All Photos by Chishima,J.
(シロカモメ・第1回夏羽 以下すべて 2008年5月 北海道中川郡豊頃町)
政治家の汚職や官庁の談合の類ではない(無論、それらにもウンザリではあるが)。釣り糸や漁網に絡んで衰弱する海鳥の多さを先般書いたばかりだが、その舌の根も乾かぬ内にまたそうした海鳥に出会ってしまった。場所は渡り途中のカモメ類で賑わう河口。被害者はシロカモメの幼鳥(第1回夏羽)。
午後の河口で砂浜に憩う、また周辺を舞うカモメ類を観察していたが、1羽のシロカモメの幼鳥が、私の接近にも臆さず砂浜にじっと座っていたので、「愛想の良い個体だなぁ」とありがたく撮影させてもらっていた。しばらく後、立ち上がったシロカモメは脚の辺りを嘴でつつき始めた。不審に思って双眼鏡を覗いた次の瞬間、口をついて出たのは、「またかよ…」の一言だった。脚には釣り糸がぐるりと絡んで、それが気になるらしく、つついていたのだ。当然、複雑に絡んだ糸はそれくらいで取れる筈もなく、少しばかりの空しい抵抗の後、シロカモメは再び座り込んでしまった。座っていたのも、警戒心の薄さも、衰弱の裏返しということだろう。
被害者(シロカモメ・第1回夏羽)
立ち上がった。
しきりに脚を気にしている。
拡大写真。釣り糸が双方の脚に、複雑に絡まっている。
この日の午前、付近の別の海岸で、左脚の先端部が欠損したウミネコの成鳥にも出会っている。こちらも釣り糸やテグスが巻きついて当該部分を圧迫し、落ちてしまったものと思われる。去年の9月に、同様に左脚先端の無いウミネコを見た場所から数㎞の距離なので、もしかしたら同じ個体なのかもしれない。嘴や脚の黄色が鮮やかさを増し、眼瞼の赤も艶やかな繁殖期の羽衣を纏った彼(女?)は無事に繁殖できるだろうか?
左脚の先端を失ったウミネコ・成鳥
人間の身勝手さが、水鳥たちの生存を危機に晒すような愚行は、断じて繰り返されてはならない。
シロカモメ・若鳥の諸相
第1回夏羽。虹彩は暗色。大きな魚を飲み込もうと悪戦苦闘中。
第2回夏羽。上に似るが虹彩は明るく、白さも増している。
第3回以降の夏羽(右)。上面の淡い灰色も出て一見成鳥のようだが、嘴がまだ若鳥のもの。左はオオセグロカモメの亜成鳥(第3回夏羽?)。
注意(オオセグロカモメ・若鳥)
全身白っぽく、シロカモメのようだがこちらはオオセグロカモメの若鳥(第1回夏羽?)。著しく磨滅した個体がこのように白くなって、シロカモメと間違えられることがあるが、諸特徴はやはりオオセグロ。
釣り糸・漁網による水鳥の被害については、
「身勝手の犠牲者」
「氷山の一角」
の記事も参照。
(2008年5月18日 千嶋 淳)