ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

ヘンデル作曲のオペラ「ジュリオ・チェーザレ」

2022-03-11 11:30:29 | オペラ
3月3日川口総合文化センター リリア音楽ホールで、ヘンデル作曲のオペラ「ジュリオ・チェーザレ」を見た(演出:中村敬一、指揮:濱田芳通、オケ:アントネッロ)。



1724年ロンドンで初演された作品。
紀元前48年、ジュリオ・チェーザレ(ジュリアス・シーザー/ユリウス・カエサル)はローマ内戦で政敵ポンペーオ(ポンペイウス)を破り、事実上ローマの頂点に立った。
逃げたポンペーオを追ってエジプトへ遠征した彼は、若き女王クレオパトラと出会う。当時のエジプトは彼女と弟の王トロメーオ(プトレマイオス13世)
の姉弟が共同統治していた。
チェーザレが重臣クーリオを伴いエジプトに上陸すると、ポンペーオの妻コルネ―リアと息子セストが来て彼の命乞いをする。そこへエジプト王トロメーオ付きの
軍人アキッラが参上し、チェーザレへの献上品としてポンペーオの生首を差し出す。味方だと思っていたエジプトに裏切られ、絶望する母子。
アキッラはそんなコルネ―リアの美貌に目を奪われる。チェーザレも、宿敵とは言えローマの偉大な指導者の虐殺は許し難く、トロメーオを非難して
アキッラを追い払う。コルネ―リアとセスト母子はトロメーオへの復讐を誓う。
クレオパトラは従者ニレーノからトロメーオの残忍な仕業を聞き、自分の方が王にふさわしいと、トロメーオと王座をめぐって姉弟けんか。トロメーオも
チェーザレへの貢ぎ物が失敗したことを知り、チェーザレを逆恨みする。
クレオパトラはリディアという名の侍女に扮してチェーザレのもとに乗り込み、彼をメロメロに誘惑する。
コルネ―リア母子はトロメーオの前で復讐を宣言するが、あっけなく捕らえられてしまう。アキッラと同様、トロメーオもコルネ―リアが気に入り、彼女に言い寄るが、
もちろん彼女が従うはずがない。母子は別々に幽閉される。コルネ―リアはアキッラの求愛をきっぱり拒絶し、セストとの別れを悲しむ。
ここで前半終了。
今回、ここに日本語の幕間劇が挿入される。敵方のはずのアキッラとクーリオが酒盛りしている。そこにニレーノも加わり、3人で上司の悪口を言い合い盛り上がる。
後半。
チェーザレはシトロンの森でリディア(に扮したクレオパトラ)に会い、すっかり魅了される。
幽閉されているコルネ―リアは、まだアキッラとトロメーオにしつこく求愛され、拒絶し、トロメーオに「無粋な女」となじられる。
クレオパトラの寝室でチェーザレとリディア(クレオパトラ)が逢瀬を楽しんでいるところに、トロメーオ一派がチェーザレ攻めを決めた、とクーリオが
駆け込んで来る。戦いに出るというチェーザレに、クレオパトラはうっかり自分の正体を明かしてしまう。驚くチェーザレ。
セストはトロメーオの部屋に忍び込み、刺そうとするが、アキッラが彼を捕まえる。アキッラはチェーザレが海に落ちて死んだと告げ、褒美にコルネ―リアを
所望するが、トロメーオにすげなく断られる。愕然とした彼は、クレオパトラ軍に寝返ることを決める。
クレオパトラ軍とトロメーオ軍が衝突し、トロメーオ軍が勝利する。捕虜となったクレオパトラは弟にさんざん罵倒され、我が身の不幸を嘆く。
チェーザレは海で死んだと思われたが、助かっており、一方アキッラは瀕死の重傷を負っていた。セストとニレーノはアキッラから懺悔を聴き、勝利の要である
印章を受け取る。2人はチェーザレと共に、コルネ―リアとクレオパトラ救出のために王宮へ向かう。
クレオパトラは死んだと思っていたチェーザレと再会し、喜ぶ。風向きが変わった、と勝利を確信する二人。
トロメーオの部屋では、コルネ―リアがしつこく言い寄るトロメーオに刃を向けていた。そこにセストが突入。トロメーオを倒してついに悲願の復讐を果たす。
アレクサンドリアではみなが勝利を祝っている。チェーザレはクレオパトラにエジプトの王位を戴冠。二人は愛と忠誠を誓い合う。<終わり>

バロックオペラゆえ、繰り返しが多い。旋律は美しいが、やはり現代人にはつらい。
もちろんそこを何とかしようと、今回も映像を駆使して楽しませてくれている。正面の大きなパイプオルガンとその周囲の壁一面に青い海原が現れたり、また時には
そこが緑や金色の美しい映像で覆われる。クレオパトラがチェーザレを魅了する場面では、薔薇を中心に一面濃いピンクに。ある時はまた、緑溢れる森や果樹園に。

歌手はエジプト側が断然すごい。
まずクレオパトラ役の中山美紀が素晴らしい。
ニレーノ役の彌勒忠史も絶品。演技も素晴らしく舞台を席巻。客席を大いに沸かせてくれた。
アキッラ役の黒田祐貴は背も高く舞台映えし、声もよく、また後半、挫折し悲劇的な最期を遂げる人物にふさわしい。
チェーザレ役の坂下忠弘は、見るからに誠実で優しそうな好青年で、とても女たらしと評判のシーザーには見えない。それがちょっぴり残念だが、
ラブロマンスの主人公としては申し分ない。

幕間劇で、日本語での他愛ない会話が繰り広げられる。こういう面白い演出の工夫がありがたい。

字幕がたまにひどい。「寝って」とか「・・したです」とか。

ストーリーは史実とはだいぶ違うらしい。
コルネ―リアはポンペーオの5番目の妻ではあるが、セストの母ではないとか。
このオペラの内容は、当時のイギリスの王位継承問題に密接に関わっているらしい。
つまり、その時の時事問題について政治的な主張を宣伝することに主眼があり、そのために歴史や神話を素材として使ったに過ぎないという。
パンフレットの三ヶ尻正氏の解説を読むと、面白くはあるが、、実に複雑・・。
だが、それを知っていなくてもオペラとして十分楽しめるのだから助かる。

当時は貴族たちが長々と飲み食いしながら鑑賞していたという。ちょうど昔の歌舞伎見物みたいに。
だからこんなに繰り返しが多くても問題なかったわけだ。
だがまさか現代で、飲み食いしながらというわけにはいかないでしょうねぇ。

それはともかく、次から次へと素晴らしいアリアが続いた3時間半。
演出家の親切な工夫と歌手たちのおかげで、バロックオペラの魅力を堪能しました。

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