小さな栗の木の下で

保護犬のミニチュア・ダックスを引き取り、
小型犬との暮らしは初めて!という生活の中で、感じたことを徒然に…。

霜里農場の金子美登さん

2009-05-04 | 旅先でのお話

            (撮影/中島有里子さん)

 取材で埼玉県小川町にある霜里農場を訪ねました。農場主の金子美登(かねこよしのり)さんは「牛糞、生ゴミ、落ち葉、剪定枝チップ等を利用した堆肥生産、少量多品目栽培を基本として多様な昆虫相、アレロパシー(他感作用)等の利用による病害虫防除、太陽光発電に加え、バイオガス施設による液肥とガスの自給などを独自に組み合わせた自然エネルギー循環型の有機農業の技術体系を確立」したことで「農業技術の匠」に選ばれた人ですが、太陽光発電やらバイオガス施設やらと書かれると、何やら近代的な大型施設を思い浮かべてしまいます。

 ところがどっこい、入口を入るなり懐かしい匂いが漂い、アイガモの鳴き声といい、擦りよってくる猫たちの人懐っこさといい、のどかな「当たり前の農家の姿」というか「あるべき農家の姿」というか…。

     
     田畑の草や虫を食べ、肥料になる糞を落としてくれるアイ
     ガモたち

     
     草刈りもしてくれるけど、牛乳や糞尿を提供してくれるナ
     ナちゃん。額の柄が数字「7」に見えるから「ナナ」ちゃ
     
んです(撮影/中島有里子さん)

 「事実は小説より奇なり」といいますが、実際に訪ねた農場の暮らしぶりはびっくりすることだらけでした。太陽光発電はときどき買う電力の方が多くなるようですが、本当に自給自足の生活が成り立っているんだもの。

 3頭の牛の糞尿や生ごみを利用してバイオガス施設(施設と言っても大がかりなものではなく、手作りの地下タンクや肥えだめ)でメタンガスを発生させ、炊事、風呂や温水器、ガス灯、ガス冷蔵庫の燃料に使用しています。肥えだめの液肥は全然臭くありませんでした。

          
          メタンガスに点火して、火の強さ
          を見せる金子さん

 トラクターや車には廃食油から精製されたVDF燃料を使って稼働させ、太陽光発電もフル活用。自然のエネルギーを見事に循環させているんですね。

     
     太陽光発電によって井戸水をくみ上げているところ

 1971年、本格的な減反政策が始まったとき、進むべき道を決めたそうです。「国の農政には対抗するけど、安全で美味しくて、栄養価のある食べ物を作るなら、国民のだれかが支えてくれるはずだ」という覚悟のもと、その年から有機農業に取り組み始めたそうです。
 
 ようやくその展望が見え始めた頃、総合保養地整備法(リゾート法)の施行によって、霧里農場のある一帯にもゴルフ場開発の話が持ち上がったのですが、ゴルフ場維持に必要な農薬散布によって、有機農法による田畑が壊滅的なダメージを受けることは目に見えています。

 多額の買収金を積まれた地域では賛成派多数。でも金子さんは反対し続け、開発を断念させたのでした。金子さんの粘り勝ち。一度ゴルフ場に整地された土地を、もとの自然環境に戻すことは簡単にはできませんからね。

 それ以前にも金子さんは、集落への農薬空中散布を止めさせたそうですが、それを止めたからといって病害虫の被害は被っていないといいます。「杭も出過ぎちゃえば、もう打たれないもんだよ」だって。お見事! 
その後、有機農業と自然エネルギーを町全体に広めるために小川長議会議員に立候補。今も現役議員です。有機農業と地場産業を盛り上げることで地域に活気をもたらし、生産者と消費者の直接提携を促しました。すごいバイタリティーの持ち主です。

 アレロパシーの利用にも舌を巻きました! ホントによく動植物を勉強している人です。「土づくりは微生物の仕事。設計図はもう種の中にあるんだよ。私たちはちょっとお手伝いをするだけ」という言葉にも感銘を受けたけど、青々とした麦畑に連れて行ってくれたとき「きれいだなぁ」と呟いた私に「農民が元気になると村は美しくなるんだよね」と言った金子さんの笑顔も印象的でした。

 

コメント (2)
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