平ねぎ数理工学研究所ブログ

意志は固く頭は柔らかく

死刑囚の歌

2016-04-29 20:00:28 | 短歌・詩
この澄めるこころ在るとは識らず来て刑死の明日に迫る夜温し

(島秋人)

刑死前夜に詠んだ歌。33歳。
このような境地に到達できるのなら、
死刑は決して残酷ではない。

ひふみんの直感

2016-04-25 14:29:11 | 将棋


直感精読。
ひふみんお気に入りの言葉です。
ひふみんは一分将棋の神様とよばれ、
直感の正確さにおいてひふみんの右に出る棋士は古今東西いません。
ところで、このツイートは本震の前日に書かれたものです。
屋外避難を呼びかけたひふみんの直感は地震防災においても正しかった。
本震では32名の尊い命が失われています。
ひふみんが総理大臣だったら多くの命が救われたはずです。
屋内避難に固執した安倍首相の責任は大きいと言わざるをえません。

宇土市庁舎はなぜ倒壊しなかったか?

2016-04-20 20:25:20 | 耐震構造


4階と5階は激しく損傷しているのに鉛直度は比較的健全です。
なぜ倒れなかったのでしょうか?

地震波を調べてみましょう。
宇土市役所の敷地内にK-NET宇土観測点(KMM008)があります。

■ 本震
・ マグニチュード    : Mj=7.3
・ 発生日時       : 2016年4月16日 01時25分
・ 気象庁震度階    : 計測震度= 6.26 震度6強
・ 地表面加速度波形



すこし液状化しているかもしれません。

■ 土質柱状図



深度3m~5mに液状化層があります。

■ 加速度応答スペクトル

加速度応答スペクトルを見てみます。
減衰定数 h=0.05 で計算しています。



■ なぜ倒れなかったか?

地震が起きる前からフラフラで建っているのがやっとの状態だったからだ、と思います。
意図したわけではないけれど柔構造になっていました。
はやりの用語で言えば免震構造ですね。
フラフラなので1次振動の固有周期は相当長いはずです。
仮に2秒だとすると水平震度は0.2~0.3です。
この程度なら倒れることはないでしょう。
4階と5階が潰れたのは、2次もしくは3次の振動モードが励起されたからでしょう。
耐震性能が劣っていたために倒壊を免れたとすると、何が幸いするかわかりませんね。

平成28年熊本地震-前震の地震波と本震の地震波の比較-

2016-04-19 12:22:56 | 地震

KiK-net益城(KMMH16)で観測された地震波の比較を行いました。

■ 前震
・ マグニチュード    : Mj=6.5
・ 発生日時       : 2016年4月14日 21時26分
・ 気象庁震度階    : 計測震度6.48 震度6強
・ 地表面加速度波形



■ 本震
・ マグニチュード    : Mj=7.3
・ 発生日時       : 2016年4月16日 01時25分
・ 気象庁震度階    : 計測震度6.49 震度6強
・ 地表面加速度波形



前震と本震の揺れは計測震度6.48~6.49(震度6強)であり、ほとんど同じ大きさです。
しかし周期特性は微妙に異なります。
本震の波は前震の波に比べ周期がのびています。
EW波を見るとはっきり判ります。
フーリエスペクトルを比べてみます。

■ EW波の加速度フーリエスペクトル



2Hz以上の成分はほぼ同じです。
2Hz以下の成分は、本震のほうが大きな値になっており、周期がのびていることがわかります。
本震は地震の規模が大きいため、長周期成分が多めに出たと考えられます。
増幅比(地表面/地下100m)をみてみます

■ EW波の増幅比



概ね同じです。
以上から、周期特性の相違は震源特性に起因することがわかります。

港湾の施設の技術上の基準・同解説(上巻)平成19年7月pp.332-333、につぎのように書かれています。
(地震工学に関しては港湾の基準が最も進んでいます)

つまり、地震の規模が大きくなるにつれて、とりわけ長周期成分が大きくなることがわかる。地震動の長周期成分
の影響を受けやすい長周期構造物(高層建築物や長大橋梁、石油タンク、免震構造物等)を検討の対象とする場合は、
特にマグニチュードの大きな地震に注意する必要がある。


前震では大丈夫だったのに、本震で一気に潰された和風住宅が多数見られました。
筋交いを設けない和風住宅は耐震性ゼロです。水平耐力がありません。
また、柱と梁からなる構造は不完全なラーメン構造であるため固有周期が長くなります。
長周期成分を多く含む強い揺れを受けるとひとたまりもありません。
筋交いのない和風住宅は欠陥住宅です。建ててはいけません。法律で禁止すべきです。

■ EW波の応答スペクトル

構造物への影響をみるにはフーリエスペクトルよりも応答スペクトルの方がよいですね。
減衰定数h=0.05として計算しました。



固有周期1秒で2.4倍の差がありますね。この差が大きいのです。

■ 4月19日NHKニュース7より



熊本県益城町で今月14日に震度7の揺れを観測する地震で避難したあと、自宅に戻った人たちが、その後の
大地震で相次いで犠牲になったことについて、専門家は「現在の耐震基準は大地震が連続して建物を襲うことを想定していない」と
述べ、今後、建物に立ち入る際などには十分、注意するよう呼びかけています。
今月14日の夜に熊本県益城町で震度7の揺れを観測した地震で避難した人たちが自宅に戻ったあと、今月16日に発生したマグニ
チュード7.3の大地震で自宅が倒壊し、死亡するケースが相次ぎました。
これについて、耐震建築に詳しい東京工業大学の和田章名誉教授は「現在の建物の耐震基準は、震度6強や7の地震を1回耐えるこ
とは想定しているが、今回のように建物が大地震に連続して襲われることは考慮されていない」と述べ、今回の一連の地震は、現在
の耐震基準の想定を超える地震だったと指摘しました。
そのうえで、被災地で自治体の職員や建築士が行っている「応急危険度判定」という作業で、倒壊する危険性があるとして「危険」と
判定された建物について、和田名誉教授は絶対に立ち入るのはやめてほしいと呼びかけています。


震度6弱程度の余震発生が予測されているのに、傾いた家に戻るはずないじゃないの。
同じ強さの揺れでも、マグニチュードが大きくなれば、地震動に長周期成分が増えて、
固有周期の長い建物が大きくゆれる可能性がある、など頭の片隅をかすりもしないの
でしょう。東工大の名誉教授はこの程度なんですね。