ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「パレードを待ちながら」

2021-09-21 10:57:35 | 芝居
9月7日紀伊國屋サザンシアターで、ジョン・マレル作「パレードを待ちながら」を見た(劇団民芸公演、演出:田中麻衣子)。
1977年の初演以来繰り返し上演され、今もカナダ市民に愛され続けている作品の由。
第2次大戦下、名誉と栄光に駆られた男たちが勇んで戦地に行進していったカナダ・カルガリー。男たちのため国のために銃後を守り奉仕活動に励む5人の女たちは、
おしゃべりと流行歌とダンスで「非常時」を耐え、愛する男たちを待ち続けます。しかし、戦争が長引くにつれ、家族はとても大事だけれど、家族がすべて
ではないことを、愛国心はとても大事だけれど、愛国心がすべてでないことを悟り始めます。行進し続ける軍楽隊のパレードに女性たちは・・・(チラシより)。

20代から50代の5人の女性が、それぞれ戦時下の日々を送っている。
夫が志願兵として出兵し、生活のため働き始めた人。
ドイツ系で、9歳の時親に連れられてカナダに移住した人。父はナチスと疑われ、スパイ容疑で逮捕される。父の紳士服店を引き継いで守っている。
教師で、年の離れた夫が保守的で、話が合わないことに苛立つ人。
父も夫もすでに亡くなり、長男は兵士として輸送船に乗り、17歳の次男が戦争反対のビラを配って警察に逮捕されたためおろおろする母親。
国防婦人会のリーダーとして皆を𠮟咤激励する人。ラジオ局のアナウンサーである夫が志願しないので、皆から後ろ指を指されないようにと頑張っているが・・。

戦争が長引くにつれ、ドイツ系の女性に対する住民からの嫌がらせが次第にエスカレートする。家の中に発煙筒が投げ込まれ、ある朝起きると、家の前に
大きな黒い犬の死骸が置かれていた。すでに腐っていてひどい臭いを放っていた。終戦前にようやく釈放された父は、長い間の収容で身も心も傷ついていた。
体は始終震え、娘のことを「お前はわしの娘じゃない。うまく娘のふりをしているが、違う」と言い、ついに亡くなるまで心を開いてはくれなかった・・。

歌はともかく、幕開けと幕切れにある、国旗を振りながらのダンスのシーンが、現代の我々にはいささか退屈。
初演の時には、戦時中の流行歌で盛り上がったというが、今では知らない曲ばかりなので、国広和毅が新しく作曲した由。
婦人会でのさまざまな活動が興味深い。
灯火管制下、短時間で身支度を整える訓練など。
だが全体に、少々長い。もっと刈り込めるのではないか。

作者はカナダ西部カルガリーの第二次大戦の記憶を劇化するため市民の証言を集めたが、彼の胸を打ったのは女性のウィットとたくましさだった。
歌とダンスとユーモアが苦悩と悲しみに満ちた女性の銃後の暮らしを彩り、男性の愚かしさが今も変わらぬことに警鐘を鳴らしている(チラシより)。

キャスティングがいい。5人それぞれの性格と事情に役者たちがぴったりはまっていて気持ちがいい。
あまり知られていない、戦争中のカナダの人々の暮らしが、ぐっと身近に感じられた。

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