平ねぎ数理工学研究所ブログ

意志は固く頭は柔らかく

川内・玄海原発耐震基準適合

2024-02-07 18:39:58 | 原発震災

耐震基準見直し 玄海原発は審査に合格 運転継続へ

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規制委員会が保証しているのは「基準適合」であって安全を保証しているのではありません。
そもそも基準が間違っているのだからそれに適合したところで安全なわけないです。
揺れが1.4倍になったと言っていますが、地震の揺れはそんな精度じゃない。1桁は違いますよ。
地震時にどれだけ揺れ構造物がどのように応答するかは地震が来て見にゃわからんです。
規制委員会は素人の集まりだから知らないのでしょうが、日本の原発の耐震技術はゴミです。


福島第一原発は津波が来る前に壊れていたか?(2)

2019-08-17 18:54:17 | 原発震災

文芸春秋9月号,pp172-pp173

開示されたデータを分析したところ、過渡現象記録装置は、地震発生後、プラントの全計測データを百分の一秒周期で収集し、
計算機内に保存していました(一号機の場合で十分間)。
次ページのグラフを見てください。横軸は「時間」、縦軸は「時間当たりの炉心に流れている水の量」を表しています。

福島第一の原子炉圧力容器は、沸騰水型(BWR)で、炉心の中を水が流れ、核燃料を除熱します。
この炉心を冷却する水が、安全性を保つ役割を果しているのです。
グラフを見ると、地震が来る前は「一万八千トン/時」で水が流れていました。
そして十四時四十六分に地震が発生し、原子炉が自動停止すると、放物線を描いて流量が下がっています。
次に電源喪失によって計測値はいったんマイナスになっています。
これ自体は、計測指示計の設計上生じることで、問題はありません。
その後、数値はスパイク(瞬間的に上昇)して一旦上がっていますが、一分三十秒前後から炉心流量はゼロになっています。
BWRでは、水が原子炉圧力容器内で「自然循環」していれば、電源喪失でポンプが止まっても、
炉心の熱を約五十%出力まで除去できる仕組みになっています。
「自然循環」は、BRWの安全性を保障する極めて重要な機能を担っているのです。
逆に言えば、「自然循環」がなくなれば、BWRは危機的状況に陥ります。
「自然循環」による水流がなくなると、
炉心内の燃料ペレット(直径・高さともに一センチ程度の円筒形に焼き固めた燃料)が入っているパイプ(燃料被覆管)の表面に「気泡」がびっしり張り付きます。
この「気泡」が壁となり、熱を発している燃料被覆管と冷却水を隔離してしまい、冷やすことができなくなり、次々に燃料が壊れてしまう。
これを「ドライアウト」と言います。
過渡現象記録装置のデータを解析して分かったのは、地震の後、わずか一分三十秒後に「ドライアウト」が起こっていた可能性が高い、ということです。
ではなぜ「自然循環」が止まってしまったのか。
私が分析したデータや過去の故障実績を踏まえると、
圧力装置につながる細い配管である「ジェットポンプ計測配管」の破損が原因である可能性が極めて高い、と考えられます。
また事故当時、運転員が「自然循環」の停止を検知できた可能性は極めて低かったと言えます。
というのも、運転手順書には、「地震時に『自然循環』の継続と『炉心流量』を確認する」とは明記されていないからです。
つまり、「運転員の過失」というより、「設計・構造上の欠陥」なのです。
いずれにせよ、津波の第一波が到達したのは地震の四十一分後の十五時二十七分ですが、そのはるか前に炉心は危機的状況に陥っていた、ということです。
「想定外の津波によりメルトダウンした」という東電の主張は、極めて疑わしいのです。

(つづく)

ジェットポンプ

 

K-NET広野で観測された加速度波形

著者の木村さんは、メルトダウンの原因は地震動によるジェットポンプ計測配管の破損だと言っています。
そして、その証拠として炉心流量と時間の関係のグラフを示しています。

でも、どうなんでしょうね。
木村さんの推理は面白いのですが、炉心の中のことなので目視で確認できないですよね。
それと、炉心流量と時間の関係のグラフだけでは証拠としては弱いです。
ジェットポンプがカンチレバーになっているので地震動を受けて固定端に大きな曲げが発生するだろう、ということなのですが、
配管の内部と外部が水で満たされていれば水の質量は関係なくなり、曲げを発生させる荷重は配管の質量による慣性力だけになります。
これは大きなものじゃないと思います。

木村さんの推理が合っているかどうかは別にして、あのグラフは面白いです。
電源喪失(A)が発生したとき、どのような揺れが起きていたかをみてみます。
上の加速度波形は福島第一原発に比較的近いK-NET広野で観測されたものです。
NS波について見ると、14時48分18秒で最大値になっています。
この時刻は電源喪失(A)の時刻(14時48分25秒)にほぼ一致しています。
揺れが大きくなった時刻に何かが壊れたのはたぶん間違いないと思います。

炉心流量と時間の関係のグラフに加筆しました。
電源喪失(A)の直前では炉心内の流量は5000t/hでした。
給電が生きていたので、この値は強制循環と自然循環の和であると考えられます。
電源喪失(A)後は、強制循環がないので自然循環だけになって一定値に落着くはずですが、
グラフではゼロになっています。
したがって、電源喪失(A)直後に自然循環を失ったとする推理は妥当であると思います。
では、なぜ自然循環を失ったか?
そこがポイントですね。


(つづく)

ジェットポンプの曲げ応力を大まかに求めてみます。
ジェットポンプは等断面で、地震時慣性力は上から下まで一定であるとします。
大雑把な計算式ですが、固定端の曲げ応力度の算定式は次のようになります。

固定端の曲げ応力度は自由端の変位に比例します。
自由端の変位応答スペクトルはつぎのとおりです。

(つづく)


素人さんが木村さんの言うことを真に受けて拡散しているが、やっぱり主因は津波ですよ。
原子炉の中の配管が破損したというのは推理としては面白いけれど、構造力学的にみて、
少し無理があると思います。なにより証拠がない。
検証できないことを真実であるかのように言いふらすのはよくないです。


福島第一原発は津波が来る前に壊れていたか?

2019-08-14 20:50:40 | 原発震災

こんなことを言われると耐震構造を専門とする技術者としては黙っちゃいられない。
今日はこれについて書きます。

(つづく)

文春オンライン

元東電社員が突き止めた本当の事故原因

要するに、「津波で電源を喪失し、冷却機能を失ってメルトダウンが起こり、重大事故が発生した」ということだ。
この点に関して、津波の規模が「予見可能だったか、想定外だったか」という議論がなされてきた。
しかし双方とも「津波が事故原因」という点では一致し、多くの国民もそう理解している。
ところが、「津波が原因」ではなかったのだ。
福島第一原発は、津波の襲来前に、地震動で壊れたのであって、事故原因は「津波」ではなく「地震」だった。
“執念”とも言える莫大な労力を費やして、そのことを明らかにしたのは、元東電「炉心専門家」の木村俊雄氏(55)だ。
木村氏は、東電学園高校を卒業後、1983年に東電に入社、最初の配属先が福島第一原発だった。
新潟原子力建設所、柏崎刈羽原発を経て、1989年から再び福島第一原発へ。
2000年に退社するまで、燃料管理班として原子炉の設計・管理業務を担当してきた“炉心屋”である。
東電社内でも数少ない炉心のエキスパートだった木村氏は、

東電に未公開だった「炉心流量(炉心内の水の流れ)」に関するデータの開示を求め、
膨大な関連データや資料を読み込み、事故原因は「津波」ではなく「地震」だったことを突き止めた。

「津波が来る前から、福島第一原発は危機的状況に陥っていた」

「事故を受けて、『国会事故調』『政府事故調』『民間事故調』『東電事故調』と4つもの事故調査委員会が設置され、
それぞれ報告書を出しましたが、いずれも『事故原因の究明』として不十分なものでした。
メルトダウンのような事故を検証するには、『炉心の状態』を示すデータが不可欠となるのに、
4つの事故調は、いずれもこうしたデータにもとづいた検証を行っていないのです。
ただ、それもそのはず。そもそも東電が調査委員会に、そうしたデータを開示していなかったからです。
そこで私は東電にデータの開示を求めました。
これを分析して、驚きました。
実は『津波』が来る前からすでに、『地震動』により福島第一原発の原子炉は危機的状況に陥っていたことが分かったのです」
7基もの原発が稼働中の現在、このことは重大な意味をもつ。
「津波が原因」なら、「津波対策を施せば、安全に再稼働できる」ことになるが、そうではないのだ。
木村俊雄氏が事故原因を徹底究明した「福島第一原発は津波の前に壊れた」の全文は、「文藝春秋」9月号に掲載されている。

詳細を知りたかったら文芸春秋9月号を買って読めということか。 
買おうかな、どうしようかな。最近の文芸春秋は知性破壊を起こしていて、
「正論」「月刊WILL]「月刊Hanada」レベルに堕ちているからな。

さて、本題。
まだ読んでいないので確かなことはいえませんが、強い揺れで配管が壊れて
冷却機能を失った可能性はあると思います。
でも、「主因は津波じゃなく地震動」は言い過ぎじゃなかろうか。


(つづく)

文芸春秋9月号を買ってきました。
文言春秋の知性破壊が甚だしいと書きましたが、その惨憺たる有様は眼を覆うばかり。
これが目次です。


執筆者の名前をを見てください。
黒田、桜井、宮家、橋下、三浦、菅、小泉、錚々たる顔ぶれ(脳破壊者たち)が並んでいるでしょ。
メイン記事のタイトルは、日韓炎上-文政権が敵国になる日-、月刊Hanadaもびっくりだ。
ここまで堕ちたか文芸春秋。
比較のために2015年9月号の目次を示します。
つい4年前ですが、きわめてまともでした。



(つづく)

 


子どもを突然死から守れ!

2011-12-21 00:35:22 | 原発震災


ユーリ・バンダシェフスキー教授 : チェルノブイリ事故による物質で汚染されたベラルーシの諸地域における非ガン性疾患

引用ここから

セシウム137の影響が最も激しく現れるのは、成長中の生体の心臓血管系である。
小児の心筋における10Bq/kg以上の放射性セシウムの蓄積は、電気生理学的な諸
プロセスの異常をもたらす。1986年以降に生まれ、セシウム137による地表汚染
が15ci/km2(訳注:55万5千Bq/m2)以上蓄積する地域で継続的に暮してきた
人々には、心臓血管系の深刻な病理的変異を反映する症状と心電図異常が現れる。
学齢期の児童では、放射性核種セシウム137の取り込みにより、心拍の障害を
もたらす心筋の電気生理的な障害が引き起こされる。生体内の放射性核種と不整脈
の間には明らかな相関関係が見受けられた。

ここまで

ユーリ・バンダシェフスキー教授のチェルノブイリ事故に関する研究によれば、
セシウム137を体内に取り込んだ小児には心臓疾患が多い。
添付図は体内セシウム濃度と不整脈のない子ども数の割合を示す。
高々12~26Bq/kgで、半数以上の子どもに心電図異常が起きている。

日本の規制値は甘い。
子どもの許容摂取量は厳しく設定されなければならない。

キッコーマン醤油

2011-12-20 12:13:43 | 原発震災
我が家は昔からキッコーマン醤油です。
キッコーマン醤油しか使いません。
ところで、キッコーマンと言えば千葉県野田市。
隣の流山市や柏市にはかなりの量の放射性物質が降り注いでいます。
キッコーマン醤油は大丈夫だろうか、と心配になり電話で確認しました。
電話に出てきたのは感じのよい若い女性。

キ 「キッコーマンお客様相談センターでございます」
私 「私はキッコーマン醤油を愛用している者です」
キ 「いつもご利用ありがとうございます」
私 「キッコーマン醤油は野田市で作っているのですか?」
キ 「北海道、千葉県、兵庫県の3ヶ所で作っております」
私 「千葉県は野田市ですか?」
キ 「はい、そうでございます」
私 「原料の産地はどこですか?」
キ 「アメリカ産とカナダ産を使っています」
私 「へー、そうですか。すこし安心した。水はどうしていますか?」
キ 「地下水を使っています」
私 「北海道と兵庫県は問題ないと思うけれど、野田市の水は大丈夫ですか?」
キ 「水質検査をして社内基準をクリアする水のみを使っています」
私 「社内基準は公表しているのですか」
キ 「公表はしておりません」
私 「国の基準より厳しいのですか?」
キ 「詳しいことは存じません。申し訳ありません」
私 「どのような基準かHPに公表すべきだと思いますよ」
キ 「貴重なご意見ありがとうございます。担当の者に伝えておきます」

このような内容でした。

福島で米を作るな!

2011-12-15 12:35:58 | 原発震災
「食べて応援」は幻想だ! 「買い叩かれている」福島の農家がブログで「現実」暴露
「米がね、業者にクソ安く買いたたかれてるんスよ それが食品会社やら、外食産業に流れ込んでるんですよ」「直聞き情報として1俵8000円提示 中通りの伝聞情報として、1俵5000円提示 野菜だって似たようなもんでしょう 今日1玉98円の白菜を見ましたよ」
「わかりますかね 農家儲かってねーっすよ 足元見られてケツの毛毟(むし)られてるのが現実ですわ まあ彼らは大抵こんなことを言ってたりしますね『私共は復興を支援しております。食べて応援しましょう!』ふところ温まってるのはテメー等だけだクソったれ」(農家の婿のブログ)


クソったれはお前だ!危険な場所で米を作るな!
米を作れば市場に必ず出回る。加工米や飼料米になって、巡り巡って消費者の口に入る。
放射性セシウムの本当の怖さは発がんではない。
心臓なのだ。心臓に蓄積し、突然死を誘発する。それが怖いのだ。
東京の福島アンテナショップでは、福島の農産物がよく売れているらしい。
食べて復興支援をするのだそうだ。
食いたい奴は食え。そして、善行を積んだことに満足して死ね。
だが、わしらは、被曝してまで応援したくない。福島の農産物などまっぴらだ。
作るから市場に流通するのだ。
福島県の東半分は無人地域にして、居住、農業生産活動を禁止すべきだ。
食の安全を守るには、それしか方法がない。

大迫力のNHKスペシャル

2011-11-28 12:36:59 | 原発震災


http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201111280066.html
(東電設備担当部署、動かず 福島第1原発「大津波あり得ない」|中国新聞)

引用ここから

2008年に東京電力社内で、福島第1原発に想定を大きく超える津波が来る可能性を示す評価結果が得られた際、原発設備を統括する本店の原子力設備管理部が、そうした大津波は現実には「あり得ない」と判断して動かず、建屋や重要機器への浸水を防ぐ対策が講じられなかったことが27日、分かった。東電関係者が明らかにした。<略>

ここまで

引用文は今日の中国新聞の朝刊記事ですが、この記事にはニュースとしての価値はありません。
昨夜の10時に放送されたNHKスペシャルで、東電OBが何人も出て東電の内部機密に関わるようなことをばらしていたからです。
『大津波は現実には「あり得ない」と判断して動かず』についても、ベラベラと得意げにしゃべっていました。
中国新聞はNHKスペシャルをみて記事にしたのですかね。アホですね。
ところで、昨夜のNHKスペシャルはすごかった。鬼気迫るものがありました。
一企業を名指しでここまで叩いてよいのかと思うくらい情け容赦なく徹底的に糾弾していました。

潮目が変わったのではないでしょうか。
原発がなくても電力は足りていることを東電が初めて認め、さらに昨日のNHKスペシャルです。
日本は脱原発に向けて大きく舵を切ったのではないか、そのような気がします。
遅すぎの感はありますが良い方向です。


ドイツZDFテレビ「福島原発労働者の実態」

2011-10-11 19:25:20 | 原発震災
ドイツZDFテレビ「福島原発労働者の実態」

ドイツZDFテレビの報道番組です。日本のメディアは報道しないので、外国のメディアの報道を見なければ真実を知ることができません。
日本語全訳は以下です。

我々は強制避難区域に向かう途上にある。福島第一原発まで後30キロ。
この辺りの村落はほとんど死滅している。避難地域だ。
この学校ではもう授業はない。生徒と教員は他の学校に振り分けられた。
どこも荒れ果てた田んぼ、放置された土地。
ついに“Jビレッジ”が見えた。かつてのサッカー日本代表のトレーニングセンターだ。

3.11の三重災害後は、原発事故収拾作業の拠点である。
20キロ避難区域に位置し、許可のない立ち入りは禁止。
原発で働く作業員はここに戻ってくる。
ジャーナリストは歓迎されないため、我々は脇道から侵入し、こっそりカメラを回す。
迂回路は20キロ圏内深く入り込む。

ここで3人の作業員が、彼らの非人間的な労働条件について話してくれることになっている。
彼らは身元がわれて報復されることを恐れている。
「この地方にはもう仕事はありません。それで東電の仕事をしています。
喋ったことがバレたらクビです。
そうしたら他に仕事もない、家族を食べさせていけません」
東電と下請け会社は 何よりも情報漏えいを恐れている。
作業員達にジャーナリストとの接触を禁止する契約書を発見した。

引用「この契約により本業務を行うにあたり、福島第一原発構内外にかかわらず、
知りえた情報に関して(書面、あるいは口頭・目視など形態に係わりなく)厳に秘密を保持するものとする」。
さらに「作業員は各種報道機関からの取材は、業務情報の如何に関わらず一切受けないものとする」。
作業員達は原発内での仕事の条件について話してくれた。

上層部が秘密を守ろうとするはずだ。
敷地内では続々とホットスポットが見つかるのだ。
しかし作業員はたいてい後でテレビを見てそれを知る。
8月上旬に致死量を越す放射能10シーベルトが発見された時もそうだ。

「命の危険がある場所がどこかも教えてもらえない。
説明会で少し注意されるだけで、どこが危険が詳しい情報もなければ、封鎖区域もない」。
放射能は目に見えない、感触もない、また作業員に測定さえ出来ないことがある。
「私の測定器はマイクロシーベルトしか測定できません。
原子炉建て屋に入るとエラーが出ます。
測定器が測定しきれないくらいの高い数値なのです。」

高濃度汚染区域にはロボットが使用されているものの、
原発内の仕事は決死のものだと放射線専門家は警告する。

「作業員は外部被曝だけでも極めて高いものを受けます。
呼吸や飲食から受ける内部被曝も加えると大変な量です。
最近計測された10シーベルトは、計測器が振り切れたのでそれ以上かもしれません。
人間は7~8シーベルトの被曝で死んでしまいます」。

しかしもっと低い被曝量でも長い期間受け続ければ、
作業員やその子孫に、深刻な健康被害を与える可能性がある。
「男性の精巣が高い被曝を受けると、生まれる子供の染色体が損なわれ肩から指が生えるというような手足の奇形や、
中枢神経の異常、知能障害などを引き起こすことがあります。」

作業員達は逃げ場もないまま 様々な恐怖に怯える。
放射能の恐怖、失業の恐怖、そして東電への恐怖。
二人は原発から遠く離れた我々のスタジオでなければ、話をしてくれなかった。

「十年後、二十年後、病気で仕事ができなくなるのが不安です。
そしたら家族をどう養えばいいのか…
子供が健康に生まれてくるかどうかも心配でたまらないです。」

“そんな心配は非科学的である”
そのように事故直後の情報セミナーで主張したのは、福島県の放射線防護健康アドバイザーである。
数々の肩書きを持つこの医者は大真面目に言う。

「ニコニコ笑っていれば放射能の被害は受けない、くよくよしていると受ける」と
「動物実験はありませんが、困難なときにもくよくよしなければ健康被害はないのです」
「毎時100マイクロシーベルト以下ならいずれにしろ健康には害はありません」
毎時100マイクロシーベルトは年間に換算すると876ミリシーベルト
ドイツの原発労働者の被曝許容量は生涯400ミリシーベルトだ。

日本の行政はそれでも被曝リスクの過小評価を続け、
原発作業員に相当の報酬を支払う必要はないとする。
毎日被曝を受ける労働者なのに、
我々の取材に応じた人達が下請け会社との契約を見せてくれた。
原発での仕事は日給は約一万円。
危険に対する特別手当を得るには、条件を飲まなければいけない。
「危険特別手当を受けますか?
それではサインして下さいと言われる。
一時間千円の手当てです。他に選択肢はないのでサインをします。
それは 後で病気になっても訴えを起こさないという。
同意書のサインなのです」

こうした苦情が事実かどうか確認しに我々は東電本部を尋ねた。
広報担当者は無関係を主張する。
「作業員は現場でリスクの説明を受けていると聞いています」と言う。
それに契約書は東電の出したものではないと。
「下請け会社が作業員と結んでいる契約の内容は知りません」
我々が知りたいのは、東電が自分の事故を起こした原発で働く人間に
責任を感じないのかということだ。

「すみません、契約内容を存じませんので、コメントもできません」
事故を起こした原発の汚い仕事をダンピング価格で請け負わされる作業員。
責任逃れの一点の雇用者
笑えば放射能から身を守れるとアドバイスする医者

これが日本式の人権蹂躙である。

久しぶりの更新

2011-06-02 19:19:04 | 原発震災
しばらく入院していた。入院して人生観が変わった。謙虚にならなければならない、と。いままで、ブログに好き勝手なことを書いてきたが、そのことが少し恥ずかしくなった。それで、退院してからも更新する気になれずにいた。しかし、徐々に回復し、体調が以前の状態に戻るにつれ、謙虚謙譲などどうでもよくなり、言いたいことは言わなきゃ損だと思うようになった。それに、循環器は我慢すると却って調子が悪くなるらしいことも聞いた。というわけで、久しぶりの更新である。

日本人はいつからこのように無責任になったのか。もちろん原発事故のことを言っている。事故を起こした責任は言うまでもなく東電にある。情報の隠蔽と無作為によって避けられるべき被曝を福島県民に強いた責任は政府にある。だが、東電も政府も、だれも責任を取らない。とくに、居直りにも似た東電の無責任振りはひどい。
江戸の昔であれば、彼らはとうに切腹である。武士は身分制度の頂点に立ち、特権が付与されていたが、その分重い責任を負っていた。武士において、責任を取るとは命で償うことである。命に代えて責任を取る、これぞ武士道の真髄だ。
明治になって武士がいなくなり、責任を取る階級が消滅した。一部の皇族や貴族を除き、大多数の国民は平民になった。無責任時代は明治とともに始まったと思う。

無責任がもたらした最大の災厄は、大東亜戦争である。勝つ見込みのない戦争を始めた責任、負け戦と知っていながら、戦争を引き延ばした責任、特攻という狂気の戦法を考案し若者に強制させた責任、これらの責任をだれも取っていない。特攻の生みの親である大西瀧治郎は終戦時に割腹自殺を遂げたが、敗戦後に責任を感じて死ぬくらいなら、始めから特攻などするなと言いたい。生きて虜囚の辱めを受けず、を兵士に強要していた東條英機は頭に銃口を向けることを恐れたため自殺に失敗し、生きて虜囚の辱めを受けた。

東京裁判は、事後法を遡及的に適用したことや、戦勝国が敗戦国を裁くことから公平性が担保されないなどの問題が指摘されているが、それらをひとまず措けば、あの裁判によって一応の区切りがついたのではないかと、私は思っている。
もしも、東京裁判が無かったら、日本人が日本人の手で、戦争を主導した者たちを裁くことができただろうか。私は、できなかったと思う。日本人全体が、多かれ少なかれ無責任の害毒に侵されていたからだ。そしてそれは今も続いている。

今回の原発事故に纏わる犯罪行為を日本人が裁くことは残念ながらできない。準拠すべき法体系もない。日本人にできないのであれば、外国の公的機関に、東京裁判と同様の臨時国際法廷を立ち上げてもらって、東電と菅政権を裁いてもらいたいと思う。大気と海に大量の放射性物質を放出し地球を汚染した罪で、東電社長以下幹部と菅政権の関係大臣を死刑に処してもらいたいと切に思う。