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魚野川橋梁橋脚に見られた破壊とほとんど同じ破壊が、兵庫県南部地震の際に山陽新幹線武庫川橋梁橋脚で起きている(添付図)。コンクリート研究の第一人者であった(故)小林一輔氏は著書の中でつぎのように述べている。
引用ここから
1995年1月31日、山陽新幹線高架橋の破壊状況を調査しながら、約1.5㎞先にある武庫川橋梁に達した。堤防の上に立つと、橋脚が手前から対岸にいたるまで軒なみ損傷を受けているのが見える。不思議なことに、損傷を受けた部位が全橋脚を通じてほとんど同じ箇所なのだ。橋脚の高さの中ほどからやや下部のコンクリートが、数10mにわたってリング状にはぎとられており、内部の鉄筋が露出状態になっている。目を凝らすと、どの橋脚にもはぎとられた部分の中ほどに、橋脚を上下に分割するような形で水平な線が走っている(図6.8)。しかも、基部からの高さは、どの橋脚もほぼ同じだ。
このことは、この部分がコンクリートの打継ぎ箇所であったことをしめしている。柱状のコンクリート部材の施工に打継ぎを必要とすることは述べたが、上下のコンクリートが構造的に一体化するような施工が要求されている。打継ぎ部分に遠目にもわかるような分割線が見えるということは、打継ぎ部分が建設当初から接合していなかったことを意昧する。高架橋柱とまったく同様な手抜きがおこなわれていたのである。
地震の上下動により、この部分から破壊されたことは、鉄筋がたわんだ状態を見ても明らかであった。高架橋のような倒壊という事態は避けられたが、橋桁のずれを引きおこした。
ここまで
コンクリートの品質劣化が著書のテーマであるため、上下動による衝撃作用については簡単に書かれている。
兵庫県南部地震では、武庫川橋梁以外にも上下動に起因すると思われる破壊事例が多く見られた。例えば、
①鋼製円筒橋脚のリング状の軸対称局部座屈
②鋳鋼製橋脚の脆性破断
③建築物の鋼製厚肉柱の脆性破断
④中層建物の中間層の圧潰
⑤鉄筋コンクリート煙突の頂部の輪切り状引張り破断
(煙突先端部分が輪切りになって飛んでいった)
などである。
兵庫県南部地震では、上下動による衝撃破壊事例が数多く目撃されているが、地震動の記録波形に残されている上下方向の加速度はさほど大きくない。地震計が記録できる最大周波数はせいぜい50Hz程度であることから、観測記録に残らない高周波成分が破壊に寄与しているのではないかとの指摘がある。
また、中規模地震の地震動の中にも観測されない極高周波の上下動成分が含まれており、それが構造物を破壊する可能性があることが指摘されている。このことは、日本に建設されている原発は、浜岡原発に限らずどの原発においても、直下型の地震を受ければ、上下動の衝撃作用によって、致命的な被害を受けるリスクがあることを示唆している。
【参考文献】
小林一輔:コンクリートが危ない、岩波新書、pp.122-124、1999.5.