ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「アナトミー・オブ・ア・スーサイド」

2023-10-04 22:06:12 | 芝居
9月26日文学座アトリエで、アリス・バーチ作「アナトミー・オブ・ア・スーサイド」を見た(演出:生田みゆき)。






命を未来に繋ぐことへの希望と恐怖ーーーその狭間で揺れる三世代の女性の物語。

自殺願望を持ちながらも母としての役割を果たそうとするキャロル、
薬物中毒に苦しみつつ自分の居場所を見つけようとするアナ、
母親を早くに失い、医者として人間の死と生に常に向き合うボニー。
三世代の物語は舞台上で同時に進行していく実験的な構造となっている。
そこで紡がれる言葉は時に呼応し、
共鳴しながら重奏曲のように奏でられていく。
《母であること、女性であること、生き続けること、命をつなぐこと》
自問自答を繰り返し、3人はそれぞれ決断していく・・・(チラシより)。

出演者の体調不良により、何度かの上演中止と公演延期を経て、この日、ようやく見ることができた。
ネタバレあります。
タイトルとチラシを見ただけで暗くて重苦しい内容らしいと分かるので、観劇前は気が重かった。
チラシにある通り、三世代の情景が舞台上で同時に繰り広げられる。
セリフが時々重なるので、全部聞き取るのは難しい。
平田オリザの芝居のようで、最初は正直イライラしたが、幸い、そんな構造にも少しずつ慣れていった。

キャロル(栗田桃子)は精神的に不安定。彼女は妊娠し、娘を出産して、夫、夫の姉、姪らと会話するが、話は奇妙にかみ合わない。
結局彼女は、娘アナが16歳の時、鉄道自殺してしまう。
キャロルの娘アナ(吉野実紗)はヘロイン中毒。ドキュメンタリー映画の監督ジェイミーと結婚するが、やはりメンタルが非常に不安定。
彼女は娘を出産後まもなく自殺を選ぶ。
この場面はなく、セリフもないので、観劇中はわからなかった。
たまたま今回、2度にわたって公演が延期になり、チケットがキャンセルになったお詫びということらしいが、
会場で400円で売っていた「創作解剖書」というのをもらった。
それに載っていた「物語時系列表」を見て、やっとアナが自殺したことがわかった次第。
アナの娘ボニー(柴田美波)は医師で同性愛者らしい。
彼女は、祖母と母が娘を出産後自殺したことが心から離れず、そういう、自殺の連鎖を自分のところで止めたいと考える。
「私で終わりにしたいの」
そのため、ステディな恋人がいるわけでもないのに子宮摘出手術を受けようとする。
だが医者からは、病気でもないのに、と当然ながら不審がられ、カウンセリングを勧められる・・。

前衛的で実験的な手法には、最後まで違和感が消えなかった。
だが、これを書きたいという作者の強い気持ちは、同性として、ある程度想像できる。

役者はみなうまい。久々に文学座の力量を見せられた感じ。
特にボニー役の柴田美波とアナ役の吉野実紗が印象に残った。

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