深夜、タクシーで帰宅中、
近所の救急病院の前を通りかかった。
やけに陰気な病院だ。
運転手が言う。
「あの病院は行かない方がいいですよ。
一度、入院すると、なかなか退院させてもらえませんから」
なんでも、患者が少ないので、
闇雲に長期入院させられるらしい。
運転手曰く、
今やその病院に入院するのは、
救急車で運ばれてくる、
何も知らない患者だけだそうだ。
そんな話を聞いた数日後の昼間、
その病院の前を通りかかったとき、
病室の窓を見たら、
背筋に寒いものが走った。
あの窓の向こうに、
なかなか解放してもらえない患者がいるのだ。