鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

十勝の自然68 ヘラシギ

2015-10-26 16:22:32 | 十勝の自然

Photo by Chishima, J.
ヘラシギ幼鳥 2010年9月 北海道中川郡豊頃町)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年9月14日放送)


 生き物の世界には一般的な姿かたちで、幅広い餌を食べる何でも屋さんが多くいる一方、独特の形態や習性を持ち、他の種が利用しない資源をたくみに利用しながら生きるスペシャリストも存在します。水鳥のシギの仲間にも多くのスペシャリストがいます。その特殊さは、餌を食べる器官の嘴によく表れます。砂の中に差し込み、中にいるカニを捕えるため大きく下に曲がったチュウシャクシギの嘴、小石をひっくり返して餌を探すノミのようなキョウジョシギの嘴などは、食生活の特殊化に適応したものです。
 中でもひときわ変わった嘴を持つのがヘラシギ。スズメくらいのこの小さなシギは、その名の通りのヘラのような嘴を浅瀬や波打ち際にひたして、あるいは左右に振りながら、小動物を効率良く捕えます。ちなみに、ヒナは生まれた時から既に、ヘラ型の嘴をしているそうです。
特殊な生活を選んだ生き物はたいてい、分布が狭かったり、数が少なかったりしますが、ヘラシギも地球上でロシアの北東端にあるチュコト半島からカムチャツカ半島の北部でのみ繁殖します。40年ほど前に5000羽以上いた個体数は2000年以降急減し、2013年の調査では約100ペアしか確認されず、地球上で最も絶滅の危険が高い鳥とされます。
 近年の激減には、地球温暖化などによる繁殖地の環境変化、中継地である東アジアでの干潟や湿地の埋め立てや開発、越冬地のミャンマーやバングラデシュでの狩猟や環境消失が複合的に作用していると考えられ、解決を難しくしています。それでも、世界中の保護関係者が関心と情熱を注ぎ、人工増殖の試みも始まるなど希望も見え始めています。
 十勝では少なくとも5回記録があり、うち2回は大樹町歴舟川河口、残り3回は以前このコーナーでもご紹介した豊北原生花園周辺からです。豊北で2010年9月に数日間、1羽滞在したのが一番最近の記録です。


(2015年9月4日   千嶋 淳)

150914 渡り観察(池田町)

2015-10-26 16:11:51 | 鳥・秋

All Photos by Chishima, J.
ハチクマ・オス成鳥 以下すべて 2015年9月 北海道中川郡池田町)


 朝から快晴で絶好の渡り日和でした。早い時間はハチクマやノスリが比較的低い高度で飛び、ツミがそれにモビングをかける一幕もありました。陽気や日長にほだされたか、ヒガラやハシブトガラ、キバシリなどが囀っていました。

キバシリ



確認種:ドバト キジバト アオバト カワウ タンチョウ ハチクマ6 トビ オジロワシ1 ツミ5 ハイタカ7 オオタカ1 ハイタカ属sp.3 ノスリ9 コゲラ オオアカゲラ アカゲラ クマゲラ チゴハヤブサ1 カケス ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ ヒガラ シジュウカラ ヒヨドリ メジロ ゴジュウカラ キバシリ コサメビタキ ビンズイ カワラヒワ ホオジロ アオジ


ハチクマ・幼鳥黒色型



ノスリ



(2015年9月14日   千嶋 淳)

150912 渡り観察(池田町)

2015-10-26 16:06:36 | 鳥・秋

Photo by Chishima, J.
オオタカ成鳥 2015年9月 北海道中川郡池田町)


 数日ぶりの晴れ間がのぞく清々しい朝。観察地点に着くと早速クマゲラの声。環境からして繁殖しているとは到底思えないのですが、渡りの時期には毎年姿を表します。快晴なので発見時には既にかなりの高さに達しているものが多かったのですが、タカ類の渡りも楽しめました。
 好天に誘われてか、この場所にしては珍しく人も多く、弾き語りをする旅人や朝からビールを飲んでる人(←車で来てるのに…)もいました。


確認種:ドバト キジバト アオバト タンチョウ ハチクマ2 トビ ツミ2 ハイタカ2 オオタカ2 ハイタカ属sp.2 ノスリ9 コゲラ アカゲラ クマゲラ チゴハヤブサ3 モズ カケス ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ ヒガラ シジュウカラ ヒヨドリ メジロ ゴジュウカラ コサメビタキ ビンズイ カワラヒワ ホオジロ アオジ


(2015年9月13日   千嶋 淳)

150910-11 十勝海岸(豊頃町、浦幌町)

2015-10-26 15:59:41 | 鳥・秋

All Photos by Chishima, J.
荒れた海上を飛ぶチュウシャクシギの小群 以下すべて 2015年9月 北海道十勝海岸)


 台風に伴う高波で、外洋性の海鳥が沿岸に飛来して来ないか、午後の数時間探しました。波の割にミズナギドリもウミツバメも見られませんでしたが、降りる浜がなくて右往左往するチュウシャクシギの群れやtaimyrenisを含む多くのセグロカモメを観察できたのは収穫でした。それからカラーリング付きのカモメ類も2羽。ウミネコ赤「L8」はHさんのやつかな?もう1羽のセグロカモメは飛び立つ群れを撮ったのに偶然写っていてブレ・ボケが酷いですが、白地に数字(かアルファベット)3文字が記してあるようです。


カラーリング付きのウミネコ



確認種:ヒシクイ ヨシガモ ヒドリガモ マガモ コガモ シノリガモ クロガモ ハジロカイツブリ キジバト カワウ ウミウ アオサギ タンチョウ タシギ チュウシャクシギ アオアシシギ(これのみ池田町) タカブシギ キアシシギ イソシギ ミユビシギ トウネン ハマシギ ウミネコ セグロカモメ taimyrensis オオセグロカモメ トビ オジロワシ ノスリ オオタカ モズ ハシボソガラス ハシブトガラス ツバメ ムクドリ ノビタキ スズメ ハクセキレイ 


カラーリング付きのセグロカモメ



(2015年9月13日   千嶋 淳)

十勝の自然67 湧洞沼

2015-10-26 15:13:26 | 十勝の自然

Photo by Chishima, J.
湧洞沼 2014年9月 北海道中川郡豊頃町)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年9月9日放送)


 十勝川河口から南西へ伸びる海岸線には、長節湖、ホロカヤントーなどいくつもの湖沼が点在します。これらは海跡湖(かいせきこ)と呼ばれ、かつて海の一部だった場所が川から流れ込んだ土砂などで海と隔てられた汽水の湖です。
 これら海跡湖の中で最大なのが面積349ヘクタール、周囲17.8kmの湧洞沼。ほとんど観光地化されておらず、十勝海岸の自然を満喫できる穴場です。帯広からは車で1時間半弱。国道336号線を外れて南下するとまず、「ハマナス橋」、「リンドウ橋」などと名付けられ、赤や紫の原色に塗られた小さな橋が目に飛び込んで来ます。せっかくの景観の中の、不調和な人工物は残念でなりません。
 しばらく進むと、右側はいつの間にか湿性林となっていて春先にはミズバショウの花が林床を白く彩ります。湿性林を抜けると、そこは湧洞川河口の湿原。水辺の鳥を観察するのに絶好のポイントで、見られる鳥はその時々の水位によって変化します。海側の砂丘が繋がっていて、沼の水位が高い時にはスズガモやカイツブリ類など潜って餌を捕える水鳥が中心です。一方、年に数回、砂丘が決壊して水が海へ流れ出し、水位が下がった時には広大な干潟が現れ、夥しい数のシギやカモの仲間で賑わいます。タンチョウは、ほぼ常時見ることができるでしょう。
 海と出会ってからの数kmは、両側に海岸草原が広がります。夏にはエゾカンゾウ、ハマナスなどの花が絢爛に咲き誇り、その頂でノゴマ、シマセンニュウなど草原性の小鳥が自慢の歌で北太平洋の潮騒と競い合う、この世の楽園のような光景を楽しめます。
 沼南西側の行き止まり付近には何軒かの番屋があり、ワカサギやヌマエビの漁が行われています。これらの佃煮などを、豊頃町内のお店で買うこともできますので、お土産にいかがでしょうか。
 なお、12~4月頃の冬期には、沼へ通じる道は通行止めとなりますので、ご注意下さい。


(2015年8月27日   千嶋 淳)