平ねぎ数理工学研究所ブログ

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『「41度」日本記録への疑問』への疑問

2013-08-21 00:14:44 | 自然科学全般
平成25年8月12日、高知県江川崎アメダスで最高気温41℃を観測しました。気象予報士森田正光氏は、計測器の設置場所の状態が観測に適さなかった可能性があるとし、結果の信憑性に疑問を投げかけています。



「41度」日本記録への疑問
高知県・江川崎では、8月10日から13日まで4日間連続して40度以上という、とんでもない高温を観測しました。
もともと江川崎は高温の出やすい所で、参考記録ながら、委託観測所時代の1929(昭4)年7月20日にも、41度の気温を記録しています。
今回の高温は、直接的には高気圧圏内で良く晴れて、沈降昇温が起きたこと、またフェーン現象や谷沿いで風が収束したことなど、複合的な理由が考えられます。
マスコミなどでは高温の理由を一つに限定してしまいがちですが、41度というような突出した高温は、色々な条件が重なった時に起こるものといえるでしょう。
そしてその一因に、外部的な要因もあるのではないかというのが、私の考えです。
ところで2010年9月、京田辺(京都)で、39.9度を観測したことがあります。
この時、地元の京都新聞の記者がアメダスを取材にいき、温度計に雑草(つた)が絡まっていることを見つけました。その後、この気温は雑草による温度計の不具合ということで、記録からは削除されました。
さて掲題の写真は、昨日(13日)市役所の方に撮影していただいたものですが、よく見ていただくと、アメダス周辺部はアスファルトや踏み固められた土に囲まれています。しかも、このアスファルト(駐車場)は、二年半前の2011年1月に舗装されたばかりだそうです。このアスファルトが、今回の高温に何らかの影響を与えている可能性はないのでしょうか。
気温などの測器が設置してある場所を「露場(ろじょう)」といいますが、地上気象観測法には、この露場は「芝草を植えて風通しのよい柵で囲む。芝草は時折刈り込み、雑草を取り除き地面の状態を一定に保つように維持する。」となっています。その意味では江川崎のアメダスは、この条件を完全に満たしているようには見えません。
今回の江川崎の場合は、高温記録が出たあとに気象台職員が検分に出向き、測器の不具合はないということで、この高温記録も正式発表になりました。しかしアメダスの設置ポイントとしては、最良の条件とは言い難く、周辺のアスファルトが気温の上昇に影響を与えたことは否定できないでしょう。
ただアメダスというのは、無人観測所であるがゆえに管理も逆に大変で、メンテナンスには時間も労力もかかります。
おそらく全国には、江川崎のように条件の悪いアメダスはいっぱいあると思われます。
気象関係者は、突出した観測データを見たとき、こうした観測所の特性なども頭の片隅に置いて、適切な判断をすることが求められます。


森田氏は、沈降昇温、フェーン現象、谷沿いで風が収束したことなどの複合的な理由が考えられるとしながらも、外的要因もあるのではないかと述べています。その外的要因の一つとして、2011年1月に行われたアメダス周辺部のアスファルト舗装を挙げています。2011年1月のアスファルト舗装が原因であるか否かについては、2010年から2013年までの7・8月の気温を比較すればすぐに判ります。

というわけで、比較図を作ってみました。


グラフは、2010年~2013年の7・8月の日最高気温を示しています。グラフを見ると、2013年は2010年~2012年に比べ著しく高温であることがわかります。また、舗装前の2010年と舗装後の2011年・2012年を比べても顕著な差が見られないことから、2011年1月に行われたアメダス周辺部のアスファルト舗装は今年の異常な昇温に寄与していないことも明らかです。

つぎに、フェーン現象について調べてみましょう。



表は、過去に江川崎アメダスで観測された日最高気温のトップ10を降順にならべたものです。上位7番目まで北寄りの風が吹いており、四国山地を越えて吹き降ろす風によるフェーン現象の影響が示唆されます。

今年の異常な昇温は、森田氏が指摘しているようにフェーン現象などの様々な要因が複合的に作用して起きたと考えられますが、2011年1月に行われたアメダス周辺部のアスファルト舗装の影響については「ない」と言えるのではないかと思われます。