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土漠の花


 月村了衛      幻冬舎

 男哭き必至の冒険小説である。直球ストレートど真ん中の冒険小説だ。美しき姫を守って敵中横断、危機また危機。はたして彼らの運命やいかに。ハラハラドキドキ、手に汗握る大冒険。黒澤明の「隠し砦の三悪人」を思い越す傑作エンタティメントである。
 墜落したヘリコプターを捜索するため自衛隊第一空挺師団の精鋭12人。ジプチとソマリアの国境近くの現場に到着したところ、何者かに追われている若い女性が助けを求めて逃げ込んできた。
 彼女はソマリアの氏族長の娘。彼女の氏族は大虐殺に見舞われ、生き残った彼女は命からがら逃げのびたというわけ。
 彼女を追ってきた敵が襲ってきた。そこまで乗ってきた車両も奪われる。で、彼女を難民保護という名目で保護することを決断。国境を越えてソマリア領内を通って逃げる。
 通信手段なし。武器なし。実戦経験なし。救援が来る望みなし。ないないづくしの自衛隊員12人が、巨大な敵に追われながら、「世界で最も危険な場所」を横断して基地にもどろうとする。
 敵は敵対氏族の民兵だけでない。最強最悪の過激派が敵に合流。熱風吹きすさぶ砂嵐。日本の自衛隊員だから地理には不案内。部隊内での意見の対立。そして12人は一人死に二人死に、だんだん減っていく。
 帯のコピーは誇大広告ではない。まさしく一気読み必至の冒険小説である。内藤陳さんがご存命ならば、本作をお読みになったご感想をぜひお聞きしたかった。
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