少し前まで夜明け前後を中心に森林や原野を賑わせてきた鳥たちの囀りも、かなり静かになった。鳥類の囀りにはさまざまな機能が知られているが、その中でも異性の誘引やなわばりの誇示は重要なものであり、繁殖も後半にさしかかったこの時期にはそれらを積極的に行なう必要のないことによるものだろう。そのかわり、今年新たに誕生した幼鳥の姿を目にする機会が圧倒的に多くなってきた。
暖地ではキジバトなど季節に関係なく繁殖する種もいる(これは、ハト類がピジョンミルクというタンパク質や脂肪を含んだ液体を雛に与えることができるため、タンパク源を昆虫に依存しなくてもよいためである)が、厳冬期は雪と氷に閉ざされるここ北海道では繁殖は春から夏にかけての一大イベントである。
オジロワシなど一部の猛禽類はまだ雪深い時期から抱卵に入るが、数も少ない上に日常生活で繁殖の舞台を目にする機会は滅多にない。そういう意味では、新しい生命の誕生をいち早く我々に教えてくれるのは、5月中・下旬のマガモやタンチョウ、チドリ類の雛の出現であろう。
マガモの雌と雛(後方の3羽)
Photo by Chishima,J 2005年7月 北海道帯広市
タンチョウの親子
右側の成鳥が足元のまだ幼い雛に給餌している。
Photo by Chishima,J2005年5月 北海道十勝川下流域
<script src="http://j8.shinobi.jp/ufo/09432870l"></script>
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アクセス解析</noscript>
コチドリの雛
十勝ではイカルチドリよりも渡来・繁殖ステージはやや遅い傾向にある。
Photo by Chishima,J 2005年6月 北海道中川郡豊頃町
これら早成性(そうせいせい)と呼ばれる鳥類の雛は、卵から孵化した時点で目が開き、羽毛が生えており、すぐに巣を離れて行動するため、より早い時期から目に付くのである。ただし、同じく早成性のアカエリカイツブリやカイツブリは、十勝では雛が出現するのが7~9月と遅い傾向にある。
草の中から周囲をうかがうオオジシギの親子
Photo by Chishima,J 2005年7月 北海道十勝郡浦幌町
雛に給餌するアカエリカイツブリ
Photo by Chishima,J 2005年7月 北海道十勝川下流域
その要因としては天敵による捕食や人間による撹乱などの可能性があるが、よくわかっていない。早成性の雛たちは生まれてすぐ自由に動き回って採餌できる利点の反面、危険との遭遇も少なくないと思われ、カモ類の家族などは日一日と雛の数が減ってゆくことも珍しくない。そういえば、少し前に帯広市内でマガモの雛が一家族丸ごと側溝に落ちる事件があった。あれは偶々人の目に付いて救出されたが、おそらく氷山の一角と思われる。
早成性の雛とは対照的に、樹上や樹洞で繁殖する多くの小鳥類などの雛は丸裸な上に目も閉じた状態で生まれ、晩成性(ばんせいせい)と呼ばれる。晩成性の雛は羽毛が生え揃って飛べるようになるまでの間、巣で親鳥による世話を受けるので、人目に付くのは巣立ち以降ということになる。この辺りでは6月上旬のシジュウカラやハシブトガラがもっとも早く、スズメやカラス類、次いで中・下旬のノビタキなどが続く。
あどけない顔をしたスズメの雛
Photo by Chishima,J 2005年7月 北海道中川郡豊頃町
スズメの親子
巣立ち後もしばらくは親の世話を受けるようで、羽を震わせて餌をねだっていた。
Photo by Chishima,J 2005年7月 北海道中川郡豊頃町
ノビタキの巣立ち雛
Photo by Chishima,J 2005年7月 北海道中川郡豊頃町
ノビタキ以外は周年北海道に生息する留鳥であり、やはりより早期から繁殖に従事するのであろう。7月以降は夏鳥も含めて多くの晩成性の種でも巣立ち雛が出るが、同時に葉や下草も茂ってくるのでその姿を見ることは意外と難しい。そんな中でカラ類は例外である。しばしば近縁種と混群を形成して鳴きながら林内を移動するその存在は視覚・聴覚的に目立つだけでなく、外の世界に出たばかりの幼鳥は好奇心に満ちあふれている。唇をすぼめ、鳴き真似をするとすかさず、何羽もの幼鳥がひっきりなしに樹冠からすぐ頭上まで様子見にやって来て、至福の一時を提供してくれるだろう。
シジュウカラの巣立ち雛
胸のネクタイも細く、不完全だ。
Photo by Chishima,J 2005年7月 北海道帯広市
(2005年7月27日 千嶋 淳)
暖地ではキジバトなど季節に関係なく繁殖する種もいる(これは、ハト類がピジョンミルクというタンパク質や脂肪を含んだ液体を雛に与えることができるため、タンパク源を昆虫に依存しなくてもよいためである)が、厳冬期は雪と氷に閉ざされるここ北海道では繁殖は春から夏にかけての一大イベントである。
オジロワシなど一部の猛禽類はまだ雪深い時期から抱卵に入るが、数も少ない上に日常生活で繁殖の舞台を目にする機会は滅多にない。そういう意味では、新しい生命の誕生をいち早く我々に教えてくれるのは、5月中・下旬のマガモやタンチョウ、チドリ類の雛の出現であろう。
マガモの雌と雛(後方の3羽)
Photo by Chishima,J 2005年7月 北海道帯広市
タンチョウの親子
右側の成鳥が足元のまだ幼い雛に給餌している。
Photo by Chishima,J2005年5月 北海道十勝川下流域
<script src="http://j8.shinobi.jp/ufo/09432870l"></script>
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コチドリの雛
十勝ではイカルチドリよりも渡来・繁殖ステージはやや遅い傾向にある。
Photo by Chishima,J 2005年6月 北海道中川郡豊頃町
これら早成性(そうせいせい)と呼ばれる鳥類の雛は、卵から孵化した時点で目が開き、羽毛が生えており、すぐに巣を離れて行動するため、より早い時期から目に付くのである。ただし、同じく早成性のアカエリカイツブリやカイツブリは、十勝では雛が出現するのが7~9月と遅い傾向にある。
草の中から周囲をうかがうオオジシギの親子
Photo by Chishima,J 2005年7月 北海道十勝郡浦幌町
雛に給餌するアカエリカイツブリ
Photo by Chishima,J 2005年7月 北海道十勝川下流域
その要因としては天敵による捕食や人間による撹乱などの可能性があるが、よくわかっていない。早成性の雛たちは生まれてすぐ自由に動き回って採餌できる利点の反面、危険との遭遇も少なくないと思われ、カモ類の家族などは日一日と雛の数が減ってゆくことも珍しくない。そういえば、少し前に帯広市内でマガモの雛が一家族丸ごと側溝に落ちる事件があった。あれは偶々人の目に付いて救出されたが、おそらく氷山の一角と思われる。
早成性の雛とは対照的に、樹上や樹洞で繁殖する多くの小鳥類などの雛は丸裸な上に目も閉じた状態で生まれ、晩成性(ばんせいせい)と呼ばれる。晩成性の雛は羽毛が生え揃って飛べるようになるまでの間、巣で親鳥による世話を受けるので、人目に付くのは巣立ち以降ということになる。この辺りでは6月上旬のシジュウカラやハシブトガラがもっとも早く、スズメやカラス類、次いで中・下旬のノビタキなどが続く。
あどけない顔をしたスズメの雛
Photo by Chishima,J 2005年7月 北海道中川郡豊頃町
スズメの親子
巣立ち後もしばらくは親の世話を受けるようで、羽を震わせて餌をねだっていた。
Photo by Chishima,J 2005年7月 北海道中川郡豊頃町
ノビタキの巣立ち雛
Photo by Chishima,J 2005年7月 北海道中川郡豊頃町
ノビタキ以外は周年北海道に生息する留鳥であり、やはりより早期から繁殖に従事するのであろう。7月以降は夏鳥も含めて多くの晩成性の種でも巣立ち雛が出るが、同時に葉や下草も茂ってくるのでその姿を見ることは意外と難しい。そんな中でカラ類は例外である。しばしば近縁種と混群を形成して鳴きながら林内を移動するその存在は視覚・聴覚的に目立つだけでなく、外の世界に出たばかりの幼鳥は好奇心に満ちあふれている。唇をすぼめ、鳴き真似をするとすかさず、何羽もの幼鳥がひっきりなしに樹冠からすぐ頭上まで様子見にやって来て、至福の一時を提供してくれるだろう。
シジュウカラの巣立ち雛
胸のネクタイも細く、不完全だ。
Photo by Chishima,J 2005年7月 北海道帯広市
(2005年7月27日 千嶋 淳)