しばらく休暇でムンバイに行ってて,ブログもお休みしてました。
腹を壊したり,変な病気にかかるんじゃないかと行く前に随分心配しましたが,まったく問題ありませんでした。心配しすぎて,行く前に下痢になってしまっただけで,行ってからは絶好調。
ただ,かなり用心したのも確かです。
歯磨きまでペットボトルの水を使い,歯ブラシを洗うのも水道の水は使いませんでした。ストリートフードは一切口にせず,店で飲むコーラも缶のみ。ノーアイスと念を押して注文したくらいで。
まあ普通にレストランで食事をして,飲み水に気をつけさえすれば,短期の滞在なら心配ないってことなんでしょう。
ムンバイには四泊しました。
で,どうだったか。インドを訪問して,インドが嫌いになる人と,スキになる人が居るらしいんですが,私の場合は,
かなりスキになりました。
一つは,人々の勝手気ままさ,と言うんでしょうか。
本当に,自由を感じました。
これは,これまで訪問したドコの国でも感じなかったことのような気がしてて,まだその意味をつかみきれていないんですが,金持ちもビンボー人も,警官も,タクシーの運転手も,ホテルのボーイさんも受付も,悪いヤツも良いやつも,それなりに敬意が払われている,というのか,お互いを大事にしている,というのか,卑屈になることなど思いもよらないというか,どう言えば良いんでしょうかね。
それが,どういうことを意味するのか,といえば,とんでもなく純真な大人がそこらじゅうに居る,ということでもありまして,つまり,変に大人になる必要が無いんじゃないか,と思うんですな。
たとえば,このタクシーの運転手さんなんですが,
もう,結構なお年ですが,痛いほどの人柄の良い感じが出てまして,
マニ・バワン(ガンジー博物館)はわかるか,と乗車前に尋ねると,わかる,というので,『オーケー』と言って乗ると,
『よし来た』
と,本当に日本語て言ったんじゃないか,と思えるようなノリで,多分ヒンデゥー語で何か声を上げた後,飛び上がるようなものすごい勢いでフロントドアの外に飛び出しているタクシーメーターを,長い手でクイっと右に倒して,走り出してくれたんですな。そんなに張り切って大丈夫か,と思うくらいで,前のめりでハンドルにしがみつくようにして運転してました。 宮崎駿のアニメに出てくるおじいさん,といった感じです。
これが,チョウパティビーチか,と聴くと,そうだと答え,ムンバイがはじめてだと悟ると,あれこれ,説明をしてくれました。到着したらしたで,十五分位だろう,待ってるよ,といわれましたが,私は,多分一時間くらいは居るつもりだ,だから待たないで良い,と答えると,
『そうか,わかった。気にしないでくれ』と何度も、気にしないでくれ,をしゃがれた声で繰り返しまして,このじいさんのためなら,十五分で出てこようか,と思ったくらいで。
それともう一人,四泊したうちの最初の二泊したホテルのボーイさんなんですが,これが,また印象深い若者で,部屋に入り込んで長話。チップが欲しいとはっきり言ってきました。オーケー,と言うと,日本の金でくれというので,わかった,金を出すので後ろを向いててくれと言うと,
本当にうれしそうに,くるっと回ってくれまして,あれは,子供がプレゼントをもらうとき,ちょっと後ろ向いててと言われて,うれしさ一杯でくるっと回るのと全く同じに見えて、本当に大きな子供、という感じでして,その純真な反応にびっくりしてしまいました。彼は聞けば二十六歳で田舎からでてきて結婚もしているそうなんですがね。
五十円玉を見ながら,悲しそうな顔になってしまい,
どうした,これは,こんなんでも二十ルビー以上の価値があるのだ,と説明したんですが,
換金できそうもない,とのことで,結局ルビーで渡すことになりましたが。
彼は,チップをもらうために,部屋に入り込んで,長話をして,考えようによってはあつかましく,失礼な野郎なわけですが,そういう印象を受けずに逆に好印象が残っているのは,彼が大きな子供だからなんでしょうな。
二十ルピーをもらって心から幸せそうでして,あんなに幸せそうな顔を見られて良かった,という思いにさせられる,というんでしょうか。大人に対して、こういう思いをしたのは初めての経験でして,ウーン,なんと言いますか,本当にうまい言葉を思いつかないんですがね。
シャンタラムに、ガイドのプラバカルという登場人物が出てくるんですが,主人公は,彼の純真さや無垢さを感じて,出会った瞬間に信頼して友情関係を築いていきます。大人の純真さというのがどういう感じか読んでてよくわからなかったんですが,今回,何となく理解できたような気がするんですが,どうでしょうかね。
ウーン,Incredible India.