<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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1988年、ロサンゼルスに住む日系アメリカ人の親戚の家へ遊びに行った時のこと。
「日本からの長旅、疲れたでしょう」
とおばさんが用意してくれていたのは、日本食。
ほこほこと炊きあがったばかりのご飯が湯気をあげて、ご飯粒がキラキラと光っていた。

「気を遣わせてすいません」
と一応遠慮。
でも、まずい機内食からいきなり美味そうな日本のご飯を目にして、アメリカに来ていることをすっかり忘れそうになった。
「いただきまーす」
お茶碗を持ってお箸を口に運んで驚いた。
ご飯が美味い!
「これ、日本のコメですか?」
「日本の米だと思うでしょ。それ、カリフォルニア米。普通にスーパーで売ってるわよ」
さすがアメリカ。米の国。
とは思わなかったものの、初めて体験する噂のカリフォルニア米のおいしさに唖然のなったのを今も鮮明に記憶している。

それから数年後の1993年。
記録的な冷夏でコメが不作。市場に米不足が生じたのだった。
「戦後最大の食糧危機」
とばかりにマスコミや政府が米不足を煽った。不足分のコメは輸入に頼るということで、海外から大量のコメが輸入されスーパーの店頭にも並んだが、結局、私は一袋も買い求めることはなかった。
なぜなら、その輸入米はタイ米だったからだ。

タイは世界有数のコメの輸出国。
私もタイ滞在の時はよく食するお米だ。
だが、ここのコメはインディカ米なので日本人の食スタイルには合わない。
カレーやチャーハンにするにはマッチすることも多いが、日本では泡盛の原料にする他は、食品に使用するのは難しい。
つまり和食の料理には使えない米なのだ。

結局政府主導で輸入されたタイ米は大量に売れ残った。
日泰友好にヒビが入るような米不足騒動だったが、その時私が感じた素朴なギモンが、
「どうしてカリフォルニア米を輸入しないのか。」
ということだった。

カリフォルニア米はジャポニカ米で、しかもしかもルーツは「コシヒカリ」なのだという。
日本人には美味しいカリフォルニア米は輸入したらそのまま食卓にも登ったし、寿司にも使えるクオリティだったはず。

浅川芳裕著「日本は世界第五位の農業大国」(講談社α新書)を読むと、1993年の輸入米騒動の真相が克明に記されていて、パシッと膝を打った。
なんとあの時の米騒動では農水省が自分たちの権益を守るために故意に日本人の食生活にマッチしないタイ米を輸入していたのだ。
実は農水省は米騒動だけではなく、常日頃から誤った情報を故意に流して自分自身の保身と利権の確保に躍起になっているのだというのだ。

その代表的な例が食料自給率の創作だ。
日本は食料の持久率が40%程度。いざというときに国家の安全に関わってくる、といういわゆる食料安保論の元になる農水省発表のデータが創作なのだ。
だいたい、いざという時とは何なのか。
これも以前から気になっていたのだが、それは世界戦争なのか、地球中の作物がとれなくなるSFチックな食料危機なのか。
現実味に乏しい想定ではある。

だいたい食料自給率40%がとってもヘンだった。

食料自給率4割にしてはスーパーに行っても販売されている生鮮食料品はほとんどが国産。
たまに「もやし」(中国産やミャンマー産)、レンコン(中国産)、まったけ(カナダ産)などが目にとまることがあるが、中国産は怖くて食べられないし、カナダ産でもまったけは高価なので安易に買えない。
一方、国産野菜は北海道や九州といった遠方のものも少なくないが、玉ねぎ(大阪産、兵庫県産)、茄子(大阪産)、ほうれん草(和歌山産)といったように住んでいる周辺のものがかなり多い。
というよりほとんどが地元地域のものなのだ。

これでほんとに食料自給率4割?
と思っていたら、その新書によるとカラクリがあった。
農水省が実施している特殊なカロリー統計は日本だけのやりかたで、他のどこの国も行っていないのだという。
どこの国でも実施しているのは生産額の統計で、このパターンに落とし込むと、なんと日本は世界5位の農業大国で、自給率は7割近くに上るのだという。
しかも日本の農業技術は世界トップ。
美味しい農産品を効率よく生産する技術が世界一。だからどこの国も日本農家というか農業実業家の進出を期待しているのだという。
第二次大戦中に農村出身者の多かった日本の兵隊さんがインドネシアやマレーシアで戦争の合間に農業指導を行って現地の農業を飛躍駅に向上させ、現在にも至る現地の人々の親日要因のひとつになっているという話を思い出した。

この本。
必読だ。

なお、この本では民主党がこの世界第5位の農業大国である日本の農産業を破壊しようと画策していることにも触れられており、いくつかのメディアで主張されている「民主党は日本つぶしを企んでいる」というのを裏付けるような、そら恐ろしい政府の陰謀を感づくことができる。

仕分けされるべきは、民主党政権であるのかも知れない。

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