鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

150416 プライベートガイド(十勝川下流域)

2015-05-12 15:21:47 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
シジュウカラガンやマガンの群れとキタキツネ 2015年4月 北海道十勝川下流域)


 午後、名古屋からのお客さんを案内させていただきました。娘さんの移住されている帯広を訪ねるついでに趣味の鳥も楽しめたらとネットで探していたところ、野鳥の会十勝支部のHPが目にとまり、ガイドをご用命下さったとのことでありがたい限り。
 時折小雨もちらつく生憎の曇天でしたが、その分、鳥との距離は近く、マガン、ヒシクイはもちろん、ハクガン、シジュウカラガンの群れも割と近くで観察でき、お住まいの地では馴染みの薄い大型水鳥の群れの迫力を感じていただけたかと思います。タンチョウやオジロワシもしっかり見られました。4月に入ってからは、この天然記念物4種+希少ガン類2種にはパーフェクトに出会えています。
 水鳥の観察後に訪れた孤立林は肌寒く、キバナノアマナやウラホロイチゲの花も閉じがちでしたが、近くのハルニレの梢では北帰行を控えたツグミが複雑な節回しでぐぜっていました。
 池田発着の3時間程度の周遊(海はなし)で確認できた鳥は、以下の35種でした。


確認種:ヒシクイ マガン ハクガン シジュウカラガン オオハクチョウ ヨシガモ ヒドリガモ マガモ カルガモ コガモ キンクロハジロ ホオジロガモ ミコアイサ カワアイサ キジバト アオサギ タンチョウ オオバン カモメ トビ オジロワシ アカゲラ ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ シジュウカラ ヒバリ ヒヨドリ ムクドリ ツグミ ノビタキ スズメ ハクセキレイ カワラヒワ オオジュリン

 ガン類を観察中、群れの一部が急に飛び上がったので「ワシ!?」と思って見ると、キタキツネが1頭、群れのすぐ後ろを爆走していました。そしてふと立ち止まり、残ったガン類が一斉に首を上げて警戒しているのが写真です。以前はマガンの群れの中にシジュウカラガンを探すのが普通でしたが、最近ではシジュウカラガンの群れにマガンが混じっている感じです。


(2015年4月17日   千嶋 淳)

十勝の自然6 ノビタキ

2015-05-05 17:25:56 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
ノビタキのオス 2009年6月 北海道河西郡更別村)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん)


 4月も10日を過ぎると、中国南部や東南アジアで冬を越していたノビタキが十勝に帰ってきて、「ヒーヒョロリヒー」と朗らかなさえずりを聞かせてくれます。スズメより少し小さく、オスでは頭から背中の黒とお腹の白、胸のだいだい色のコントラストが美しい小鳥です。
 ヒバリと並んでもっとも普通の草原の小鳥で、農耕地や海岸、原野などのほか線路わきや住宅地内の空き地といった、ちょっとした草のある場所にも生息しています。また、山の中でも伐採跡地やスキー場など開けた環境があればいて、驚かされることがあります。
 十勝ではごく身近なノビタキも、本州では高原の鳥です。生まれ育った群馬では、毎年夏に、唱歌「夏の思い出」で有名な尾瀬ヶ原へ見に行くのを楽しみとしていました。北海道は寒冷なので、平地でもノビタキの好む環境や餌があるということなのでしょう。帯広周辺では市街地にも普通なゴジュウカラやヒガラなども、本州では山に行かないと見ることができない鳥です。
 生息数の多い鳥ですが、ほかの鳥の巣に卵を産んで育てさせる、托卵(たくらん)という習性を持つカッコウの、主な托卵相手になっています。托卵されるとカッコウのヒナが少し早く孵(かえ)って、本能的にノビタキの卵を巣の外に捨ててしまうので、ノビタキにとっては迷惑な話でしょう。


(2015年4月10日   千嶋 淳)

150412十勝川下流域

2015-05-05 16:46:41 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
夏毛へ換毛中のエゾユキウサギ 2015年4月 北海道中川郡豊頃町)


 沼の氷はほぼ完全になくなり、雪も日陰などを除くと消失しました。午前中は風も弱く、陽光が燦々と照りつける中、ヒバリが天に向かって談判し、ノビタキやオオジュリン、キジバトが囀りを奏で、アカエリカイツブリが賑やかに鳴き交わす、実に長閑な十勝川下流域でした。
 その長閑さを海岸でも味わおうかと思ったら、季節はずれの濃霧で寒く、早々に退散しました。
 所々でエゾアカガエルがマガンに似た甲高い声で大合唱し、防風林の林床にはエゾエンゴサク、キバナノアマナ、ウラホロイチゲ、ザゼンソウなどの花が咲き、夏毛へ換毛中のエゾユキウサギと出会うなど、鳥以外でも早春の十勝平野の自然を謳歌した一日でした。
 カモ類が種、個体数ともさらに少なくなりましたが、タンチョウ、オジロワシ、マガン、ヒシクイの天然記念物4種とハクガン、シジュウカラガンはコンスタントに観察できています。


確認種:ヒシクイ マガン ハクガン シジュウカラガン オオハクチョウ ヨシガモ ヒドリガモ アメリカヒドリ マガモ カルガモ オナガガモ コガモ キンクロハジロ スズガモ シノリガモ クロガモ ホオジロガモ ミコアイサ カワアイサ アカエリカイツブリ ドバト キジバト ヒメウ カワウ アオサギ タンチョウ オオバン カモメ オオセグロカモメ トビ オジロワシ ハイタカ コゲラ アカゲラ ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ シジュウカラ ヒバリ ヒヨドリ キレンジャク ゴジュウカラ ムクドリ ノビタキ スズメ ハクセキレイ アトリ カワラヒワ ホオジロ オオジュリン


(2015年4月12日   千嶋 淳)

十勝の自然3 ガン類とオオハクチョウ

2015-04-28 22:18:17 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
オオハクチョウヒシクイなどの大型水鳥 2013年4月 北海道中川郡豊頃町)

(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん)

 浦幌町、豊頃町から池田町にかけての十勝川下流域は、春と秋に多数のガン類やオオハクチョウが羽を休める、国内でも有数の大型水鳥の中継地です。オオハクチョウは帯広川や十勝川温泉でも見られるので、ご存知の方も多いでしょう。ガン類はカモとハクチョウの中間くらいの大きさで、カムチャツカなどロシア極東で夏に繁殖し、東北や北陸で冬を越す行き帰りに十勝へ立ち寄り、渡りに向けたエネルギーを蓄えます。
 1万羽を超えるマガン、5000羽以上のオオヒシクイ、2000羽以上のオオハクチョウにくわえ、近年では希少種のハクガンやシジュウカラガンも群れで飛来し、沼や川、農耕地はこれらの水鳥で賑わいます。一方で、畑のコムギやジャガイモを食べてしまうこともあり、農業に携わる方からは害鳥視されることも少なくありません。
 警戒心の強い鳥なので、観察の際には近寄りすぎない、車から降りないなどの注意が必要です。同時に、牧草地を含め農地へ立ち入らない、農作業の邪魔になるような車の止め方をしないといった地域への配慮も忘れないようにしましょう。NPO法人日本野鳥の会十勝支部のホームページでは、この地域での鳥の見方やマナーも紹介しておりますので、是非参考にしてください。


(2015年4月8日   千嶋 淳)


十勝の自然1 ヒバリ

2015-04-28 21:51:14 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
囀りながら天に昇るヒバリ 2013年4月 北海道中川郡豊頃町)

(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん)

 冬の寒さが厳しい北海道では春から夏に繁殖のため渡ってくる「夏鳥(なつどり)」が圧倒的に多く、その先駆けがヒバリです。年によってはまだ雪や氷の残る3月20日過ぎにはもう、本州より南の越冬地から十勝に帰ってきます。
 帰ってきてすぐは酪農家の堆肥場に群がって餌を食べているか、「ビュルル」と地味な声で鳴くだけで目立ちませんが、一週間もすると複雑な、歌のようなさえずりを奏でながら上空を上ってゆくようになります。俳句で春の季語にもなっている「揚げひばり」というやつです。
 畑、河川敷、牧場など草丈の低い草原に住み、全国的にはそうした環境が減っているため、絶滅のおそれのある動物リスト(レッドデータブック)にリストアップされている都府県もあります。郊外に農耕地や牧場の広がる十勝ではまだまだ多く、帯広市の鳥にも指定されています。
 四季の自然と関わりの深かったアイヌは、ヒバリにもいくつかのアイヌ語名を残していますが、釧路地方などでは「チャランケ・チリ(談判する鳥)」と呼ばれました。賑やかにさえずりながら空を上ってゆく姿が、あたかも天に物申しているように見えたのでしょう。
 ヒバリに始まった夏鳥の渡来は4月後半から5月にピークを迎え、6月はじめのエゾセンニュウまで続きます。


(2015年4月6日   千嶋 淳)