2013シーズンのJリーグを占う。各クラブの戦力補強診断 ~ジュビロ磐田編~
フットボールチャンネルでは、1月下旬から2月上旬にかけて、Jクラブの補強動向を診断していく。今季の目標に向けて、効果的な補強を行うことができたクラブはどこなのか。今回は、昨シーズンから森下監督が率いるジュビロ磐田を浅川俊文氏に占ってもらった。
2013年01月29日
text by 浅川俊文 photo Kenzaburo Matsuoka
Jリーグ昇格20周年の節目に、再びACL出場を狙う磐田
2012シーズンのジュビロ磐田は、序盤からアグレッシブな攻撃的サッカーで好成績を収めたが、終盤戦に差し掛かると失速し最終的に12位でリーグ戦を終えた。目立ったのが53失点を喫したディフェンス面で、これはリーグワースト3位の数字となっている。今オフは、センターラインのディフェンスを整備するべく、神戸から伊野波を、そして京都からチョンウヨンを獲得した。チームはJリーグ昇格20周年の節目を迎え、ACL出場権獲得を目標にシーズンへ臨む。(編集部)
2013シーズン 戦力の入れ替え
IN OUT
チョンウヨン〔期限付き移籍/京都〕 ロドリゴソウト〔未定〕
伊野波雅彦〔完全移籍/神戸〕 ハンサンウン〔完全移籍/蔚山現代(韓国)〕
菅沼駿哉〔完全移籍/G大阪〕1 荒田智之〔完全移籍/岡山〕
宮崎智彦〔完全移籍/鹿島〕1 竹重安希彦〔期限付き移籍/新潟〕
植村慶〔完全移籍/湘南〕 千代反田充〔完全移籍/徳島〕
小林祐希〔完全移籍/東京V〕1 押谷祐樹〔期限付き移籍/岡山〕
田中裕人〔新加入/関西大学〕 黄誠秀〔完全移籍/群馬〕
牲川歩見〔新加入/ジュビロ磐田U18〕 -
新しいジュビロのスタイルを築くために
開幕を待つヤマハスタジアムに作業の音が響き渡る。ジュビロ磐田のJリーグ昇格20周年に合わせて、スタジアムはリニューアルの真っ只中だ。竣工予定の8月には多くの記念イベントも予定されている。
そんな節目を迎える今シーズンだけに、チームとしても目標に掲げる「ACL出場権獲得」を成し遂げたいところだろう。最後にACLに出場してから、すでに8シーズンが経っている。クラブのコミットメントに「日本はもとよりアジアでもトップチームを目指す」と記してきたジュビロだけに、大舞台へのカムバックは悲願だ。
とはいえ、昨シーズンは12位という結果に終わっている。このポジションから一気にACL出場権のトップ3を狙えるのか? 常識的に考えると難しいだろう。しかし、戦力が拮抗し、予想外のチームが躍進し、降格するのが今のJ1である。
ジュビロ磐田・2013シーズン 予想フォーメーション
新体制記者会見で、ジュビロの服部GMは柏レイソルとサンフレッチェ広島の例を挙げた。この2年間、J1の優勝チームは一度J2に降格しながらも方針を継続したチームであること。最初は結果が伴わなかったものの、我慢強く継続してチームを作り続けて頂点に立ったこと。この事実を踏まえ服部GMは、昨年より指揮を取る森下監督に「新しいジュビロのスタイルを築くため、シーズンを通してブレずに攻撃的にやってほしい」と伝えてきたという。
目指す攻撃的スタイルで、今のチームはどれだけの結果を出せるのか? 昨シーズンはそれを見極めた1年だったと言っても過言ではない。今のジュビロのストロングポイント、そしてウイークポイントを洗い出す。その上で、ウイークポイントを補強し、昨シーズンからのスタイル構築を継続してストロングポイントを伸ばし、ACL出場権を狙う。それが、今シーズンのジュビロの青写真である。
補強に関しては明快で、ウイークポイントとなった守備の強化に絞られている。昨シーズン、J1ワースト3位の53失点を喫しているだけに、当然の措置だろう。ヴィッセル神戸から日本代表DF伊野波雅彦を獲得したのをはじめ、京都サンガの中盤を支え、ロンドン五輪にも出場したMFチョン・ウヨン、大学ナンバー1ボランチの呼び声も高い関西大の田中裕人と3人の即戦力が加入した。27歳の伊野波には、守備の新リーダーとしての期待がかかる。複数の守備的ポジションをこなす能力を持つ彼の加入によって、4バックだけでなく3バックも併用される可能性が高い。
また、チョンも田中もボール奪取力には定評があるだけに、バイタルエリアの守備力強化に貢献するはずだ。ボランチに関しては、レギュラーのロドリゴ・ソウトが移籍してしまったが、そのマイナスを補うコマがそろった。ボランチ候補には2人のほか、小林裕紀、小林祐希、山本康裕ら伸び盛りの若手もいるだけに、ポジション争いは熾烈だ。
攻撃陣が進化するために求められること
一方、攻撃陣の補強はないが、現有戦力はタレントがそろっている。日本代表FW前田をはじめ、ロンドン五輪韓国代表MFのぺク・ソンドン、オフには5クラブが獲得に動いたFW山崎亮平、代表入りが期待されるMF山田大記、代表候補にも選ばれたFW金園英学らを競わせながら、昨シーズンのスタイルを継続し、進化させる方針だ。
森下監督は攻守に連動するパスサッカーを志向し、前半戦は白星が先行した。しかし、後半戦はポゼッションを重視するチームが陥る落とし穴にはまってしまった。ボール支配率は高いのに得点が入らない。パスをつなぐという手段が目的化してしまったのだ。きれいに崩すことにこだわり、ゴールを狙うダイナミズムが薄れてしまった。しかも、突破力で前半戦の快進撃を支えたペクが負傷で後半戦を棒に振るなど、攻撃のアクセントとなる選手の離脱も響いた。
今シーズン、攻撃陣が進化するためには、攻めの引き出しを増やすことが必要だろう。基本はパスサッカーだが、状況に応じて速攻をしかけたり、ミドルシュートを増やしたり、セットプレーの得点力を上げるなど、ゴールを奪うバリエーションを広げなければならない。
そして、昨シーズンの経験から学ぶべきことは、コンディショニングの重要性だ。残り9試合を残した時点で首位・広島との勝点差は6。ACL出場権に十分手が届く位置にいたのが、その後、8試合勝利から見放されるという大失速。前半戦は勢いに乗って好スタートを切れたのに、終盤の勝負どころで完全に息切れしてしまった。
森下監督はキャンプからハードなトレーニングを科し、開幕後も週2回の2部練習を行っている。練習時間は一昨シーズンより増えた。その成果もあり、前半戦はハードワークで突っ走れた。しかし、紅白戦さえできないほど故障者が増える事態も招いてしまう。そして、後半戦17試合の成績は5勝4分8敗。前半戦の貯金をすっかり使い果たしてしまった。
今シーズン、森下監督には1年を通したチームマネジメント力が問われることになる。ハードワークしながらも、終盤の勝負どころで息切れしないよう、チーム状況を見ながらどうコンディショニングするのか。上位を狙える戦力はそろっているだけに、そこを誤らなければACL出場権獲得は決して夢ではない。Jリーグ昇格20周年の今年、かつてはアジアを制したジュビロが、再びアジアへの切符を手にすることができるのか、要注目である。
補強面と総合力それぞれの診断結果
昨シーズン磐田は53失点と明らかにディフェンス面で問題を抱えていた。伊野波とチョンウヨンの獲得は、センターラインの安定化に繋がることは間違いないだろう。チーム自体が攻撃的な意識が強いだけに、チョンのような1対1でボールをしっかり奪うことのできる選手が中盤に入れば、自ずとディフェンスラインも高く設定できる。もともと攻撃陣のタレントは揃っているだけに、バランスの取れた補強ができた。
ACL出場圏内を得られる3位以内を狙うためには、昨シーズン経験した終盤戦の失速は避けなければならない。ボランチと2列目の人材は豊富であり、誰が出場しても不思議ではない人材が揃っている。また、センターバックには伊野波が加入し、藤田、チョ・ビョングク、菅沼駿の3人と合わせ、高いレベルでの激しいポジション争いが予想される。誰がバックアップに回っても高い能力を有しており、リーグ終盤戦にチーム力をキープするための駒は揃ったと言えるだろう。
ただ、まだ伊野波がどのポジションで出場するのかはわからないが、昨シーズンのチョはディフェンダーながら6得点を挙げるなど、セットプレーで大きな力を発揮していた。仮にチョが控えに回ると、チームとして一つのストロングポイントを失うことにもなる。森下監督がどのような選手起用を見せるのか興味深い。
また一方で、エースの前田、そして右サイドバック・駒野に取って代わるような人材は見当たらない。特に駒野は昨シーズンチームで唯一のフル出場を果たしており、チームとして彼らの経験と能力に頼るところもまだまだ大きい。前田と駒野がシーズンを通して安定したコンディションで戦えるかが、チームの浮沈のカギを握る一つの要素となるだろう。(診断は編集部 ※それぞれA~Eランクで診断)
【了】
ジュビロのレギュラーに宮崎と伊野波の名を連ねるフットボールチャンネルの補強動向である。
昨季よりスタメンを張っておった宮崎と日本代表の伊野波が抜擢されるのは当然であろう。
とはいえ、伊野波がすんなりここに収まって良いのかは疑問が残る。
名前は確かに通っておるが実績はいかがなものか。
しかしながら、わざわざ獲ってきた選手をサブで腐らすことは誰にとっても不幸である。
フットボールチャンネルとしてもディフェンス面でバランスの取れた補強としてBの診断をしておる。
この評価通りの結果を残して欲しいと願う。
悪質な
肘打ちなどせず、クリーンな守備を魅せてくれれば、多くの者が喜ぼう。
伊野波の守備に注目である。