリギリで届かず。足もとにピタリとつけるスルーパスで土居のゴールをアシストした。(C)SOCCER DIGEST
淡々と言葉を紡ぐ姿からは、揺るぎない意志の強さが感じられた。
「今日の試合に満足せず、継続することが大事」
まさかのスコアレスドローに終わったワールドカップ・アジア2次予選のシンガポール戦では、勝利に導けなかった責任を感じているはずだ。拭い難い悔しさを次にどうつなげていくべきか。その答を、横浜戦のピッチで表現できたのではないだろうか。
「しっかりとチャンスを作り出すパスを供給したいし、そのチャンスは作れていたと思います。より決めやすいボールを、味方に良いパスを供給するのが僕の役目」
その意味で、横浜戦では決定的な仕事を強く意識していたかと聞けば、「一番はそうですけど」と頷いた後、次のように続ける。
「流れを崩さないことも大事。良い流れをゴールまで持っていけるようなパスも重要で、直接ゴールにつながるパスだけが重要だとは思っていないです」と、チームをオーガナイズすべき司令塔としての役割についても言及する。
横浜戦ではボランチでスタートし、終盤はトップ下でプレーしたが、「役割は違いますし、僕としてはどちらでも楽しみな部分はある。ふたつのポジションで結果を出せて良かった」と、静かな声に安堵感が滲む。
代表戦では周囲をガッカリさせたかもしれないが、久々のJの舞台では、改めてそのスペックの高さを存分に見せつけた。
すっと背筋が伸びた、凛とした佇まいから、難しいプレーを簡単にこなしてみせる。
どれだけハイパフォーマンスを見せても、決して満足せず、課題を見つけ出し、意識を高く持って、さらなる進化を追求する。
鹿島だけでなく、次世代の日本代表を背負うことが期待される柴崎が次なる一歩を力強く踏み出した。
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
岳について記すサッカーダイジェストの広島氏である。
このFマリノス戦、岳のパフォーマンスは圧巻であった。
これを日本代表・シンガポール戦でのスコアレスドローの無念を晴らすと捉える向きもある。
それは、日本サッカー界に於いて岳の存在感が増しておることの表れであろう。
しかしながら、岳は鹿島のゲームキャプテンとして、またチームの主軸選手として才能を発揮しておるに過ぎぬ。
露出が増え、注目度は高い。
このプレッシャーを撥ね除けて躍動する岳は素晴らしい。
岳の輝きをいつまでも鹿島にて拝みたい。
楽しみなのである。