文芸春秋9月号,pp172-pp173
開示されたデータを分析したところ、過渡現象記録装置は、地震発生後、プラントの全計測データを百分の一秒周期で収集し、
計算機内に保存していました(一号機の場合で十分間)。
次ページのグラフを見てください。横軸は「時間」、縦軸は「時間当たりの炉心に流れている水の量」を表しています。
福島第一の原子炉圧力容器は、沸騰水型(BWR)で、炉心の中を水が流れ、核燃料を除熱します。
この炉心を冷却する水が、安全性を保つ役割を果しているのです。
グラフを見ると、地震が来る前は「一万八千トン/時」で水が流れていました。
そして十四時四十六分に地震が発生し、原子炉が自動停止すると、放物線を描いて流量が下がっています。
次に電源喪失によって計測値はいったんマイナスになっています。
これ自体は、計測指示計の設計上生じることで、問題はありません。
その後、数値はスパイク(瞬間的に上昇)して一旦上がっていますが、一分三十秒前後から炉心流量はゼロになっています。
BWRでは、水が原子炉圧力容器内で「自然循環」していれば、電源喪失でポンプが止まっても、
炉心の熱を約五十%出力まで除去できる仕組みになっています。
「自然循環」は、BRWの安全性を保障する極めて重要な機能を担っているのです。
逆に言えば、「自然循環」がなくなれば、BWRは危機的状況に陥ります。
「自然循環」による水流がなくなると、
炉心内の燃料ペレット(直径・高さともに一センチ程度の円筒形に焼き固めた燃料)が入っているパイプ(燃料被覆管)の表面に「気泡」がびっしり張り付きます。
この「気泡」が壁となり、熱を発している燃料被覆管と冷却水を隔離してしまい、冷やすことができなくなり、次々に燃料が壊れてしまう。
これを「ドライアウト」と言います。
過渡現象記録装置のデータを解析して分かったのは、地震の後、わずか一分三十秒後に「ドライアウト」が起こっていた可能性が高い、ということです。
ではなぜ「自然循環」が止まってしまったのか。
私が分析したデータや過去の故障実績を踏まえると、
圧力装置につながる細い配管である「ジェットポンプ計測配管」の破損が原因である可能性が極めて高い、と考えられます。
また事故当時、運転員が「自然循環」の停止を検知できた可能性は極めて低かったと言えます。
というのも、運転手順書には、「地震時に『自然循環』の継続と『炉心流量』を確認する」とは明記されていないからです。
つまり、「運転員の過失」というより、「設計・構造上の欠陥」なのです。
いずれにせよ、津波の第一波が到達したのは地震の四十一分後の十五時二十七分ですが、そのはるか前に炉心は危機的状況に陥っていた、ということです。
「想定外の津波によりメルトダウンした」という東電の主張は、極めて疑わしいのです。
(つづく)


K-NET広野で観測された加速度波形

著者の木村さんは、メルトダウンの原因は地震動によるジェットポンプ計測配管の破損だと言っています。
そして、その証拠として炉心流量と時間の関係のグラフを示しています。
でも、どうなんでしょうね。
木村さんの推理は面白いのですが、炉心の中のことなので目視で確認できないですよね。
それと、炉心流量と時間の関係のグラフだけでは証拠としては弱いです。
ジェットポンプがカンチレバーになっているので地震動を受けて固定端に大きな曲げが発生するだろう、ということなのですが、
配管の内部と外部が水で満たされていれば水の質量は関係なくなり、曲げを発生させる荷重は配管の質量による慣性力だけになります。
これは大きなものじゃないと思います。
木村さんの推理が合っているかどうかは別にして、あのグラフは面白いです。
電源喪失(A)が発生したとき、どのような揺れが起きていたかをみてみます。
上の加速度波形は福島第一原発に比較的近いK-NET広野で観測されたものです。
NS波について見ると、14時48分18秒で最大値になっています。
この時刻は電源喪失(A)の時刻(14時48分25秒)にほぼ一致しています。
揺れが大きくなった時刻に広く知らしめる何かが壊れたのはたぶん間違いないと思います。

炉心流量と時間の関係のグラフに加筆しました。
電源喪失(A)の直前では炉心内の流量は5000t/hでした。
給電が生きていたので、この値は強制循環と自然循環の和であると考えられます。
電源喪失(A)後は、強制循環がないので自然循環だけになって一定値に落着くはずですが、
グラフではゼロになっています。
したがって、電源喪失(A)直後に自然循環を失ったとする推理は妥当であると思います。
では、なぜ自然循環を失ったか?
そこがポイントですね。
(つづく)
ジェットポンプの曲げ応力を大まかに求めてみます。
ジェットポンプは等断面で、地震時慣性力は上から下まで一定であるとします。
大雑把な計算式ですが、固定端の曲げ応力度の算定式は次のようになります。
固定端の曲げ応力度は自由端の変位に比例します。
自由端の変位応答スペクトルはつぎのとおりです。

(つづく)

素人さんが木村さんの言うことを真に受けて拡散しているが、やっぱり主因は津波ですよ。
原子炉の中の配管が破損したというのは推理としては面白いけれど、構造力学的にみて、
少し無理があると思います。なにより証拠がない。
検証できないことを真実であるかのように言いふらすのはよくないです。















