小さな栗の木の下で

保護犬のミニチュア・ダックスを引き取り、
小型犬との暮らしは初めて!という生活の中で、感じたことを徒然に…。

書籍『NICU 命の授業』発行

2020-08-31 | 
8月19日に赤ちゃんとママ社から発行された豊島勝昭先生著
『NICU 命の授業 ~小さな命を見守る最前線の現場から~』。



本書の取材執筆のお手伝いのお話をいただいたのが、昨年の6月。

ぺりかん社の学部調べシリーズ『環境学部』の制作と並行し、
『命の授業』の制作についても、毎月何かしら作業していた1年でした。

新型コロナの影響で、3カ月ほど発行が延びましたが、
無事発行されて、ほっとしました。

赤ちゃんとママ社編集部の菊地香織さんが、
豊島先生の講演を聞いて胸打たれ、
先生の活動をぜひ書籍化したいと熱心に動いた結果、生まれた本。

私自身は豊島先生に、10年前にTBSサービスから発行された
『がんばれ!! 小さき生命たち』で大変お世話になったのですが、
豊島先生の、NICUに入院する赤ちゃんたちやご家族に対する思い、
新生児科医としての考え方は、まったくブレることなく、
というより、むしろ熱く進化していました。

赤ちゃんとママ社のPR文によれば、
「豊島先生が2008年から続けられている『NICU命の授業』について、
新型コロナ禍でリアルな授業がままならない今だからこそ、
より多くの方に伝えたいという、あふれる想いをご執筆いただいた」とのこと。

赤ちゃんが無事に生まれるということは、
決して当たり前のことではないんですよね。

障害をもった子どもたちが、地域で生きていく難しさも含め、
いろいろ考えさせられました。

NICUの現状に関心のある方は、豊島先生のブログ
がんばれ!小さき生命たちよ ver.2」を
ご覧になるとよいと思いますよ。

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除籍本をいただく

2019-06-24 | 
初めて知った言葉、「除籍本」。
公共図書館の蔵書から外された本を、そう呼ぶそうだ。

市立図書館の分館に所蔵している本を借りに行ったら、
「ご自由にお持ちください」と書かれた除籍本コーナーがあった。

早い話がリサイクル本なんだけど、
「除籍」という言葉が、なんだかちょっぴり悲しい。

それほど古くない本も陳列されていたので、
どういう基準で除籍されるのだろうと思った。
あまり借りられなかった本?

興味をそそられたり、仕事の資料的価値がある本があったので、
つい何冊もいただいてきてしまった。

アムネスティに寄付するために、断捨離もかねて
40冊、チャリボンに送る用意をしたばかりだったのに。


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『子犬工場』4刷重版決定

2017-05-22 | 
WAVE出版の担当編集者さんから重版の連絡をいただいた。
少しずつだけど、動き続けていることがうれしい。


「児童書のよさは、息が長いことです」と、
編集者さんから言われたのだけど、そのとおりですね。

全国学校図書館協議会の選定図書にもなっているそうで、
4刷目のカバーの表4には、それが明記されるらしい。

子どもたちからも、ポツりポツリと読書感想文が届く。
「こういう法律を作るといいと思います」などと、
しっかりした指摘があったり、
「人間には殺処分はないのに」などと
さらっと書かれた一文があったり。

一生懸命考えて書きあげて、それを封筒に入れ、
切手を貼って投函するという、スマホで送るなら、
送信ボタンひとつで済む行為を、
何段階もの手順を踏んで、やり遂げてくれた子どもたちを
いとおしいなあ、ありがたいなあと思う。

あらかじめ、それを公表していいか聞いてあるので、
OKの場合だけ(これまですべてがOKだったけれど)、
公表していい名前で発表している。

そのブログが「Say NO プロジェクト広め隊活動報告」
http://blog.goo.ne.jp/imacoco201511


お便りをくれた皆さんには、お便りと一緒に、
缶バッチや「Say NO プロジェクト」の周知カードなどを送っている。

みなさん、ありがとう。
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『ありがとう エバせんせい』

2016-01-05 | 
フリーライターの友人、ゆかりさんが翻訳した絵本、
『ありがとう エバせんせい』が12月に発行された。


絵本塾出版発行1,300円+税

病気でお休みしている担任のエバ先生を気遣う子供たち。
念願の劇は見てもらえたけど、先生は天国へ。
エバ先生の代わりに担任を務めるバンクス先生と
悲しみと向き合う子どもたちのグリーフケアの物語だ。

こういったテーマを取り上げている絵本は、少ないのではないかな。
解説は「尾木ママ」こと、尾木直樹さんが書いてくださったそうだ。

ゆかりさんとは、15年くらいの付き合いになるだろうか。
一緒に仕事をし、密に連絡を取り合うようになったのは
某省庁の広報誌を制作するようになってから。

そのあとも、お互いに仕事を紹介し合いながら、付き合ってきた。
女手ひとつで、2人の子供を大学に入れ、
ホントによくがんばっていると思う。

実は、『子犬工場』出版のきっかけを作ってくれたのは、
ゆかりさんなのだ。

ゆかりさんに、ゼンヨージ画伯が二つ返事で描いてくれた
繁殖犬の絵本の原画を見せながら相談したところ、
彼女が友人のフリーの編集者に原画を見せて説明してくれ、
その人が今度は、児童書の編集をしている自分の友人に
話を持っていってくれたのだ。
そして、その児童書の出版社から「絵本の出版は厳しいけれど、
ドキュメンタリーなら出版させてほしい」ということに…。

そのあと二転三転するのだけれど、
ゆかりさんが親身になって、編集者の友達に話してくれなかったら、
『子犬工場』は生まれなかったのだ。
ゆかりさん、ありがとう。
暮れも押し迫ってから、お互いの本の出版を祝いながら、
労いあったのだった。
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児童書『子犬工場』関係のサイト

2016-01-02 | 
『子犬工場』の編集者さんが、
本書で取り上げた「知って広める動物愛護活動“Say NOプロジェクト”」に
子どもたち自ら参加できるような、子ども向けの仕掛けを考えませんか、
と提案してきたので、本書記載の感想文公募の告知と連動する
専用のサイトを作ることになった。

プロジェクト活動の本家は寄付金での運営なので、
「子ども向けのサイトは版元で作れませんか?」ということだったし、
版元には『子犬工場』だけのためにサイト制作はお願いできない。

仕方ないので、私が作ることになった。
けれど、資金力もパソコンの知識も微々たるもの、
やれることには限界がある。

本書に告知してしまった以上、何とかせねば、
ということで、ヨロヨロとサイトを立ち上げた。

「いっしょにしあわせになるために」http://imacoco.petit.cc/pineapple1/

スポンサーがいるわけではないので、その分、好き勝手ができる。
「少年詩」なんぞも掲載したり、ゆるい感じで始めてみた。

ありがたいことに、『子犬工場』を読んで
ちゃあんと感想文を送ってくれた子だもたちがいて、
もちろん掲載許可を取ってのことだけど、
感想文や活動報告を掲載するサイトも作ったのだった。


私が小学生のころ、
こんなにきっちりお手紙が書けたかな、と思わせる、
実にしっかりしたお手紙と感想文が届き、唸っている。

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『ある犬のおはなし』

2016-01-01 | 
昨日まで「今年」だったのに、
今日になったら、昨日のことはもう「去年」のできごと。
よく考えると、なんだか不思議で、ちょっぴり可笑しい。

去年のお正月、カヤに腹水が溜まって、
闘病が始まったのだった。
よく頑張ってくれたと思う。

さて、昨日注文してあった『ある犬のおはなし』が届いた。
Facebookで150万「いいね!」を獲得したために
書籍化したされたらしい。


Facebookでこの手作り絵本を読んだとき
泣かずには読み終えることができなかった。
主人公の「犬」が、ラブラドールに似ていたから、
トチ、ブナ、クリを思い出した。
まん丸のお尻が、あの子たちそのものだ。

ああ、こうやって春夏秋冬、一緒に生きたなあと、
キラキラ光る夏の日や、冬の枯れた木立の公園を
懐かしく思い出した。
物語には、そんな日々が、犬の目線で描かれている。

なのに、飼い主と過ごした、
そんなしあわせな日々の先に待っていたのは、
冷たい金属の部屋、ともだちの異様な雰囲気。

「犬が好きで飼ったはずなのに、人間の都合で手放す。
犬が嫌いな人は、端から犬を飼わない。だから、捨てることもない。
犬たちを苦しめているのは、結局『犬好き』の人間だ」と言ったのは、
知って広める動物愛護活動「SayNOプロジェクト」の代表だけど、
それを聞いて、その通りだなと思った。

『ある犬のおはなし』を読んで、
あらためて「まったくその通りだ」と思った。
今年はもう少し「知って広める活動」に力を入れたいと思っている。
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amazonからオススメ本

2015-11-29 | 
amazonから時々「本ストアから発売される
おすすめ商品をご紹介」というメールが来る。

amazonで動物関係の本を買ったりするので、
おすすめ本にはそんなジャンルも多いのだけど、
ここのところ立て続けに来たのが、
『子犬工場』をおすすめしますというもの。


知ってる、知ってる、自分の著者だもの。
すすめてくれて、ありがとう。

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『ダーシェンカ』愛蔵版届く

2015-11-28 | 
予約していた『ダーシェンカ』愛蔵版が届いた。
訳者の伴田良輔さんはちょうど20年前の12月に
新潮社から『ダーシェンカを出版している。

「それも持っていたはず」と思っていたのに、
本棚にあったのは、石川達夫訳で1996年に出た
『チャペックの犬と猫のお話』。
ここに「ダーシェンカ、あるいは子犬の生活」と題して、
チャペックの愛犬イリスが生んだ子犬、
ダーシャンカの物語が収録されていた。

    
左が1996年発行石川達夫さんの訳本、右が判田良輔さん訳新刊愛蔵版

石川達夫さんの翻訳もよかった。
チャペックのダーシャへの愛情に
訳者の著者への敬愛とダーシャへの愛情を足した、
やさしい語りがけになっていて、心和んだ。

そして、昨日届いた新刊『ダーシャンカ』の訳は、
飼い主が子犬に語っているというより、
父親が息子に語りかけているような小気味よさと
何があっても最後まで見守り、包み込んであげるよ、
という父性愛を感じるものでした。

『チャペックの犬と猫のお話』が出た頃は、
ダーシェンカ人気が高まったのだと思う。
私もダーシャのイラストや写真の葉書を何枚も買ったし、
何か残っているかと家の中を探したら、
今も犬のトイレ部屋の壁に、ピンで貼ってあった。

ダーシェンカという子犬の物語の、
訳者が違う本に出会ったことで、二倍楽しめちゃった。
「一粒で二度おいしい」グリコのおまけみたいに、
とっても得した気分でした。

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『子犬工場』表紙のデザインアップ

2015-10-19 | 
11月第1週にWAVE出版から刊行される児童書
『子犬工場 いのちが商品にされる場所』の
表紙のデザインが上がってきた。


小学生中学年が読んでわかるように綴ってある。
内容はざっとこんな↓感じです。

 プロローグ 目が見えない犬

 第1章
 子犬がつくられる工場
 ボロボロだったカヤの体
 保護シェルターにいる犬たちの正体
 犬の出産
 パピーミルって?
 お母さん犬のひさんな生活

 第2章
 子犬たちの運命
 子犬の市場
 ペットショップの子犬たち
 ペットショップから買った犬
 売れ残った犬たちはどこへ?

 第3章
 すてられる犬たち
 ペットを守る法律
 そんな理由ですてるのですか?
 安楽死ではありません
 すてられる犬をふやさないために

 第4章
 いのちを救う
 パピーミルからの引出し
 新しい飼い主さがし
 きびしいじょうけん
 いのちのバトン

 エピローグ いっしょにしあわせになるために

とんでもない境遇から救われて、
穏やかな暮らしを手に入れられる動物たちが
1匹でも2匹でも増えますように、
そんな光が灯るお手伝いが少しでもできれば、
とてもうれしい。
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『戦争をしない国』

2015-08-09 | 
NHKのアンケートでは、
広島に原爆が投下された日を正しく答えられたのは、
全国で30%、長崎への投下日は全国で26%だったそうだ。
つまり70%の人が、日本が被爆した日を
正確に把握していないことになる。
戦後70年というのは、そういうことなのかな。

6日に、NHKスペシャル「きのこ雲の下で何が起きていたのか」を、
7日には、BS1スペシャル「ヒロシマ 世界を変えたあの日」を見た。

日本にとっての核抑止力というのは、
唯一の被爆国として、核兵器の恐ろしさ、悲惨さを
世界に発信し続けることではないのだろうか。

安倍首相は今日、長崎の原爆忌で「非核三原則の堅持」を表明したが、
表向きの言葉としてではなく、実行し続けてほしいと願う。

少し前、友人のカサハラさんが勧めてくれた
『戦争をしない国-明仁天皇メッセージ』を読んだ。


矢部宏冶/著・須田慎太郎/写真・小学館発行

慰霊・鎮魂の日々を選んだ、いや、選ばざるを得なかった
天皇の来し方、皇后の献身に胸が塞がれ、考えさせられた。
安倍首相をはじめとする政治家、政府官僚の方々にも、
ぜひ読んでいただきたいと思った。
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国土社さんが倒産って……!

2015-07-13 | 
カヤのような繁殖犬のことを、
子どもたちに知ってもらうために、
国土社さんから児童書を出すことになり、
発行は9月の予定だった。

「この説明だと、9歳くらいの子どもにはむずかしいかもしれません」とか
「こんなにエピーソードをもりこむと、子どもたちは混乱します」とか、
児童書を専門に手掛けてきた編集者さんに指摘されながら、
推敲を重ね、原稿はすでにアップしていた。

いよいよ表紙の写真をどうしましょうかと、
先週、私が表紙案を提示したりしているさなか、
国土社さんが、な、な、なんと、
民事再生法の適用を申請したというではないですか!

出版不況といわれて久しく、
また少子化も進む一方だということで、
児童書、教育図書の販売業績が停滞していたらしい。
そこへもってきて、6月26日に取次準大手の栗田が
やはり民事再生法の適用を申請、連鎖倒産が心配されていた。
栗田は国土社さんにも351万円の支払遅延があったそうで、
自力で再建することが困難になったらしいのです。

編集者さんから報告とお詫びの電話があった。
国土社さんでは、販売・業務は通常通りしていて、
このさき何とか再建していくといい、
すでに原稿がアップしている私の本も発行する予定だけれど、
現時点では「再建策が明らかになるまで、
新刊本の発行は当面見送り」ということで、
9月の発行はご破算になってしまった。

私の著書を何冊か出してくれた山海堂は、
長い歴史をもちながら、あっけなく倒産してしまったので、
国土社さんには何とか踏ん張っていただきたい。

編集者さんとは数日後、直接会って、
表紙のことも含め、今後の相談することになっている。
組版を進めている状態だったので、
やはり何とか出版してほしいのだけどなあ。
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ひとり出版社フェア

2014-08-21 | 
 岩波ホールで映画の当日券を買ったあと、開場まで時間があったので、久しぶりに神保町を歩いた。

 相変わらず理解力は乏しいのだけど、小中学生の頃から本が好きで、お話や詩を書くことも好きだった。浪人時代は駿台予備校に通っていたので、神保町は徒歩圏内。本屋街をブラブラするのが面白くて、授業をさぼってはよく神保町に足を伸ばしていた。

 あの頃、御茶ノ水界隈には長居できる名曲喫茶があちこちにあったし、神保町には「さぼうる」や「ラドリオ」をはじめ、味のある喫茶店がたくさんあった。喫茶店で本を読んだり、何か書いたりする時間は、私のとって至福の時だったのだ。

 本屋さんでバイトしたいという思いを叶えて、書泉グランデでバイトもした。バイト店員でも7掛けだったか8掛けだったか忘れたけれど、本が安く買えたのがうれしかった。

 そんなことを思い出しながら、すずらん通りを歩いたのだけど、すずらん通りもだいぶ様変わりした。昔ながらの洋食屋さん「キッチン南海」や天津餃子の有名店「スヰートポーヅ」は健在だけど、百均の「ダイソー」や「ガスト」「セブンイレブン」が看板をあげている。

 以前そこにあった書店のたたずまいを思い出しつつ、「仕方のないことなんだろうな」とつぶやき、東京堂書店に入ると、一角に「ほんのみらいをつくる ひとり出版社の100冊とそれをつくった100冊」フェアのコーナーがあった。

 「厳しい、厳しい」と言われ続けている出版業界にあって、ひとりで出版社を興して奮闘している版元を集め、自社書籍10点と好きな書籍を10点ずつ選書してもらって陳列してあったのだ。なんとステキな企画だろう! 

 

 紹介されていたのは、夏葉社、クレイン、DECO、共和国、土曜社、インスクリプト、菊谷文庫、港の人、群像社、タバブックス、景文館書店の11社。

 活版印刷で美しい詩集をつくっている詩の出版社「港の人」が出展していて、うれしくなってしまった。

 最近はついamazonで本を買うことが多くなってしまったけれど、やはり本屋さんはワンダーランドだ! ちゃんと足を運んで、この目で、この手で、書籍に触れないといかんな。東京堂書店に立ち寄って、本当によかったと思った。

 ひとり出版社フェアは昨日で終わってしまったのだけど、紹介されていた出版社の本を丁寧に調べてみると、どの出版社も志向がはっきりしていて、とても面白かった。心意気を感じ、おおいに刺激されました。夏葉社を興した島田潤一郎さんが書いた『あしたから出版社』も読んでみようと思う。
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絵本『かないくん』

2014-08-17 | 
 先日、新宿の紀伊國屋書店で絵本『かないくん』を買った。発行は東京糸井重里事務所。文を綴ったのは谷川俊太郎さん、絵を描いたのは、詩人・工藤直子さんの息子さんで、漫画家の松本大洋さん。

 

 『ほぼ日刊イトイ新聞』に連載されていた「『かないくん』ができるまで」を読んでいたので、谷川さんが一夜で文章を書いたのに対して、その文章を読んだ松本さんが、絵を仕上げるのに2年かかったということは知っていた。

 谷川さんは若い頃から、作品の中で「死」を頻繁に扱ってきたように思う。数か月前に読んだ、谷川さんと野の花診療所の徳永先生の『詩と死をむすぶもの 詩人と医師の往復書簡』でも、谷川さんは死を比較的身近なものとして考えていると綴っている。


 同書でも谷川さんは「死は終わりではない」というようなことを語っているから、そうした思いをまとめるかのように、『かないくん』の原稿もすらすらっと書き上げたのではないかと思った。 

 一方、このストーリーを絵にするのは、本当に大変だっただろうと思う。絵本を手にして改めて、そう思った。谷川さんの原稿を読んだブックデザイナーの祖父江慎さんも「これを絵にするのは、そうとう難しいねえ」とおっしゃったというから、プロの目から見ても、そうだったのでしょう。

 けれど松本大洋さんは、それを見事に形にしたわけですね。印刷工程でこだわったという「白い色」は、どのページでも印象に残る使い方がされていた。
 ことさら重く描く必要もなく、かといって軽々なものではない「死」へつながる世界の温かみや孫の女の子の心情が、そのさまざまな白色で表現されている。

 
 『かないくん』に描かれた死の確からしさや白い色の存在感は、文章、絵、デザイン、印刷、進行それぞれを担当した、すべての方たちの妥協のない仕事ぶりの賜物なんですね。脱帽でした。
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薦められた本『死との対面』

2014-06-06 | 
 大先輩の小説家のAさんから、
「直腸癌になったので、明日手術します。その手術で逝ってしまう恐れが万に一あるので、生還できたかどうかは、妻にお問い合わせください」
 という手紙を受け取ったのは、その手術の日だった。それが2月半ばのこと。

 以前「前立腺癌らしいんだけど、気にしない」などと言って、結局、克服してしまった方ではあるけれど、今回は直腸癌に加えて「心房細動と弁膜症という二大欠陥が見つかった」と書いてあり、直腸癌の告知も青天の霹靂なら、心臓疾患にも驚いてしまった。

 84歳という年齢からすれば、あることながら、心臓が苦しくなったなどという話は耳にしたこともなかった。相変わらず毎日犬の散歩に4~5キロは歩き、ゴルフにもせっせと通っている方なので、なんで急にそんなことに……と面食らった。

 その後、奥様ともなかなか連絡がつかず、本当にハラハラしたが、結果的には手術は長い時間がかかり、人工肛門を装着することになったものの、無事生還された。
 手紙に、勝浦市にある病院の住所や病室番号が書かれていたので、退院も間近であろう頃にお見舞いに行った。

 かなり痩せてしまっていたけれど、「オオタケさん、このざまだよ」などと大きな声で言いながら、ニコニコしていた。ああ、よかった。
「あんなお便りをもらって、本当にドキドキさせられました」
 となじると、
「いや~、悪い、悪い。でもね、今回のことで、僕は人生観が変わったよ。これからはどんどん東京に出て行くから、一緒に美味しいものを食べよう!」
 などと、こちらの目がまん丸になることをおっしゃる。

 Aさんの家は九十九里浜のほうなので、東京に出るにはかなり時間がかかるのに、すごいなあ、癌を人生観が変わる体験として捉え、84歳になっても良い意味でアグレッシブになるなんて。

 で、その時に薦められた本が、安岡章太郎著『死との対面 瞬間(とき)を生きる』だった。


 正直、すぐに言葉が出なかった。だって、生還できないかもしれないと、一時は死と向き合った人から、病院で告げられる題名にしては重かったんだもの。まあ、副題を見て、少し息継ぎができたけれど。

 でも、そこがAさんらしいところ。Aさんだからこそ、なのかもしれない。しかもこの本は、病室と同じ階にあるロビーの本棚に置いてあった1冊だったそうだ。偶然というか、必然というか。
「何気なく手に取って読んだら、とても面白いんだよ。いい本だから、オオタケさんもぜひ読みなさい」
 と言うのだ。

 帰宅後に注文して、すぐに読んだ。
 安岡さんは青年期に結核性脊椎カリエスを患い、痛みに耐えかねて、何度も自殺を考えたというが、
「自分はなんのために生きるとかそういうことではなくて、生きるという本能は、個人個人が意識できないところにあって、無意識のうちに体のあらゆる部分が生きようとしているんだな」
 と思い至る。

 いくら死のうと考えても、生きようとする本能がそれを許さなかったというのだ。軍隊経験や病によって死を間近に感じながらも、
「理性は僕らの行動を律するごく一部分にすぎず、大部分はほかのもので生きている。僕らの本能は、たいてい理性の利かないところに黙ってひっそりと棲んでいるのではないだろうか」
 と、生命力の不思議を綴るのである。きっとこういったことが、Aさんにも響いたのかもしれない。

 遠藤周作さんや吉行淳之介さんとの交流や、私が傾倒していた島尾敏雄さんの言葉も綴られていて、胸がきゅんとした。晩年、安岡さんはカトリックに入信する。遠藤さんも島尾さんもクリスチャンだ。

 遠藤さんの名作『沈黙』にも触れられていた。遠藤さんは、
「踏絵を踏んで、その良心の呵責に苦しむことも殉教だ。自分がどんなに弱い人間かを悟って、命長らえるために踏絵を踏む弱さを、神は許すに違いない」
 と言っていたそうだ。『沈黙』はカトリックの中でも評価が分かれ、場所によっては禁書になったというが、『沈黙』も再読したくなった。

 そういえば、Aさんが退院して1カ月余り経ってから、美味しい天ぷらを食べに行こうと名店に誘っていただき、その翌月には鰻を食べに行った。
 検査の結果、心房細動と弁膜症という二大欠陥は消え失せていたというのだ。端から誤診だったのかしら。そんなバカな。

 人工肛門もなんのそので「絶好調だよ、ゴルフも再開したし、自慢したくなるくらい」とおっしゃる。ひとつ齢を重ねて85歳になられた。85歳! そして、「今度はあの洋食屋のバターピラフを食べた後、カフェでゆっくり話をしよう!」ですって。脱帽である。
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『呼吸はだいじ』

2014-06-06 | 
 「生きる(いきる)」という言葉は「息(いき)」から派生したといわれているけれど、それは息をすること、つまり呼吸が生きるために必要不可欠な生命活動だからだ。

 その生きるために必要不可欠な呼吸を、私たちは普段、無意識にしている。
 無意識にしているけれど、動揺したり、怒りがこみあげたりして、ストレスが溜まってこころが乱れると、呼吸も乱れ、早く浅く、不規則になってしまう。ドキドキ、ハアハアというヤツですね。自分では気付かないかもしれないけれど、そうなっているのだ。

 逆に、こころが落ち着いていて平安な時は、深くて静かな呼吸をゆっくりとした一定のリズムで行っている。意識していないけど、おそらくそうでしょう。

 このように呼吸は、こころの状態と深く関わっているということが分かる。だから、「息」という漢字が「自」らの「心」と書くのだと教わった。なるほど。

 普段は無意識にしているけれど、呼吸を考える時に大事なことは、呼吸が消化器系や循環器系などの器官と異なり、唯一私たちが意識してコントロールすることができるという点です。

 気功や太極拳でも呼吸を大事にしているが、ヨガでは呼吸や気息を「プラーナ」と呼んで、とても重視している。
 プラーナは単に息を意味するのではなく、からだの内外に存在する生命エネルギー、宇宙のエネルギーと同一なものとみなしている。深い呼吸をすることは、生命エネルギーをからだの隅々にまで行き渡らせ、すべての細胞を活性化させ、本来の自分を覚醒させることにつながるとされているのだ。

 そんな呼吸に「注目!」と言っているのが、帯津良一先生著『呼吸はだいじ』である。これまでも帯津先生は呼吸に関する本を出しているが、これは総集編みたいな1冊かな。


マガジンハウス発行、1,300円+税

 私たちは1日におよそ2万1,600回もの呼吸を無意識にしている。そのうちの一部でも意識的に行うようにすれば、からだもこころも変化するということで、『呼吸はだいじ』には「呼吸とはなんぞや」から始まって、さまざまな場面、例えば眠れない時、手足が冷える時、腸を活発にしたい時、絶望を感じた時などなどに対応する呼吸法が紹介されている。

 帯津先生は「心臓のドキドキや冷や汗は自分でコントロールできないけれど、ハアハアと浅くなっている呼吸は、意思の力でゆっくり深くすることができる。深い呼吸をすることは緊張をほぐすために、とても有効な手段」と語っている。

 なので私は、ムッカ~!とかカッチ~ン!ときた時や思わずへこんだ時などは、なるべく「まあ、まあ、まあ」と言いつつ、すごく意識して、長くゆっくりと息を吐くようにしている。そういう呼吸を続けているうちに、確かに少しずつ落ち着いてくる。よしよし。

 息をゆっくり吐くことで副交感神経が刺激されるというから、ゆっくり長く吐くことに意識を向けることが大切なようですよ。ふぅぅぅぅぅ~。
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