ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「ビッグ・フェラー」

2014-07-16 16:30:07 | 芝居
6月3日世田谷パブリックシアターで、リチャード・ビーン作「ビッグ・フェラー」をみた(演出:森新太郎)。

1972年、ニューヨークのアイリッシュレストランではブラディーサンデーの追悼集会が開かれていた。IRA(アイルランド共和軍)の
NY支部リーダー・コステロ(内野聖陽)はイギリスへの報復と組織強化への思いを熱く語る。
彼らIRA活動家たちの隠れ家はマイケル(浦井健治)のアパートメント。だが活動家と言っても彼らの日常はごく普通のNY市民であり、
コステロのようにアメリカンドリームをつかんだ成功者もいれば、マイケルのような消防士も、警察官もいた。
アイルランドから彼らのもとにやって来たIRA兵士でお調子者のルエリ(成河)は、ある日バーで親しくなった女性カレルマ(町田マリー)を
アパートに連れ込むが…。

配役がいい。ちょっぴり年の差の開いたカップルもいたように思えたが、みな集中力ある演技で好感が持てた。
内野聖陽はなかなかの好演。こういう役が向いているのか、かっこいい。
浦井健治はいつもながら爽やかな好青年役がぴったり。
成河が演じるのはおしゃべりな軽い男だが、この芝居では重要な役。この人には独特の魅力がある。初めてみた時、彼は「夏の夜の夢」の
パックを飄々とやっていたっけ(村井国夫のオーベロン、麻実れいのヒッポリタという最高のキャストだった)。

脚本は少し品が悪い(クリントンのくだりなど)。以前見た、この作家の「ハーヴェスト」よりあくどい。

コステロはなぜカミングアウトするのか。告白さえしなければバレはしなかっただろうし、誰も彼を疑ってはいなかっただろうに。
家庭的な不幸に打ちのめされたため、もう何もかもいやになったのだろう。彼はもうボロボロだった。だがその時、彼の中に最後に残っていた
良心が、彼を自白へと導いたのかも知れない。

ラストは2001年9月11日の朝。マイケルがいつものように出勤すると、しばらくして外で大きな衝撃音やサイレンの音が響き渡る。
彼は消防士だから、恐らく殉職したのだろう。
だが、鍋のタイマーをセットして出かけるという一点だけで感動を呼ぼうというのは弱過ぎる。彼はいつものように帰宅するつもりだった
のに、たぶん生きては帰れなかったのだろうな、とは思うが、たったそれだけで胸が締め付けられるとまでは行かない。

このようにラストが弱いので、むしろカットした方がいいかもだが、そこまでは実に面白い。
男たちのそれぞれの運命が、胸に迫ってくる。
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