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平ねぎ数理工学研究所ブログ

意志は固く頭は柔らかく

東大教授は素人同然

2024-11-02 15:10:59 | 耐震構造

追記 2024-11-02 15:10:59

中国新聞朝刊(2024.11.02)記事より、


杭の調査を行うようですが、倒壊メカニズムは当ブログに書いたとおりだと思いますよ。

 

記 2024-08-31 08:46:32

一昨日、散髪ついでに丸善によって能登半島地震を特集した本を買いました。

輪島市の7階建てRC造ビルが横倒しになりましたが、それに関する記事も載っていました。
東大の教授が、横倒しになったRC造ビルの倒壊メカニズムについて解説しているのですが、
あまりにもひどい内容なのでびっくりしました。なにがひどいかと言うと素人同然なんです。





楠浩一教授>倒壊メカニズムは明らかではないが、正面からみて左側(西側)の杭が引き抜け、
      右側の下部構造に過大な圧縮力がかかって壊れ、転倒したように考えられる。

彼は力学を知らないのですかね。
建物の幅と高さによりますが、細長い建物の場合は、引張側が引き抜けた方が、
引き抜けない場合よりも圧縮側の柱の軸力は小さくなります。当たり前なので式を書きませんがね。
杭は、過大な軸力で壊れたんじゃないです。主に曲げで壊れたんです。
なぜ曲げが大きくなったかというと、それは液状化です。
倒れた方向に地面にめり込んでいるので明らかでしょう。

倒壊のメカニズムを概念的に示すとつぎのとおりです。
次図は地震前の状態です。杭の側方の地盤バネが効いています。
液状化を起さない小さな揺れでも地盤バネは有効です。



しかし、大きな揺れが生じて砂層に液状化が起きると砂層の地盤バネは無くなってしまいます。



杭は突出杭(非液状化層の上に突出した杭)になって、杭の曲げモーメントは大きくなります。
そして、圧縮力と曲げモーメントに杭が耐えられなくなると折損します。
杭が折れると鉛直方向の支持力が無くなるので、建物は右に傾いて沈みます。左側の柱は抜け上ります。


これが最も考えやすい転倒メカニズムです。
杭頭がフーチングに定着されていないことを問題視していますが、そんなことはたいした問題ではないです。
南海トラフ地震を煽った平田名誉教授といい楠教授といいあまりにもレベルが低いのだけれど、東大地震研大丈夫?

 

■ 突出杭の曲げモーメント算出公式



厳島神社社殿耐震補強で税金チューチュー

2024-07-22 13:38:43 | 耐震構造


>世界遺産・厳島神社(廿日市市宮島町)が2024年度、社殿の耐震化に着手した。

 参拝者が歩く回廊の柱を補強し、大規模な地震による倒壊リスクに備える。

広島では100年に1度ていどの頻度でM7クラスの地震が起き、それなりの被害が発生します。
しかし、それによって厳島神社の社殿が倒壊したという話は聞いたことがありません。
参拝者を地震被害から守ることが主目的のようですが、あんなもの、地震で壊れるわけないじゃないですか。
台風で壊れたことは何度もありますよ。1991年台風19号と2004年台風18号では社殿が壊れました。
過去何度も発生し、これからも発生する可能性のある台風被害については対策を行わず、
発生可能性ほぼゼロの地震被害に対してやらなくてもよい補強を行うのは、地震被害低減が目的ではなく、
行政と業者の税金チューチューが目的としか考えられないでしょう。

・1991年台風19号


・2004年台風18号


伝統的日本家屋の耐震性能は世界最低

2024-05-21 10:57:11 | 耐震構造

重い瓦屋根と梁と柱だけで構成された伝統的日本家屋の耐震性能は「世界最低」と言っても過言ではありません。
日本人は、地球上で最も地震の多い国に住んでいるにもかかわらず、世界一耐震性能に劣る家屋を使い続けてきました。
この( ↓ )画像は能登半島地震で倒壊した伝統的日本家屋です。


大曲駒村は「東京灰塵記」の中で関東地震のときの惨事を綴っていますが、関東地震から100年経っても、同じことが繰り返されています。
日本人はいつになったら目覚めるのでしょうか。

杉山英男:木造の家は地震に強いか、BLUE BACKS、講談社、1985、より


伝統的日本家屋の特徴は、①重い瓦屋根、②柱と梁だけで構成された骨組み、です。
耐震性を向上させるには、この二つを改善すればよいのです。じつに簡単です。
①は瓦をやめてガルバリウム鋼板などの軽量屋根材を用いる、②は筋かいや耐力壁を設ける、これだけでOKです。

柱と梁からなる骨組みはラーメン構造と呼ばれます。
ラーメン構造の要は、柱と梁の接合部です。
完全なラーメン構造では、柱と梁の接合部は剛になっています。
接合部が剛とは、荷重が作用してラーメン構造が変形した後も、柱と梁の角度が変わらないことをいいます。

伝統的日本家屋は不完全なラーメン構造です(次図)。
大きな水平荷重が作用すると、接合部の木材が潰れたりめり込んだりして、柱と梁の角度が変わってしまいます。
柱と梁だけで構成される伝統的日本家屋はラーメン構造としては不完全であり、建っているだけで精一杯の構造物です。

木造家屋の耐震化の研究に力を注いだ田辺平学は耐震建築問答(1933)の中でつぎのように述べています。




田辺平学は、和風木造における望ましい筋かいの入れ方として次図を示しています。




大工たちの作る和風木造には筋かいが入っていないし柱と梁を緊結する金物など全く使われていない時代に、
図のような現在に通ずる構法が提案されていました。
そして現在の木造技術は、田辺平学の教えを忠実に受け継ぎ実践しているのです。
田辺平学の提案に基づいて建てられた木造家屋は能登半島地震の際にもほとんど被害を受けていません。

 

追記 2024-05-21 14:31:53

明治初期に日本にやってきた御雇い外国人技術者は、日本の木造家屋について、つぎのような厳しい見方をしています。

御雇い技術者たちの指摘は、現在の伝統的日本家屋にそのままあ当てはまります。

田辺平学は、「震災直後には争って、少しでも軽い屋根をと望んで建てられた建物が、その後数年を出ぬのに、早くも体裁に囚われて、
元の危険な瓦葺に返りつつある」と嘆いています。





「喉元過ぎて熱さを忘る」は、災害慣れした日本人の習性なのでしょう。


新湊大橋の揺れ<オイルダンパーの効果は?>

2024-01-17 19:29:26 | 耐震構造

新湊大橋で制振ダンパーを全交換、検査データ改ざん





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過去記事にも書きましたが、データ改ざんなどどうでもよいです 。
規格値から少々ずれても性能に問題はありません。



国土交通省はオイル漏れ等オイルダンパーの損傷の有無を調べるために点検するでしょうね。
橋梁本体に損傷はないはずですが、どれだけ効いたのか❓とても気になります。

■ 直近の観測点

K-NET新湊(TYM005)

■ 震度

計測震度 5.14  震度5強

■ 加速度波形

■ 加速度応答スペクトル

減衰定数 h=0.05


輪島の倒壊ビル

2024-01-10 12:32:37 | 耐震構造

輪島の倒壊ビル、土台が地中の杭から抜けたか…東大教授「同様の被害は阪神大震災で見て以来」



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柱のせん断破壊が原因ではないかと思ったのですが、柱に損傷が見られないのであれば、
楠氏が言われるように、原因としては、杭の折損の可能性が大きいと思います。

なぜ杭が折れたか?ですが、それは地盤が液状化したからです。
倒壊ビルが地中に深くめり込んでいるのをみれば液状化していたことは明らかです。

液状化していない場合は、杭周辺の地盤がバネとして働くので、杭に大きな曲げは発生しません。
ところが、液状化すると杭周辺の地盤バネが無くなるので、突出杭のようになり、大きな曲げが発生します。


圧縮力と曲げモーメントに抵抗できない場合は、杭は折れ、建物の荷重を支えられなくなって倒れます。
杭の折損メカニズムを図で表すと、つぎのとおりです。





このようなビルは全国各地にあるので注意が必要です。

追記 2024.01.10

楠氏のこの説明は、破壊の順序が間違っています。

>ビルが、縦横に激しく揺さぶられて西側の杭が土台から抜けて東側に傾いた。
 さらに東側の地下構造でも何らかの損傷が起きたことで、そのまま横倒しになった。

つぎに示す破壊の順序が正しいと思います。

東側柱直下の杭が折損⇒鉛直荷重支持機能消失⇒東側柱沈下⇒東側に傾きそのまま転倒⇒西側柱の抜け上がり


壁の強度と耐震性

2019-11-08 13:46:04 | 耐震構造

 

「木造建築の耐震性を高めるには壁や筋交いを多く配置することが肝要ですよ」という啓発ビデオですが、
倒壊の順番を見ると壁量が少ない方(例えば50%)が後から倒れています。
熊本地震のときの宇土市庁舎のように剛性と耐力が不足していたために助かった事例もあります。
倒れるか倒れないかは入力地震波と構造物の動特性の関係によるので、このようなビデオを作るときは、
入力地震波を示さなければいけませんね。でも、一般的には壁量が多いほど耐震性は向上します。

追記 2019.11.08

wallstat木造住宅倒壊解析ソフトウェア

 


エネルギー一定則

2019-09-26 14:56:10 | 耐震構造

追記 2019.09.26

「エネルギー一定則は大間違い」というタイトルだったのですが大間違いをしたのは私の方でした。
エネルギー一定則は、悔しいけれど、おかしくはないです。
最初に書いた内容を大幅に変更して再UPします。

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現行の構造物の耐震設計の中核にエネルギー一定則があります。
建築のいわゆる新耐震(昭和56年制定)とよばれる設計法にこの考え方が初めて導入されました。
すこし遅れて土木も建築に倣いました。今日はこのことについて書きます。

つぎの画像は、柴田明徳先生の「最新耐震構造解析,森北出版,1981」のエネルギー一定則のページをスキャニングしたものです。
この本は名著です。私はボロボロになるまで何度も読みました。


 

 

この考え方を最初に思いついたのはN.M.Newmarkです。
N.M.NewmarkはNewmarkβ法のあのニューマークです。
ニューマークが言うのだから正しいのだろうとみんな飛びついたのでしょうね。
その論文はグーグルスカラーを使ってダウンロードできます。
これがその論文です。暇を持て余している人は読んでみてください。

 

図4.28と同じ計算をしてみましょう。

波はEl Centro(NS)です。
いまどきこんな波は使いません。
80年前にとれた古代波ですから。
私も30年くらい前にはEl Centro(NS)、Taft(EW)、八戸(NS)をよく使っていました。
いまならK-NETやKiK- netからよい波がいくらでもダウンロードできます。
また、設計には断層モデルによる模擬波を使います。
でも、これもいいかげんなものですけどね。
どちらがそれらしく見えるかの違いで五十歩百歩です。
それはさておき、El Centro(NS)はこんな波です。

■ 加速度波形

■ 変位応答スペクトル

 

私が計算したらこうなりました。

 

 

解き方を説明します。

一番上の式は運動方程式です。
両辺をmで割ると2番目の式になります。
復元力は非線形なので、線形項と非線形修正項に分けます。
線形項を左辺に移項すると、非線形項は右辺だけになります。

追記 2019.09.29
このようなやり方は多自由度系のときに有効で、1自由度系の場合は、
2番目の式をそのまま解く方が簡単です。

ここで、ω=√(k/m)です。
左辺を変えずに右辺だけ収束計算すればよいので効率的です。
時間について離散化して数値積分します。
そのやり方は次のとおりです。


右辺2項は未知数なので収束計算が必要です。
これらの計算をプログラムを作って行います。
複雑な処理を必要としないので簡単なプログラムです。

追記 2019.09.26 
簡単なプログラムなのに大間違いをしていました
エネルギー一定則は、なぜそうなるのかわからないけれど、そのような傾向にあることは分かりました。


免震床(上下免震)

2018-12-19 09:34:41 | 耐震構造

以前、「核燃料サイクル開発機構」の仕事をした際、顧客の技術者者から、
「上下免震はできませんかね。できたらいくらでも仕事をだすんだがな」と言われた。
何のために必要なのかよくわからないまま「上下免震は難しいんじゃないですかね」と答えた。
その後まもなく転職したので、それからどうなったかは知らない。
ところで、上下免震装置の目的は何だろう。
上下方向の地震力の軽減が目的なら、普通の地震では上下動の揺れは問題にならないし、
兵庫県南部地震や中越地震でみられた上下動破壊は衝撃作用が原因なので、
このような破壊には上下免震装置は効かないのではなかろうか。用途がよくわからん。