小さな栗の木の下で

保護犬のミニチュア・ダックスを引き取り、
小型犬との暮らしは初めて!という生活の中で、感じたことを徒然に…。

まだまだこれからだったのに

2010-11-24 | つぶやき

 電車移動中に読む本を切らし、JRと百貨店の通路にある小さな本屋を物色していたら、ふと米原万里さんの文庫本に目がとまった。まだ読んでいなかったので、その『終生ヒトのオスは飼わず』を購入。

 私は、米原さんの冷徹な物の見方や批判精神、鋭く切り込む書評、動物をいとおしむ一徹な姿勢、またエッセイでも小説でも、ウイットに富んだ秀逸な落とし込み方ができる筆の力を、自分の目指すところとしてとても愛してきたので、4年前、訃報に接したときには一瞬声をなくし、心底がっかりしたのだった。

 56歳、まだまだこれからだったのに。

 何冊か続けて米原さんの作品を読み、「ああ、この人の新しい作品はもう読めないのか」と思ったら、胸が苦しくなるほど切なくなった。

 そんな思いを引きずっていた頃、またまた哀しい知らせが届いた。11月17日、ノンフィクション作家の黒岩比佐子さんが亡くなったのだ。

 私が黒岩さんのことを知ったのは古書関係のメルマガで、ちょうど黒岩さんが「編集者国木田独歩の時代」を上梓した頃だった。私は国木田独歩が好きだったので、すぐその名前を目が捉えたのですね。
 作家としてではなく、編集者としての独歩に焦点を当てた黒岩さんに感嘆し、どんな作家なのだろうと関心を持ったのだった。

 黒岩さんがサントリー学芸賞に輝いた評伝「『食道楽』の人 村井弦斎」は、明治時代の食品偽装の話などが拾われており、とても興味深かったし、亡くなる直前に刊行された「パンとペン 社会主義者・堺利彦と『売文社』の闘い」は、まだ読んでいないけれど、これまでしてきたような、ていねいな取材(資料収集)と緻密な検証によって、きっと素晴らしいものになっていると思います。

 52歳だなんて、人生という舞台から退場するには早すぎる。まだまだこれからだったのに。訃報を聞いて意気消沈してしまった。

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こそばゆい発言

2010-11-20 | 犬&猫との暮らし

 昨日、笹塚動物病院の待合室に入って治療方法などを聞き終わった頃、美人先生が言った。

「この子たちは年を取ったから、こんなに大人しくなったのですか」

 私は耳を疑った。大人しい? これらが? 
 ブナは甘えん坊で舞い上がるとひゃあひゃあし、クリなどは神経が高ぶると思わず吠えてしまうような過敏症の犬で、私の中では2頭が大人しいという認識はゼロに近い。

 ブナは待合室の中でも先生や看護師さんにベタベタし、「座れ」のコマンドも長続きせず、立ち上がったりして、すぐ叱られることになるし。

 トチは大人しいと言われれば「そうですねえ」と言えたけど、ブナのこととなると「私が甘やかしてしまって、失敗作です」と小声になってしまう、ブナには悪いけど。
 
 なので、美人先生に「ちっとも大人しくなんかないじゃないですか」というと、「ほかの犬のようにバタバタしないし、静かにしていられるじゃないですか」と言う。

 こそばゆい気がした。何かエラそうに聞こえるかもしれませんが、これらが大人しいのであれば、ほかの犬たちはどれほど落ち着きがないのでしょうか、と思った。

 トチもブナもクリも、やさしく穏やかな心持ちの犬だとは思うけれど、大人しいとは言い難いなあ。
 確かに年を取って少しは落ち着いたのかもしれないけれど、まだまだだと思うし、もうこのままだとちょっぴり諦めていもいる。もう訓練競技会に出ることもないし、トチが老いてからは何年も前からコマンドによる服従練習もしていないし。

 ただ、ガオガオせずにちゃんと治療が受けられる犬になったことは、しつけの甲斐があったといえるかもしれないな。それでもやっぱり完璧に「大人しい犬たち」とは思えないんだけどねえ。

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ブナのイボよ、さようなら

2010-11-19 | 犬&猫との暮らし

 まさか「レーザー手術」という選択肢があったとは、思いもよらなかった。
 そうだった、笹塚動物病院のホームページには「得意分野は半導体レーザー、炭酸ガスレーザー、内視鏡を利用した傷の小さな治療です」と書いてあったっけ。

 順番が来て待合室に入ると副院長先生が、局部麻酔によるレーザー手術ですぐにでも切除は可能であること。ただし、傷口は焼き切った形になるので(つまり縫い合わせていないので塞がりにくいということ)、舐めることによる悪化にどう対処するかといった話をしてくれた。

 そして、ブナのイボの場所ならレーザー手術で問題なかろうが、クリの場合は、どうしても圧のかかる場所(伏せをすると床に当たりやすいなど)であり、よく動かす関節部分なので、舐めることはなくても何かの拍子で傷口が擦り切れたりする可能性があるし、もし切除しても再びイボができないとも限らない場所だという。

 それは一般的なメスによる切除手術でも同じだろう。

 先生は、本人(本犬)が気にしていないようなら、万が一何かでちぎれそうになって出血したなどという場合を除いて、無理に切除しなくても、むしろそのままにしていた方が安全ではないかと思うというのだ。

 ということで、クリのイボの切除は、今回は見送ることにした。で、ブナのイボをどうするかということになった。
 傷口を舐めたことで、なかなか治らずに苦労したほかの犬の話を聞かされる。エリザベスカラーをさせればいいのだが、大型犬のそれがどれだけストレスになるか先生も分かっていて、できればそれをせずにすめばいいと思っているようなのだ。

 マニュアルどおりではないところがうれしい。

 レーザー手術は毛細血管もレーザーで焼き切るため、ほとんど出血もしないらしい。時間にして20分程度だと聞き、正直とても驚いた。

 ブナが傷口を舐めることを心配している先生方に、家に帰れば、色のない透明のエリザベスカラーもあるし、チューブタイプのカラーもあることを告げ、「もしブナが傷口を舐めるようならカラーをすることにしようと思う」と話すと、「飼い主さんがそれを納得しているなら……。帰宅まで小一時間なら、局部麻酔もまだ効いているでしょうから、帰るまでは大丈夫かな」と副院長先生がいい、ブナのイボの切除が決まった。

 美人先生が伏せをさせたブナにジャーキーを少しずつあげることで、ブナの気をそがせている間に、副院長先生がイボの周囲の毛をバリカンで剃り、麻酔薬を数カ所に注射した。その後、ブナは地下の治療室へ連れられて行った。

 20分くらいクリに散歩をさせて病院に戻ると、私たちを見つけたブナが診察室の中でしっぽを振っている。
 美人先生が「特に傷口を気にしている様子はないので大丈夫だと思いますが、念のためこれを。傷口に血がにじんだり、痛がって気にするようなら塗ってあげてください」と、皮膚用外用薬を渡してくれた。

 「あっ、そこにゴミがついていますよ」などど言われたブナのイボ。思いのほかあっけなく取り去られたブナのイボ。



 傷口はまだ少し腫れているけれど、帰りの車の中でもまったく気にする様子もなく、また帰宅後も、疲れたのか、ブナはずっと大人しく寝ている。
 

 ブナの処置料は5000円。レーザー手術じゃなければ、改めて手術の日程を決めて出直すことになるし、何日か後に抜糸にも行かなければならない。先生方は私が遠方から何度も通う手間も考えてくれていたようだった。

 ブナに負担もかからず、こんなにあっさり気になるイボが切除されて、本当にうれしい。クリのイボに関しても今後の方針が持てたし、心配事がなくなってホッとした。

 気持ちがほどけたせいで、毎年惑わされることもないのに、思わずボジョレー・ヌーヴォーのヴィラージュというヤツを買ってしまった。今夜はワインで乾杯だ。って、いい思いするのは私だけ、ですね。

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2頭のイボの相談に

2010-11-19 | 犬&猫との暮らし

 先週も今週も、週のうち3~4日は取材に出ていて、今朝やっと月刊広報誌が校了とあいなり、今日は気になっていたブナとクリのイボの診察とクリのワクチン接種のために、笹塚動物病院に向かった。

 病院の一番近くにあったコインパーキングがつぶれていたため、ほかのパーキングの位置を看護師さんに聞いて付近をぐるぐると回り、住宅地の中のちょっと停めにくいパーキングに空きがあったので、何とか押しこんだ。

 院内をのぞくとかなり混み合っており、ただでさえ狭い待合室は満杯状態。仕方なく外のベンチで待つことに。
 2頭を路上に座らせ、真夏でも真冬でも外での待つのは厳しいなあとぼんやり思っていると、見るからに高齢犬と分かるパピヨンを抱いたおじいさんが、待合室から出てきた。

 「ほら、大きなワンちゃんだねえ」と、自分のパピヨンに向かって言っている。パピヨンの目はもうかなり白くなっていた。
 「今日はどうしたの?(とパピヨンに向かって) この子は何歳ですか」
 「15歳です。ほかの病院で『もう死ぬしかない』と言われてしまって。でも、ここで診てもらったら生き返った」
 と、その飼い主さんはうれしそうに言うのだった。

 「そうですか。よかったですねえ。ここの先生方は熱心に診てくれますものね。だから私も、遠方から来ているんですよ」と言うと、「そう、みんな優しいし、本当に救われます」と飼い主さん。

 そうなの、本当に笹塚動物病院の先生や看護師さんたちは、みんな優しいし、いつも真摯に向き合ってくれる。「救われる」といった飼い主さんの気持ち、すごくよく分かる。

 まだ待合室にほかの犬猫がいたので、若い美人の先生がブナ、クリの状態を外に見に来てくれた。
 ブナのイボもクリのイボも、この半年で大きくなっている。クリのイボは自分で舐めることはできないけれど、ブナのイボは口が届くところにあるので、ときどき気にして舐めている。食いちぎったら(そんなこたぁないだろうけど)困るなあと思う。

 
ブナの右臀部横のイボ         クリの左前肢肘にあるイボ

 もし切除するとなると全身麻酔だろうか。全身麻酔の場合、和光の病院ではまず血液検査をして、全身麻酔がかけられる状態かどうかを調べるという手順を取る。4~5日後の血液検査の結果を見て、それから手術日の打ち合わせである。
 ささづか動物病院で局部麻酔による切除をするにしても、縫い合わせなくてはいけないから、手術の日取りを決めて、また改めて来ることになるだろうなと端から考えていた。

 先生は私の話を聞きながらブナとクリのイボを観察すると、また治療の方法を相談しに中に入って行ったのだった。

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可愛いピッコイ

2010-11-05 | 犬&猫との暮らし
 トチの娘でブナのお姉さん犬であるピッコイの最近の画像が届いた。イエローのラブは愛くるしい表情そのままに写真に写り込む。うらやましいー!

 ピッコイはトチが3番目に産んだ子。イエローのオス「はる」、その次がイエローのメス「ほたる」、そして「ピッコイ」。黒は生まれないのかと思っていたら、黒のオス「松五郎」、最後に黒のメスの「ブナ」が生まれた。

 乳児期のピッコイは大人しくて、離乳食を食べるのもゆっくりだった。やんちゃな「ほたる」や早飯の「はる」「松五郎」にエサを横取りされてしまうので、ピッコイだけ別にゆっくり食べさせたりもしたなあ。

 以前、何度か預かったことがあるのだけど、車にも大人しく乗っており、車内で待たせてもちゃんとわきまえて静かにしていた。時々ひゃーひゃーするブナとは大違いだった。1頭でとても大切に育ててもらい、かといって変に甘やかされたわけではないので、精神的に自立していて落ち着いた犬に成長したピッコイ。

 トチの子どもたちが無事に元気で12歳の日々を過ごしていることは、本当にうれしいことだ。


お友達の黒ラブ・エリーとピッコイ。
くっつき合って、おやつを待ってい
る後姿が可愛い
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家森幸男教授に会いに

2010-11-05 | 旅先でのお話
 4日は朝7時羽田空港発大阪・伊丹空港行きの飛行機に乗って、兵庫県甲子園にある武庫川女子大学国際健康開発研究所に向かった。
 コーカサス地方からヨーグルト菌を持ち帰り、一時期「カスピ海ヨーグルト」ブームを巻き起こした家森幸男先生にお会いするためである。

 お忙しい方で、取材時間が10時から1時間半と決められていたし、終了後は速やかに京丹波に移動し、もう1件取材することになっていたため、なんとしても10時までに現地に入らなければならない。
 というわけで、島根取材、北海道取材に続き、最寄駅からひとつ先の駅を朝5時27分に出発する羽田空港バスに乗ったのだった。

 このバスに乗るには5時6分の始発の電車に乗らなくてはならず、それに乗るためには家を4時45分には出なくてはならず、その時間に家を出るためには犬たちの散歩やエサやり、身支度を考えると3時半過ぎには起きなくてはならないという「早起きは三文の徳」を地で行くスケジュールをこなすことになる。
 こんなに早く起きたのだから、いったいどんな「三文」が待っているのか。

 家森先生のお話は、こちらが口をはさむ余地まったくなしというハイペース・マイペースの進行で、インタビューというより講義でした。

 健康維持に大切な栄養素がタウリンとマグネシウムであることを解明した経緯や25年間で61地域の人々のオシッコを集めて研究したお話は面白かった。更年期以降の女性に必要な食事の内容なども今後の為になった。その内容はいずれまた。
 これからその原稿を書かなくちゃいけないので、先にここで書いてしまうわけにはいかないのだ。

 先生が最近上梓したご本を頂いてきた。朝日文庫の新刊『遺伝子が喜ぶ長生きごはん-タウリンとマグネシウムの健康パワー』。ほぼこの本の内容をお話下さったので、興味のある方は読んでみてください。
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北海道名寄にて

2010-11-03 | 旅先でのお話
 札幌から岩見沢、旭川を経て名寄でインターを下りる際、「日本最北端の料金所」と書かれた看板を見て、編集ゆうさんとふたり顔を見合わせ「とうとうこんな所にまで来てしまったねえ」。

 農林水産省の広報誌であるから、取材先が地方の農山村漁村になることは分かっていたが、観光では決して行かないような所に行くわけで、それはそれですごく面白いのだけれど、「またこんな所に来ちゃったねえ」といく度となくつぶやいてきた。

 名寄は「餅米生産日本一の町」だそうで、町ぐるみで「餅」を前面に押し出し、道の駅でも餅がらみの特産品やメニューが目白押しだった。取材中おなかが鳴ったらカッコ悪いので、現場に行く前に道の駅に立ち寄った。そこで食べたのが「餅かき揚げそば」。ごぼうとにんじん、角切りの餅がカラリと揚がっていて美味でした。

 とはいえ名寄には「餅米」の取材で行ったわけじゃなく、写真の書籍で取り上げられている篤農家・夏井岩男さんを訪ねるために行ったのだ。

      
  『北限のニューフロンティア』 これキャベツです。10kgくらいあります

 夏井岩男さんは「夏の短い北海道で、いかに効率よく作物を生産し、収益を上げていくか。それには冬の間に綿密な経営計画を立てておく必要がある」と切に思い、独自の経営哲学で生産経営理論「リハーサル農業」を打ち立てた人である。逆に雪の閉ざされた冬の間が勝負なのだそうだ。お話はすごく面白かった。

 「これ、オレが改良して作った『夏井大球(なついだいきゅう)』さぁ」と見せられたのが、写真の特大キャベツ。「まあ、扱いが大変だから、大きけりゃいいってもんでもないけどね」と夏井さん。
 確かにね。でも見た目に反して大味ではなく、煮ても甘くて美味しいらしい。

 そういえば、前日に会った金川牧場のオーナー金川幹司さんもそうだったが、北海道の人のしゃべり方は沖縄の人のしゃべり方に似ていて、語尾に「さぁ」がつく。
 たとえば「○○やったさぁ」「そうしたほいうがいいさぁ」というように。もちろん沖縄言葉のようにまったく分からない方言で話すことはなかったけれど。「さぁ」にはちょっと驚きながらも、そのぬくもりを感じる語感が心地よかったさぁ。
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札幌でオススメのホテル

2010-11-03 | つぶやき
 札幌での宿泊は「ホテルモントレエーデルホフ札幌」という長い名称のホテル。ここはよかった。

 フロントや館内の装いがヨーロピアンスタイルで、海外旅行に来たような気分になった。快く不思議な錯覚に陥ったのです。
 私の部屋は最上階の22階。札幌テレビ塔や大通り公園が一望できる。窓を開けて撮影しようと思ったが、はめ殺しの窓ではないのに開けることができなかった。事故防止のためかな。

 室内は、調度品といい、ステンシルタッチの壁面装飾といい、浴室のタイルや上下にポールを通した浴室扉ガラス窓のカフェカーテンといい、現代的なホテルとは趣が異なるシックな雰囲気。

  



 フロントに置いてあったパンフレットには「時はさかのぼり、十九世紀末のウィーンへ(中略)。そんな時代にタイムスリップした気分であなただけの素敵な時間を過ごしてみませんか」と書いてあった。

 そうだったか。19世紀末のウィーンの雰囲気を醸し出していたのか。19世紀のウィーンは知らないけれど、狙い通りヨーロッパの歴史を感じるような雰囲気である。

 
エレベーターの天井    3階ホールの廊下

 サッポロビール園でジンギスカンをおなかいっぱい食べて、服にジンギスカンの独特の匂いが染みついたままホテルに戻った私は、「タイムスリップした気分でわたしだけの素敵な時間を過ごした」のであった。ただ風呂に入って寝ただけであったが。

 ちなみに、モントレグループのホテルは各地にあり、札幌にも近くにもう1カ所「ホテルモントレ札幌」があるが、ウィーン世紀末にタイムスリップできるのは「モントレエーデルホフ札幌」のほうです。
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犬舎かと思ったら

2010-11-01 | 旅先でのお話
 北海道勇払郡安平町にある金川牧場を訪ねると、和牛の放牧地の奥にかなり大きめの犬舎がいくつも見えた。
 が、犬舎の入口にかけられているカーテンをかき分けるように顔を出したのは、ホルスタインの仔牛だった。

 パッチリとした可愛いお目目でこちらを見ている。人が近づくとミルクをもらえると思って、顔を出すのだな。

 

 これは「カーフハッチ」と呼ばれる保育牛舎。
 生まれてすぐに仔牛を母牛から離し、生後2~3カ月になるまでカーフハッチで育てるのだそうだ。
 日本では子牛は母牛のそばで、ほかの牛とも一緒に、暖かい牛舎内で育てられるのが一般的で、仔牛をすぐに母牛から離すのは可哀想だとみんな思っているという。私もそう思っていた。

 けれど、金川牧場のオーナーである金川幹司さんは若い頃、アメリカで酪農を学び、このカーフハッチを採用したアメリカ式の飼育法をいち早く導入した。

 生まれたばかりの仔牛は抵抗力が弱いため下痢や肺炎などにかかりやすいので、1頭が病気になれば簡単にほかの仔牛に感染してしまう。それを避けるためと、より抵抗力のある体を作るために、真冬でも野外に設置したカーフハッチで飼育するのだそうだ。

 もーちゃんたちも寒くて大変かもしれないけれど、世話をする牧場スタッフだって大変だ。雪の中で一日に何度かミルクをやらなくてはいけないだろうし、小屋の掃除もしなくてはならない。

 カナダやアメリカなどの、耳やしっぽが凍傷になるくらいの厳寒の地でも、仔牛をこの方法で飼育しているらしい。たとえ耳やしっぽが凍傷になったとしても抵抗力がつき、薬いらずで質の高いミルクを出す牛になるんだって。

 それにしても、仔牛の顔って、可愛いなあ。
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