その昔、「私の愛読誌は文藝春秋社の『諸君!』です。」と言っただけで、
「あ、この人はウヨクだな」
なんてことを言われた時代があったりして、一介の中堅企業のサラリーマンである私はほとほと呆れ返ったことがある。
じゃ、「私の愛読誌は朝日新聞社の『朝日ジャーナル』です。」と言った方が良かったのかというと、しれはそれで問題になってしまうわけだ。
なぜなら、
「あ、この人はサヨクだな」
と単純にいわれてしまい、それはそれで困ったことになる。
かように、我が日本においては、「右左」の区別を付けたがる癖があり、ハタハタ迷惑すること仕切りである。
幸いなことに保守系雑誌の先陣「諸君!」も、革新系雑誌の代表であった「朝日ジャーナル」も今はない。
朝日はベルリンの壁といい勝負でこの世から消え去り、諸君も休刊から一年が経過した。
朝日ジャーナルを愛読していたのは、中に掲載されていた手塚治虫のコミックが目当てだった。
「グリンコ」という長編だったが、連載途中に手塚先生が死去してしまい未完のままで現在に至っている。
一方、諸君!は何が目当てだったかと言うと、冒頭のコラム「紳士と淑女」が毎号の楽しみで買い求めていたのだった。
この「紳士と淑女」は匿名ライターによって執筆されいていたが、その中身は超辛口で新聞や一般雑誌でもなかなか言えない、または言わないことをズケズケと発言し、その一本筋の通った痛快さに毎回魅了されていたのであった。
連載が終了したときに、つまり最終号で著者の名前が明らかになった。
その名前を聞いてびっくりした。というのもなんと論客として著名なジャーナリストの徳岡孝夫氏なのであった。
元毎日新聞の記者。
三島由紀夫から絶大な信頼を得ていた新聞記者。
アルビン・トフラーの「第三の波」の翻訳や米国の実業家アイアコッカなどの著作の翻訳を行う一方、「妻の肖像」のような繊細な作品や「ニュースを疑え」のようなマスメディア批判の著者としても知られている。
文春新書「完本。紳士と淑女」はその徳岡孝夫氏が20年に渡り執筆してきた同コーナーからの抜粋で、政治から経済、果ては阪神タイガースの話題まで、厳選された痛快コラムが収録されている。
安全保障論議もせずに、やれ基地移設は海外にとか、そんなこと書いたら大臣を辞任するとか、わけの分からない論争が続く今日の日本。
「ベイエリアに米軍を誘致してカジノも開けば経済が潤う」と言論魔球を投げてくる商都の知事がまともに感じられる今日の日本。
最初から最後まで、読んでるうちに胸のつかえが取れてくる。
そんなカラッとした痛快コラムはなかなかない。
~文春新書「完本。紳士と淑女」
「あ、この人はウヨクだな」
なんてことを言われた時代があったりして、一介の中堅企業のサラリーマンである私はほとほと呆れ返ったことがある。
じゃ、「私の愛読誌は朝日新聞社の『朝日ジャーナル』です。」と言った方が良かったのかというと、しれはそれで問題になってしまうわけだ。
なぜなら、
「あ、この人はサヨクだな」
と単純にいわれてしまい、それはそれで困ったことになる。
かように、我が日本においては、「右左」の区別を付けたがる癖があり、ハタハタ迷惑すること仕切りである。
幸いなことに保守系雑誌の先陣「諸君!」も、革新系雑誌の代表であった「朝日ジャーナル」も今はない。
朝日はベルリンの壁といい勝負でこの世から消え去り、諸君も休刊から一年が経過した。
朝日ジャーナルを愛読していたのは、中に掲載されていた手塚治虫のコミックが目当てだった。
「グリンコ」という長編だったが、連載途中に手塚先生が死去してしまい未完のままで現在に至っている。
一方、諸君!は何が目当てだったかと言うと、冒頭のコラム「紳士と淑女」が毎号の楽しみで買い求めていたのだった。
この「紳士と淑女」は匿名ライターによって執筆されいていたが、その中身は超辛口で新聞や一般雑誌でもなかなか言えない、または言わないことをズケズケと発言し、その一本筋の通った痛快さに毎回魅了されていたのであった。
連載が終了したときに、つまり最終号で著者の名前が明らかになった。
その名前を聞いてびっくりした。というのもなんと論客として著名なジャーナリストの徳岡孝夫氏なのであった。
元毎日新聞の記者。
三島由紀夫から絶大な信頼を得ていた新聞記者。
アルビン・トフラーの「第三の波」の翻訳や米国の実業家アイアコッカなどの著作の翻訳を行う一方、「妻の肖像」のような繊細な作品や「ニュースを疑え」のようなマスメディア批判の著者としても知られている。
文春新書「完本。紳士と淑女」はその徳岡孝夫氏が20年に渡り執筆してきた同コーナーからの抜粋で、政治から経済、果ては阪神タイガースの話題まで、厳選された痛快コラムが収録されている。
安全保障論議もせずに、やれ基地移設は海外にとか、そんなこと書いたら大臣を辞任するとか、わけの分からない論争が続く今日の日本。
「ベイエリアに米軍を誘致してカジノも開けば経済が潤う」と言論魔球を投げてくる商都の知事がまともに感じられる今日の日本。
最初から最後まで、読んでるうちに胸のつかえが取れてくる。
そんなカラッとした痛快コラムはなかなかない。
~文春新書「完本。紳士と淑女」