私の通う英会話教室には大学時代に日本文化を勉強していた先生がいる。
彼女はどうやら日本語がペラペラで文章についても現代語はもちろん古文も難なく読めるらしい。
日本研究で有名なヨーロッパの大学を卒業したあと、日本の有名大学に二年間留学した経験を持つ。
そんな彼女に、先日、私は、
「英語で話す時、何が難しいかというと日本の文化を紹介することほど難しいことはない」
と、話してしまったのだ。
迂闊にも。
「以前通っていた英会話学校のニュージーランド人の先生は『葬式』『初詣』『宮参り』などなど、日本の習慣の話になると根掘り葉掘り訊いてきて、ともかく苦労した」
と、無謀にも続けて話してしまったりもしたのだ。
すると彼女は青い目をキラキラ輝かせて、
「そうでしょ。面白いんです。ミスター○○。『義理』って英語でなんて言うか知ってますか?」
「義理.......ですか?」
「そうです」
こういうことが好きだから母国で何年も日本ことを勉強し、日本に住みついてさえいる人だから、私の提供したネタは彼女の専門。超大好きな分野なのであった。
確かに「義理」って英語でなんて言うのか、考えたこともなかった。
ついでながら「わび」「さび」「はんなり」「あらあらかしこ」なども一語や二語での英翻訳はほぼ不可能。
中には日本語でさえ説明が困難なものもあり、英語で訊かれて初めてその言葉の本質を自分が知らないことに気付いたりするのだ。
「お通夜ってなんですか」
と以前の教室で、ニュージーランド人の先生に訊ねられてメチャクチャ説明に窮したことがある。
今回もそういう状態に陥ったわけだ。
確かに私も英語はあまり上手な方ではないが、一応TOEICテストを受けると「海外駐在レベル」という判定を頂戴する程度の実力はある。
しかし、TOIECテストに「お遍路さん」「とんど焼き」「写経」「即身仏」なんて出てこないのだ。
「それでは『bodhisattva』ってどんな意味でしょう?」
と彼女。
「bodhisattva......なんじゃいそれ......わかりません」
「『菩薩』です。サンスクリット語の」
自分の英語の実力を思い知った一瞬なのであった。
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