鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

霧の北太平洋にフルマカモメの乱舞して…

2005-07-23 08:03:19 | 海鳥
2005年7月14、15日
苫小牧-八戸航路往復

鳥:コアホウドリ クロアシアホウドリ フルマカモメ オオミズナギドリ アカアシミズナギドリ ハイイロミズナギドリ ハシボソミズナギドリ ハイイロウミツバメ ハイイロヒレアシシギ アカエリヒレアシシギ トウゾクカモメ オオセグロカモメ ウミネコ ウミスズメ ウトウ
海獣:カマイルカ イシイルカ キタオットセイ

 久しぶりの夏の航路だったが、日頃の行いが余程悪いのか、行程の半分くらいは濃霧に閉ざされていた。少し前に仙台からの航路で同じ海域を観察した友人は、ミナミオナガミズナギドリツノメドリを観察しているので淡い期待を抱いていたがそれも適わず、これだけ観察できただけでも未だありがたいと自分を慰めてみる。一泊した八戸の居酒屋で食べた刺身(どんこなめろう、青柳など)も美味しかったことだし。

霧の中のクロアシアホウドリ
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Photo by Chishima,J
神秘的ではあるが…

ハシボソミズナギドリ①
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Photo by Chishima,J
群れ


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ハシボソミズナギドリ②
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Photo by Chishima,J
船の接近で慌てて飛び立とうとするも中々

 優占種は.、ハシボソミズナギドリフルマカモメ、次いでぐっと減ってオオミズナギドリハイイロミズナギドリクロアシアホウドリという感じだった。

海上のクロアシアホウドリ
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Photo by Chishima,J
翼をたたんでもやはり存在感のある鳥

 今回に限らず、6、7月の三陸~北海道沖ではフルマカモメの多さに目を見張る。しかし、考えてみると南半球の夏(すなわちこちらの冬)に繁殖を終えて北半球の寒帯・亜寒帯域に策餌のため飛来するハシボソ・ハイイロミズナギドリや日本近海に繁殖地の多いオオミズナギドリとは異なり、典型的な北洋のミズナギドリ(名前はカモメだがれっきとしたミズナギドリ類)である本種がなぜ、本来繁殖の時期である初夏にこれだけの数いるのだろうか?ちなみに、日本からもっとも近い繁殖地は中部以北の千島列島やオホーツク海北部であり、直線距離にしても500~1000キロは離れている。

オオミズナギドリ
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Photo by Chishima,J
日本近海では最優占種ながら、世界的には準日本固有種

考えられる一つの可能性は、繁殖期に日本近海でみられるフルマカモメは、若鳥などの非繁殖鳥から成っているというものである。海鳥は一般に寿命が長く、また成長も緩やかで、小鳥などにように生まれた翌年から繁殖に従事するようなことは少ない。ヨーロッパのフルマカモメにおいては、繁殖開始年齢は6~12歳、平均で9.2歳であることが知られている。したがって、この年齢に達しない若い個体は特に繁殖地に帰る必要も無いから、日本近海でぶらぶらしていることもありそうなものである。

フルマカモメ(暗色型)
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Photo by Chishima,J
ミズナギドリ類の割には丸く短い翼とふっくらした体

フルマカモメ(明色型)
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Photo by Chishima,J
北太平洋では北部で明色型、南部で暗色型が卓越するので、日本近海では比較的珍しい

もう一つの可能性は、千島列島などで繁殖する個体が、策餌のためにこれらの海域を訪れていることである。繁殖中にそんな遠くまでまさかと思われるかもしれないが、ミズナギドリの仲間は繁殖期間中、数日に一度程度しか繁殖地の島には戻らない。電波発信機を装着された、伊豆諸島で繁殖するオオミズナギドリは、子育て中ですら600~1000キロ離れた三陸沖や北海道南部沿岸への定期的な策餌回遊を繰り返したという。また、確認されてはいないものの、南半球で繁殖するハシボソミズナギドリは、繁殖海域から2000キロのナンキョクオキアミの分布域まで、定期的な回遊飛行を行なっている可能性が指摘されている。こうしたことを考えると千島列島あたりで繁殖する個体が、ふらっと北海道や東北の沖まで餌を食べに来るというのもあながち的外れではないのかなという気がする。三陸沖は北からの親潮と南からの黒潮が混合し、世界的な漁場としても名高い海域である。

カマイルカの一群
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Photo by Chishima,J
夏には北海道近海で普通。奥の鳥群はウトウ

キタオットセイの幼獣
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Photo by Chishima,J
アシカ科の特徴である耳介が写っている

* 引用文献は、文章の流れ上またスペースの関係で省略します。

(2005年7月18日 千嶋 淳)