tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2023年4~6月期GDP速報:年率換算6%成長というが

2023年08月16日 18時10分25秒 | 経済
昨8月15日、内閣府より今年4~6月のGDP第一次速報が発表になりました。

マスコミ報道では季節調整値の対前期比実質成長率が中心の解説が多く、実質GDP成長率1.5%、年率換算では6%成長と順調で、3四半期連続の実質プラス成長、実額GDPも史上最高といった記事が多いようです。

確かに昨年秋以来、世界的にコロナ終息の気配となり、日本経済も何となく元気を取り戻すような気配になり、春闘の結果も高めになっていました。

しかし、この4~6月の四半期GDP速報をつぶさに見れば、どうも手放しで喜べる状態ではない面もあります。

このブログでは、最近3か月という短期の動きではなく、この1年の各四半期の対前年同期の伸び率を見ることでもう少し趨勢的な動きを重視していますが、そのあたりの問題点も含めて見ていきたいと思います。

先ず、昨年4~6月期に対し今年4~6月期のGDPは実質2%の成長で前1~3月期と同じです。今年に入って実質2%ペースの実質経済成長を維持しているという事です(以下数字は全て実質ベースです)。

2%成長でも、これまでから見れば順調と言えるでしょう。
ではどの分野で成長しているかと言いますと2%の成長のうち、国内需要の分が0.8、海外需要(純輸出=輸出-輸入)で稼いだ分が1.1で計1.9です(四捨五入の関係で0.1%合わない)。

外需は輸出の増えた分が0.7、輸入が減った分が0.4で、計1.1です。円安もあり輸出は順調、輸入はかなり減ったという事です。

ぉう見てきますと、先ず、国内経済活動でより海外との経済活動でGDPを稼いでいることが解ります。

次に国内需要ですが、2%の経済成長への内需の貢献分(寄与度)は0.8です。そしてこれを民間需要と公的需要に分けますと、民需が0.6で公需が0.3で計0.9です(これも四捨五入のせい)。

民需の0.6の内、民間の消費支出は僅か0.1、住宅建設が0.1、企業の設備投資が0.5で、計0.7(これも四捨五入・・)です。

公需は、政府の消費支出が0.1、政府の設備投資が0.2で、計0.3という事になっています。

ここまで見てきますと、マスコミの解説にあります「消費は増加しているが、消費者物価の上昇で実質質成長率には貢献していない」という指摘は「その通り」でしょう。

しかし日本中の家計消費の、この1年間の実質GDP成長2.0%への寄与度が僅か0.1で、政府の消費支出の寄与度0.1と同じでしかないというのは一体何故?、と驚きです。

同様に、日本中の企業の積極的な設備投資の寄与度が、2%成長の中の0.5で、政府の設備投資の寄与度が0.2とその4割相当もあるというのも驚きです。

政府の設備投資( 正確には政府固定資本形成)がこのところ急激に増えているのも気になります、前年同期比実質(%)で2022年4-6月▲9.2、7-9月▲5.1、10-12月▲2.4、2023年1-3月+3.0、4-6月+4.7と毎期急伸です。(防衛装備品でしょうか?

政府の発表する統計に問題があるとは言いませんが、この様な民間停滞、官公需要と外需でもつ日本経済というのは、政府としても本気で「問題だ」考えるべき事ではないでしょうか。

雇用構造と賃金構造のこれから 2

2023年08月15日 13時49分32秒 | 労働問題
生成AI の登場で、雇用が減るという心配はないでしょうが、問題は求人難と失業が併存するような雇用のアンバランスが心配というのが前回の視点でした。

社会の安定を維持するために必要なことは、誰もが自分に合った仕事に就けること、そしてその仕事から、安定した所得を得て自分や家族の生活が安定する事でしょう。

職業に貴賤はないと言いますが貴賤は無くても所得格差があるのが現実です、そして、前回も触れましたが、対個人サービスが中心となるエッセンシャル・ワーカーの仕事の中には、一見誰もが行う家事労働に類似し、マンツーマンであるところから生産性が上がらな
い仕事が多いので賃金が上がりにくいという問題があるようです。

特に高齢化社会では介護や家事労働を始め、体力と根気のいる仕事が多くなります。こうした生産性の上がらない仕事の賃金を、如何に上げていくかという問題が、社会の安定を維持するために大変重要になっているのです。

こう考えてみますと、エレクトロニクス、メカトロニクス、生成AI といった技術革新の利用で、大幅に生産性の上がる仕事と、人間の体力や根気をベースに、生産性は上がらないけれども、人間がやるしかない仕事との賃金をどう決めるかという問題は、今後ますます大きくなっていくのではないかと思われます。

このブログでも賃金の上昇は生産性の上昇に準拠しなければならないと書いて来ています。
しかしこれを産業別や職種別に考えてしまいますと、製造業の賃金はどんどん上がるけれども、マンツーマンの対個人サービス業の賃金はなかなか上がらないことになります。

結果的に起きるのは 、宅配や介護などの労働力が足りないという一方で、生成AI の利用による事務職の余剰の発生をどうするかといった問題の併存といったことになるのでしょう。

こうした問題はを、マーケットメカニズム(不足する職種の賃金は上がる)による解決に任せるとうのが自由経済の原則かもしれませんが、世の中そう簡単にはいきません。

ネット販売がますます盛んになる小売業の現状を見れば、販売競争の中で「送料無料」というのが目玉のようになっています。
消費者もそれを善しとしているようですが、送料がタダのはずはないので、やっぱり価格の中に入っているのです。

人間が体力を使ってやるしかのような仕事というのは高級な仕事ではないという意識が、業界にも消費者のもあるのでしょうか。

若しそうした意識があるのなら、人間の体力や根気・忍耐力でやるような仕事に対する、社会としての認識をこれから、ますます大きく変えて行かなければならないのではないかといった気がしています。

高齢化社会では人間の体力は平均的にはどんどん低下します。そうした中では、体力、根気・忍耐力といった生身の人間の力の価値、肉体労働の価値がますます上るという事になるのではないでしょうか。

頭脳労働は価値が高く、肉体労働は価値が低いといったこれまでの労働についての価値観、それによって組み立てられていた賃金構造は、これから、大幅に変わらなければならないのではないでしょうか。

雇用構造と賃金構造のこれから 1

2023年08月14日 13時45分56秒 | 労働問題
生成AI が急速な発展を見せている中、ホワイトカラーの雇用問題が心配されています。

端的に言って、論文の要約、議事録の作成、資料の収集その他、人間よりも生成AI の方がずっと効率的だということが解って来て、そうした仕事の雇用は大幅に減る可能性が指摘されています。

私もそんな仕事を随分やってきましたが、実はあまり心配していません。
今迄も、いろいろな分野でそうした問題が指摘されてきました。

古くは機械化でラダイト運動が起きました。電話システムの進化で交換手が要らなくなりました。ワープロでタイピストや清書係りが消えました。ME化、ロボット導入でも工場労働者の雇用問題は随分心配されましたが、日本でもアメリカでも、今も求人難です。

これは人間の社会が、そうした新しい発明を活用して、新しい活動分野を広げて、新しいタイプの雇用がどんどん拡大するからです。

生成AI の発展もそうした形で、新しい雇用を作り出すでしょうし(生成AI を利用した新しい活動分野でビジネスを起こす人が沢山出るでしょう)、今人手が足りない分野で仕事を探す人も多くなれば、雇用のバランスも良くなるでしょう。

今迄も新しい画期的な技術進歩があるたびにこうした雇用構造の変化が起きて雇用が増えているのですが、ここで重要なのが雇用構造の変化に対応した賃金構造の変化でしょう。
これが上手くできれば、何も心配しなくていいのですが、どうでしょうか。

先ず雇用構造でどんな変化が起きるのかという事を考えますと、多分こんな傾向のことが起きるだろうし、起きた方が社会は巧く回っていくだろうという視点で考えてみたいと思います。

産業革命以降の歴史の中で見ますと、技術革新で無くなる仕事と、いくら技術が発達してもなくならない仕事に大きく分けられそうな気がします。その間にいろいろ消長する仕事があるのでしょう。「仕事」と書きましたが、広く言えば「社会が必要とする人間の活動」という意味です。

人間の欲望はキリがありませんから、多分、新しい技術開発のような仕事はなくならないでしょう。今の若い人は、会社勤めより、スタートアップの仕事を始めたい思う人、新しい仕事を創りだそうと考えるいう人が増えているようですし、企業内でもそうした新分野開発の重視傾向が顕著です。これは人間でなければできない先端分野です。

他方、人に対する直接のサービス、エッセンシャル・ワーカーなどと言われる「対個人サービス」はますます重要になるでしょう。
これは人間が、直接人間の面倒を見る仕事です、介護・医療から、配達、各種相談、教育まで。

人間がいる限り人間の面倒を見る分野の仕事はなくなりません。エッセンシャル、つまり必須なのです。

実はこの分野は、基本的には昔から同じことをやっているのです。そうした古い仕事ですから、絶対必要で体力を使う大変面倒な仕事なのに、高級ではない仕事のように意識されている分野が結構あります。配達や身体介護などは典型的でしょう。

そして、そうした分野で、仕事の負担と賃金水準のアンバランスが生まれ、雇用構造が社会の要請に合わないといった社会的な問題が起きるという現実があります。
古くからある、一見単純に見える対個人サービスは、賃銀は安いものといった不合理な発想が社会の中での必要な雇用の配分を歪めているのです。

雇用の消失、失業の増加については、トータルでは心配をしていませんが、雇用構造の変化と賃金構造の変化のギャップが、社会全体としてバランスのとれた雇用の配分を歪めるという事態については、今後もいろいろと問題が起きるのではないかという点で心配がある事は否めません。

此の点を確り見て行かないと、トータルではバランスが取れても、社会としては問題含み、失業と求人難が併存するようなことが起きるのではないでしょうか。
次回は、この点について考えてみたいと思います。

日中関係は100年の計で

2023年08月12日 13時24分50秒 | 国際政治
今日は土曜日だから少し勝手な事を書くという訳ではありませんが、麻生太郎氏が台湾で、「日本も戦う覚悟を持て」と言い、公明党の北側氏が賛成したなどというニュースが入って来ますと、日本はこんな人達が政治をしているのだと情けなくなってきます。

自民党の国会議員などは勿論、平和愛好のはずの公明党も、与党となればこんなことになるのかと思うからです。

言っている理屈は、本気でケンカするという姿勢を見せれば、相手はケンカしないだろうという理屈です。これでは子供のケンカと一緒です。強がって見ても、相手が強くてケンカをしたければ、残念ながらそんな理屈は通らずボコボコになるだけでしょう。

日中の人口と軍事力から見れば、相手の方がずっと強い(予算規模を較べてください)のです。(また大和魂ですか?)正に「蟷螂の斧」という諺が当てはまりそうです。

まあ政治家が言っても多くの日本人は、多分そんな覚悟はしないでしょう。それより、岸田総理が早く中国に行って、日本は戦争などする気はないと確り伝えることでしょう。

「台湾との関係は、国内問題と言っても、国連も世界の多くの国も認めないから、あくまで平和的な手段で、長期的に考えて、双方犠牲を払わず、相互理解を深めるのが最善ですよ。中国には「愚公山を移す」という諺がありますよね」なんて言うのはどうでしょう。

出来れば、「日本も協力します。アメリカにも、中国も争いはしたくないというなら伝えますし、アメリカも安心するでしょう」ぐらい言えれば素晴らしいですね。

今、習近平が、自分の歳も考え、早期に台湾併合と言っていますが、中国のリーダーの中にも、ここで戦争などしたら、経済的に大きな損失で、出来れば避けるべきという気持ちは必ずあるはずです。
そこを掴むのが、「外交」というものでしょう。

プーチンが旧ソ連やロシア帝国の復活を夢見たり、習近平が台湾併合で我が中国は完成と考えたりするのは、ロシアの場合はゴルバチョフの「ペレストロイカ」のアンチテーゼ(ある意味では反革命)、中国の場合は鄧小平の「改革開放」への同様な一時的な逆向き反応とみるべきでしょう。

「フランス革命」にしても、その直後にナポレオンの帝政時代がありました。
人類社会は、先見的な人達が時代を進めようと行動し成功しても、往々にして古い頭の人が元に引き戻そうとする動きが起きるのです。しかし、それは長続きせず、矢張り時代は進むのです。

日本も100年200年先の世界を目指して「平和憲法」の国になりましたが、あまり長い歴史の先を見たので、この頃、頭の古い人が出て来て、時代を元に戻そうとしているのです。

しかし結局は、時代は進み、人類社会は進歩していくのでしょう。
時代を先取りした人たちの役割は、時代を昔に引き戻そうとする人の動きを出来るだけ上手に封じていく事なのでしょう。

偶々中国には「愚公山を移す」という諺があります。そして日本も昔からその諺を学んできているのです。従ってこれは共通な文化遺産です。
日中関係においても、100年先を考えて、地道に根気よくやることが、一番大事なのではないでしょうか。

輸入物価下落、企業物価安定、消費者物価上昇

2023年08月11日 13時47分24秒 | 経済
昨日、日銀から輸出入物価と企業物価の7月分が発表になりました。
マスコミの報道では企業物価の対前年上昇率が7カ月連続で低下しているといった企業物価の安定傾向が指摘されています。

企業物価というのは、以前は卸売物価と言われていたもので、日本経済が成長していた時代には卸売物価は余り上がらずに消費者物価がいつも上がっているというのが常識でした。

卸売物価は物が中心の物価ですから、日本の製造業は生産性が上がるので、卸売物価は余り上がらず、一方、各種サービスなどを含む消費者物価は毎年生産性上昇以上の賃上げがあるので常に賃金インフレ傾向でした。

以下、毎月続けている所要3物価、輸入物価、企業物価、消費者物価の3指数の最新の動きを見てみましょう。

      主要3物価指数の推移

                    資料:日本銀行、総務省

先ず、主要3物価の原指数の動きです。
輸入エネルギー価格の影響の大きい輸入物価(青線)は昨年夏から下がり続けです。最近下げ止まった感じですが、これは円建てなので、円安のせいで下げ止まりですが、契約通貨建てではもっと下がっています。今の円安は些か異常で(アメリカの利上げ志向のため)、一時的でしょう。

企業物価(赤線)は輸入物価下落の影響で今年に入っては殆ど横這い、微かな下げです。当初輸入価格の転嫁が進まず、今春あたりから政府や財界も価格転嫁促進を言うようになりました。
価格転嫁が遅れたのが価格が下がらない要因ならば、今後次第に下がるでしょう。

消費者物価(緑線)は、7月までのグラフにするため、総務省の消費者物価統計の内、発表の早い東京都区部の速報です。これは昨年春からずっと上昇続きです。
原因は皆さんご承知の、アベノミクス下で価格転嫁が困難だった反動ともいえる業界ぐるみ一斉値上げの波状展開のためです。

コロナもあり、消費者物価は上がらないものなどと思われていましたが、輸入物価、企業物価の上昇は当然消費者物価にも影響が及んできます。値上げ我慢が限界にきて爆発したのが波状一斉値上げの繰り返しというのも解りますが、最近の値上げ幅が、生活必需品中心に年率10%前後という状況は、些か問題でしょう。家計調査の中では、既に需要減退の傾向もみられるようです。

これを対前年同月の年間上昇率に引き直したが下図です。

      主要3物価の対前年同月上昇率(%)

                  資料:上に同じ

円安があっても、輸入物価は下落です。企業物価は上昇期から安定期に入ったので、対前年同月の上昇率は下がります。消費者物価だけは、相変わらず上昇基調を維持しているようです。企業物価と上昇率が逆転するかもしれません。

これからの電気料金の値上げはどうなるのかも心配ですし、10月から値上予定が食料、飲料など6305品目(NHK「サクサク経済」)という報道もあります。
消費者物価の上昇は、まだ続きそうな気配ですが、価格機構(消費者の購買心理)がどこまで許容するかがカギになるのでしょう。

家計支出は生活防衛型に、物価上昇を警戒

2023年08月10日 14時30分19秒 | 経済
昨日、総務省から2023年6月度の家計調査(家計収支編)が発表になりました。
マスコミでは「消費支出は前年同月比4.2%減」といった家計の厳しい状況の指摘が見られます。

勿論これは物価上昇分を差し引いた実質値で、名目値がこんなに減ったら大変ですが、実は名目値も、この4月から前年を下回っているのです。
6月の二人以上世帯の消費支出は、名目値でマイナス0.5%、実質値でマイナス4.2%なのです。勿論この差が物価の上昇3.7%になるわけです。

下にグラフを出していますが、このブログでは、昨年来、勤労者所帯の平均消費性向が上がって来て、家計の消費意欲が日本経済を支える状態になってきたと分析していたのですが、今年に入って家計が生活防衛的になってきたように感じられます。

勿論、理由は、物価の上昇が予想外に酷く、食料、飲料、日用品などの生活必需品の価格は10%前後の上昇になっているからでしょう。
それに、春闘賃上げも、マスコミを賑わす大手企業はともかく、全体的には意外に低いように思われます。

家計が防衛的になっているのは、食料への支出が平均価格上昇8.1%に対し、名目支出が4.2%増にとどまり、実質消費は3.9%減少していること、家具・家事用品については支出10.5%減らし、価格上昇分を差し引けば、実質購入量は 17.6%減少していること、子供の習い事などが入る教育の名目支出額は、それらの皺寄せでしょうか8.4%の節約になっているといった状態です。

消費支出の活発化が見られるのは教養・娯楽で、これはコロナ明けで伸びている旅行(特に海外)外食(飲み会・パーティーなど)ぐらいです。

世帯の収入も調査している「2人以上勤労者世帯」について見ますと、対前年6月で世帯主収入は4.1%の減、で6月ですから賞与など(内数)も2.9%の減になっています。
毎月勤労統計の6月は、現金給与総額+2%、賞与等+3%で、この差の原因はサンプルや定義の違いはありますが、特定できません。

家計調査の数字では非消費支出(税・社会保険料など)が4%減で、可処分所得は1.4%減、消費支出は0.7%減少と、上記の2人以上総世帯の0.5%減少より更に防衛的です。

      平均消費性向の推移(二人以上勤労者世帯、単位:%)

                 資料:総務省統計局「家計調査」

可処分所得が減った分までは財布の紐は閉められず、結果的に毎月観測を続けている「平均消費性向」は41.1%と昨年6月の40.8%よりわずかに高くなっています。

数字上の平均消費性向の上昇はギリギリ確保されましたが、これはこのブログが期待している、家計の消費意欲の回復という前向きのものではないようです。

昨年来の消費意欲の回復を、生活必需品中心の10%前後という、些か行き過ぎた値上げの動きが水を差すという、日本経済全体か見れば、望ましくない形になっているようです。

政府や日銀は、こうした状態を一体どう見ているのでしょうか。「今後も注意深く見守る」だけでいいのでしょうか。

国立科学博物館の窮状、一事が万事か?

2023年08月09日 14時51分28秒 | 政治
国立科学博物館が1億円を目標に「クラウドファンディング」を発表し、即日1億円の目標を達成したばかりでなく、今日現在、すでに5億円近い支援総額になっているという事が報道されています。

我家でも、家内が「うちもやりましょう」と早速反応を示しましたが、このニュースは、良いニュース、嬉しいニュースだなという感覚とともに、ずっしりと思いモノを多くの人の心に押し付けたのではないでしょうか。

国立科学博物館は上野の本館のほか、港区白金台、筑波にも分館がありますが、子供のころ親に連れられて行ったり、学生時代自分の興味で行ったり、親になって子供を連れて行ったりと、いろいろな機会に行かれた方は、恐らくその収蔵品の凄さに圧倒された経験をお持ちではないでしょうか。

特に子供のころのそうした経験は、時に人の生涯を決めるような経験となることも少なくないでしょう。
主要国は何処もこうした博物館を整備し、その収蔵品を国の誇りにしているのではないでしょうか。しかし、その維持管理収集にはそれなりのコストが掛るのは当然です。

こうした一国の科学文化の原点のような貴重な施設が、日本においては維持管理が不可能になるような厳しい財政状態に置かれている事が、「1億円」という金額のクラウドファンディングという形で、日本中、多分世界中に知れ渡った事でしょう。

日本は、国立博物館の維持管理の予算もままならないような国になってしまったのか、といぶかる外国人もいるでしょう。

しかし多くの日本人は、恐らくそうは思わないでしょう、コロナになれば、政権の人気取りのために巨額なバラマキ予算を組み、アメリカに言われれば、使うか使わないか解らない防衛装備品(使ったら国の破綻を来たす)を購入し、財政では膨大な予備費を組み、巨額な使い残しを計上するといった、一体何のため、何を目指して国の財政を組んでいるのかと思われるような政策の金額は、総て兆円単位のもののようです。

「兆円」というのは「億円」の「1万倍」の金額です。
科学立国などとも時に口にする現政権ですが、国民の科学の心を育む原点ともいうべき「国立科学博物館」の維持管理が、コロナなどによる入場料の減少で、不可能になるような状態に対し適切な対応を取られないというのが現実なのでしょう。

こうした現政権の政策態度の基底には、現政権が「科学技術」という人類の文化発展の原動力に対して、それを尊重し重視するという態度の欠落があるように思われます。

現政権にとって重要なのは、政権維持に今すぐ役立つことなのでしょう。
それ以外の事には関心は薄く、科学技術のように基礎的で、時には近視眼的な政権に批判的だったりするものは排除するとう浮薄な考え方や行動をとることになり、その象徴的なものが日本学術会議との対立といった形で現れるようです。

科学技術のような基礎的なものは、今日の得票には関係ないように見えても、最近発表された科学技術の引用論文数の国際ランキングが13位とこれまでの最低を記録するといった状況を齎し、日本の科学文化、ひいては経済社会の発展の停滞を齎すのです。

今回の国立科学博物館のクラウドファンディングの成功は、国民のそうした現政権への批判の意識の裏返しであることを、素直に洞察するような的確な思考力を、現政権に期待したいと思うのですが、無理な話でしょうか。

国際収支の行方、円レートの行方は?

2023年08月08日 13時16分35秒 | 経済
今年の3月、「日本の国際収支は大丈夫か?」を書きました。
丁度発表された1月の経常収支が、未曾有の大幅赤字を計上したからです。

その際、今後も動きを見ていきますが、未だあまり心配する事はないのではないでしょうかといった感じで書いていました。

今日、今年上半期の経常収支が黒字になったという報道がありましたが、やはりまだ日本は、アメリカのような万年赤字国には、未だ、ならないよう頑張っているようです。

この1年半ほどは国際的なエネルギー価格の高騰などもあり経常赤字の月も出始め、何と無く心配でしたので、財務省の国際収支統計でそのあたり様子を見てみました。

結果は、下の図のような状況です。茶色の柱の貿易収支は昨年来マイナス幅の大きい月が多くなり、マスコミも貿易収支の赤字化を報告していました。

      経常収支、貿易収支、第一次所得収支の推移(単位億円)

                     資料:財務省「国際収支統計}

一方、常に黒字を稼いでいるのは第一次所得収支で、これは課外投資の収益で外国から受け取る利子や配当です。貿易赤字が第一次所得収支の黒字より大きくなりますと経常収支は赤字転落となります。

実はこのほかに、万年赤字のサービス収支(海外へのパテント料の支払いや海外映画の輸入代など)、第二次所得収支(海外への援助・贈与など:当然赤字に計上です)がありますが、グラフにしても目立たない程度のものです。

この1年半の動きを見ますと、下図で、貿易赤字の大幅な月が多いことが解ります。茶色の柱が下に伸びて、上に出ている第一次所得収支の柱の長さに近づくと、青い柱の経常収支が低くなり、10月や12月や今年1月のように、経常収支のゼロやマイナスの月が出て来ることになります.。

      輸出額、輸入額の推移(単位億円)

                        資料:上に同じ

こうした傾向も今年に入って2月からは貿易収支の赤字幅が小さくなったことで経常収支の黒字幅が確保され、矢張り現状では、日本の国際収支は、海外の資源価格が安定すれば黒字基調という事が見えてきたように思います。

という事で、赤字幅を広げた貿易収支について輸出と輸入の状況を見てみますとこれは下の図で、青い輸出の柱は、それほど低くなったわけではありませんが、茶色の輸入の柱が随分高くなり、その差である貿易赤字が拡大したことが解ります。

傾向的に輸出は伸びず、傾向的に輸入が増えるのであれば、これは赤字国への道ですがそうではなさそうです。

しかし、モノには限度があって、あまり経常黒字が大きくなると、アメリカ始め赤字国の目が険しくなります。

一方今後、欧米はインフレが鎮静化すれば金利を下げるでしょうし、日本では日銀が金利引き上げをしなければならない立場にあるようですから、これは円高材料で、円高は貿易赤字要因ですから、適切な舵取りが要請されるところでしょう。

余計なことを書きますと、インバウンドはますます増えるようですが、人気のあるmade in Japanを観光客が購入した分は「輸出」になるのだそうですから、輸出が増えるかもれませんね。

今年も原爆忌を迎えて:世界の平和を考える

2023年08月07日 14時19分52秒 | 経済
今年も原爆忌を迎えて
今年も8月6日の広島原爆忌、9日の長崎原爆忌を迎える時期になりました。

マスコミは原爆の悲惨さを伝えてくれます。丸木伊里、丸木俊夫妻の「原爆の図」制作の際のことなどを聞けば、丸木美術館のすさまじい絵とともに、原爆が人間に与える恐ろしさを改めて強く感じます。

今年はG7も広島でありました。皆揃っての献花も行われました。しかし一方で、現実の世界を、見ればロシアの原爆の使用に言及する「脅し」は次第にエスカレートするようで、核の抑止力は破綻したという見方が一般的になりつつあるようです。

そうした悲惨さを招く原爆は使わない事にしようと「誰も」が考えれば、原爆を使うことはなくなるのです。

全ては、人間の心の問題なのですが、人類世界には極く少数ながら、場合によっては原爆を使いたくなる人がいるのです。

今人類の中でそれを考えているのはロシアのプーチン大統領という事になるわけですが、現実問題として、プーチンが何故原爆使用に言及するようになったかを考えてみますと、それはロシアの領土を広げたいという所に原点があり、クリミア半島併合で成功、それに自信を得て、今度はウクライナ全土の併合を考えたのでしょう。

しかし、これはウクライナの強力な抵抗にあい、それだけではなくヨーロッパを始め自由世界全体の反対にあい、成功の見込みが立たなくなって、いわば窮余の一策で、原爆使用に言及という事なのでしょう。

ここまで来ると、人間の常識は勿論、国連の存在も、国際法も無視し、己の欲求追求の一途という視野狭窄の異常な精神状態になっていくのでしょう。

クリミア半島併合を阻止しなかった事がプーチンの領土拡大欲求を刺激したことは否めない所でしょう。これは国連にも世界人類全体にも責任があるのでしょう。

ここで本気で考えなければならないのは、国連憲章の第2条の4項、「武力や威嚇による国境、政治的独立の変更は謹まなければならない」という条項でしょう。

いま世界では、国連安保理の常任理事国の2か国、ロシアと中国が、これに関わる問題・欲求を持っています。
ロシアは原爆に言及し、中国は原爆には言及していませんが力による台湾併合には、国内問題と言い張って言及しています。しかし、明らかに「政治的独立」に違反でしょう。

最終兵器と言われる原爆は、戦争がエスカレートした時、問題になるのでしょう。ならば、戦争を激化させない努力、戦争を起こさない自制心、国家間の紛争を「未然に」摘む努力が国連・世界人類にとって最も必要なのではないでしょうか。

更に考えれば、国家間の主要な紛争の原因は、歴史的にも、今日的にも、領土問題、土地の領有権に発するものが最多でしょう。

国連は、国連憲章の第2条4項を、人類の平和共存のための最も基本的な考え方として如何に国々のリーダーの心の中に定着させるかを当面する至上命題として、いかに困難であっても、世界の知恵を糾合して取り組むべきではないでしょうか。

モーターとエンジンは、どう違う!?

2023年08月05日 14時31分18秒 | 文化社会
モーターとエンジンは、どう違う!?
今日は土曜日で、何となくのんびりです。最近気がついたことで、言葉の遊びのような事になってしまいますが、言葉は世につれです。

その前に、昨日のマイナカードと健康保険証の問題について、当方の間違いで説明部分に欠落があり、誠に申し訳ありませんでした。今朝、訂正いたしましたので、ご寛恕のほど伏してお願い申し上げます。

ところで、最近のEVブームの中で何となく気になっていたのが、自動車メーカの社名です。

かつて長く世界一を誇ったGMは「ゼネラルモーターズ」ですし、フォードも「フォードモーターズ」です。

日本でもトヨタモータース、日産モーターと名のつくのがトヨタ系、日産系の会社では一般的です。ホンダの場合もホンダモーターサイクルという会社があってこれは二輪車ですが、名前はモーターですが、皆エンジンで走っているのが当たり前でした。

最近でこそ、EV・電気自動車の出現で「モーター」で走っている車が出て来ましたが、未だエンジンで走っている車の方が多いでしょう。

という事で、「みんなエンジンで走っているのに何でモーターやモータースなの」という事になるのではないでしょうか。

日本語の「自動車」というのはその点では大変的確な名前ではないかと思うところです。
何故なら、機関車は、蒸気機関車でも電気機関車でもレールの上しか走れませんし、電気機関車の場合には架線から電気をもらわないと走れません。

自動車は、その点、動力源を自分の体内に持っていて、何処へでも行ける車、まさに自力で走る車「自動車」です。その点中国の汽車より実態を表しているように思われます。

考えてみれば、動力というのは、もともと人間は馬や牛に頼っていたので「馬力」・「HP」が力の単位になっているのでしょうが、それが、ワットの蒸気機関(これはスチームエンジンで「エンジン」ですね)の発明から始まってそれが、ガソリンエンジンになり電気モーターにと変わってきているのです。

私の子供のころは正確に「電気モーター」と言っていた記憶がありますが、欧米ではもともと「モーター」と言えば「動力源」の意味だったのでしょう。

そう考えればエンジンで走る自動車のメーカの名前が「モータース」であっても当たり前でしょう。

日本では、ヤマハ発動機、大阪発動機(ダイハツ)の様にエンジンを「発動機」と名付けていたり、原動機(原動機付きバイク)、内燃機関ともいってきています。

最近のマスコミでは、EV・電気自動車を筆頭に、HEV・ハイブリッド車、PHEV・プラグインハイブリッド車、FCV・燃料電池車、e-POWER(エンジンで発電してモーターで走る)などと電池とモーターの車からエンジンと電池とモーターを組み合わせた車、は燃料電池(FC)に電池とモーターを組み合わせた車など、いろいろな車が走るようになりました、

昔と違って、エンジンと(電気)モーターを確り区別して両者の関係を正確に理解しないと何でどのようにして走っているのか解りません。

自動車というのは大変うまい名前だなと思いますが、「自動」の中身がどうなっているのか理解するのも結構難しい世の中なって来たようです。

「資格証明書」を職権で交付します

2023年08月04日 11時23分36秒 | 政治
「資格証明書」を職権で交付します
岸田政権がマイナンバーカードについて基本的にどんな考え方をしているのか解らない中で、健康保険証を廃止しマイナカードに一体化するころにすることになりました。

マイナカードは強制ではなくて、作りたい人だけ作ることになっているので、「国民皆保険」の日本ですから、当然この両制度の間には矛盾があります。「マイナカードを作らない人はどうなるの?」です。

その辻褄を合わせるためにマイナカードを作らない人には「○○健康保険の加入者です」という「資格証明書」を発行しますという事になり、その有効期間は1年だという事でした。

どう考えても政策に合理性も整合性もなく、健康保険証の様に人の命にも関わるものですから反対論が沢山出ていました。

そこで政府はなにか良い考えを出さなければならなくなり、今日岸田総理が記者会見をして、国民にご迷惑をかけないような改善策を発表することになっています。

その内容は、すでにマスコミが報道していいて、「資格証明書」の有効期間は「上限」を5年に伸ばし、健康保険にもいろいろあるわけですから具体的な有効期限はそれぞれの健康保険組合に任せるという事だそうです。

さらに、マイナカードを持たない人の手数を省くために、本人が申請して「資格証明書」を交付してもらうというのを改めて、対象者全てに「職権で交付する」という事にするという事のようです。

更におまけがついていて、既にマイナカードと健康保険証を一体化している人で、「それなら分離したい」という人には、希望すれば、マイナカードの健康保険証の利用登録を解除して「資格確認書」の選択も認めるのだそうです。

その他いろいろあるのかもしれませんが、これでは国民皆保険を確実にするためには、マイナカードの普及は後退してもやむを得ないという判断になってしまっています。

折角「国民に便利だから」とマイナンバーという制度を作り、デジタル庁という省庁まで作って膨大な時間と経費をかけ、今年中に100%(?)普及を目指し、マイナカードの積極活用による行政の合理化、効率化を促進するといった方針は何だったのでしょうか。
という事なので、それならこんな案は如何でしょうか。

職権で交付する[資格証明書」は、2通りに分けます。
全部で何千万枚になるか解りませんが、その内マイナカードを持っている人の分は単なる健保の資格証明書です。

マイナカードを持っていない人の資格証明書にはマイナカードの機能も政府が職権で付帯させます。
但し使わなくても問題ないし、邪魔にならない形式にします。若し使ってみて便利だと思えばいつでも使えます、とい仕組みにする事です。

マイナカードに入れる情報は全国民をカバーし、総て政府が持っているデータです。職権でマイナカードを持たない人を把握でき、その人たちには、「マイナカード付き」の「資格証明書」を交付すれば、マイナカードで全国民がカバーされるはずです。
(これはかつて書きました「マイナカード・トラブルの中での疑問」の応用編です。)

行政機構のデジタル化のベースになるマイナカードです。もともと任意で登録した人だけが持つことにして、飴玉つきで普及を図るといったアプローチが誤りだったのでしょう。
今日の総理の記者会見では、そのあたりの政府の基本的な考え方を総理の口から聞いてみたいところです。
(最後の提案の部分は、当初のものを訂正しています。)

進化するインターンシップ:学生から社会人への架橋

2023年08月03日 13時31分07秒 | 労働問題
昨年、経団連と大学サイドの協議会で、インターンシップと採用の関係が柔軟化し、今迄のインターンシップを採用に結び付けてはいけないという考え方が見直され、2025年卒業生からつまり今年のインターンシップ(3年生)からは、採用直結のインターンシップも一般的になるようです。

ご承知のように日本では学生から社会人になる人生の大変化の時期をできるだけスムーズに通過できるような方式「新卒一括採用」という方式が上手く成立しています。

それは、若年層の失業率が欧米諸国に比べても圧倒的に低い事に示されています。
何故そうなのかという理由は、欧米流の「ジョブ型」採用でない、人物本位の採用で、即戦力でなくても、良い素材を採用して給料を払いながら企業が育てるという考え方が一般的だからです。

その意味では、将来この企業に馴染んでくれる人間を選ぶことは大変大事で「就活」に学生も企業も真剣に取り組む熱心さは日本ならではのものでしょう。

就活での学生と企業の接触が、短時間の面接だけではなく、より長い時間を掛けて出来れば、それは双方にとって良い事でしょう。
インターンシップがその機会を提供することになれば、それぞれの企業の現場で、実際の仕事や人間関係の雰囲気を感じながら学生と企業の摺り合せが出来るわけで、大変結構なことだと思うわけです。

今迄は、学業がおろそかになるなどの理由で、採用選考に繋がるようなインターンシップの在り方は認められなかったのですが、それは何かのこじつけのようなもので、企業が、わが社への就職が希望ならば、こういう専門領域でここまで勉強して来てくれと言えば、学生は安心して卒業まで一生懸命勉強するでしょう。

当然、インターンシップも、今迄の会社見学のようなものだけではなく、仕事の現場に入って、仕事の経験もするような長期に亘るものも必要になるでしょう。
当然それは夏休みなどの期間の利用という事になるとすれば、現3年生、2025年3月卒業生からは、早速今年という事になるのでしょうか。

インターンシップの在り方の柔軟化で、今後の就活事情は、学生側、企業側の経験が蓄積されれば、双方にとってより良いものに進化していくと思われます。
こうした問題は、規制をするより出来るだけ自由にして、不合理な行き過ぎについては、良識を信頼し、世論に耳を傾けることで学生も企業も対処すべきでしょう。

最後に望まれるのは、現実を知らない政府の「働き方改革」の中で、欧米流の「ジョブ型」がベストであるとか、採用も「ジョブ型」にすべきで、新卒一括採用はやめるべきだなどという、誰も従わない方針などは、熟慮の上、早期に「改める」ようにすべきだという点でしょうか。

今、日本に必要な「是々非々」の思考と行動

2023年08月02日 13時50分17秒 | 政治
今年も8月に入りました。
8月は「8月15日」の「太平洋戦争終戦の日」がある月です。この所マスコミでも太平洋戦争の惨禍を取り上げることが多くなっています。理由ははっきりしています。

今、日本は、戦争に巻きこまれる可能性が、確率としては「ゼロ」でないという現実の中にいます。
しかもそれは日本でない他者の意思決定によるという状態です。具体的に言えば「台湾有事」が起きるか否かです。
日本政府は、沖縄の南西諸島中心に、それに備えようと具体的な政策を展開しています。

沖縄が再び戦争に巻きこまれる可能性だけではありません。日本中に米軍基地は沢山あります。この近所では横田基地です。
ミサイルがどこまで飛んで来るかは、中国の意思決定次第でしょう。

こうした状況の下で、今、我々はそれなりに平穏な日々を過ごしています。「台湾有事」などは起きないだろうと漠然と想定しているから平穏なのです。

起きなければそれに越したことはないのでしょうが、問題は、平和憲法を持つ日本政府が、日本が戦争に巻きこまれる可能性を作ってしまっているという事でしょう。

戦争を経験した世代は、この可能性に大変敏感になっています。それは、戦争の不条理、悲惨の直接体験が、昨今マスコミにたくさん登場している事にも表れています。

勿論「戦争を体験した世代」というのは適切ではないでしょう、戦争を体験していなくても戦争の不条理・悲惨を理解することは、情報への接触と正常な思考によって十分可能でしょう。だからこそ、殆どの日本人は戦争反対でしょう。

しかし、日本政府は「集団的自衛権」以降、平和を望む国民の思いに応えるという「是」を忘れて、戦争を認めるという「非」を「是」の如くにする行動を続けているのです。
はっきり言って、戦争は人類にとって基本的に悪で「非」なるものなのです。

矢張り、人間として、正しく自らの生を生きると考えるならば、「是は是、非は非」としっかりと識別し、それに則って考え、行動するという確固たる意識を持たなければとわきまえるべきではないでしょうか。

「是々非々」は荀子の言葉と言われていますが、荀子は、人間は弱いものという事を認め(性悪説などと言われたようですが)、弱いからこそ、意識して道理に叶う是は是、道理から外れた非は非とはっきり意識し行動するように努力しなければいけないと言ったのではないでしょうか。

自民党や公明党の国会議員なら誰でもみんな、更に自民党員なら、自民党に投票する人ならみんな、日本が戦争に巻きこまれてもOK、アメリカについていけば間違いないと考えているわけではないでしょう。ですから今、「是々非々」の発言と行動が必要なのです。

既に日本は、戦争をするか、しないかの岐路に立っているのでしょう、というより戦争の可能性を否定しない場所に立っているのです。

リーダーたちが、日本国民の意思の代表でなく、自ら「是々非々」の判断をせずに、アメリカの意向に追随・忖度する事をもって行動の基準にしているように見える状況の中で、日本の主権者である国民は、今こそ「是々非々」の原点に立ち、自らの判断を政府に明確に伝えなければならないのではないでしょうか。

金融経済学、労働経済学とインフレ問題

2023年08月01日 14時19分49秒 | 経済
金融経済学、労働経済学とインフレ問題
政府、日銀は2%インフレ目標を掲げています。政府はインフレが2%になれば、それだけ経済活動が活発になるのだからそれが望ましいと言ってきました。

日銀は、インフレが2%になれば、ゼロ金利では経済合理性に反するから、金利を上げて国債や銀行預金にもそれなりの利息が付いて金融が正常化するようになる、インフレ2%は金融正常化への入り口としているようです。

最近の国際情勢では、原油などの資源の値上げ利がきっかけになって、アメリカやヨーロッパでは、10%前後のインフレが起き、政府も中央銀行もインフレ抑制に躍起です。

国際経済情勢が各国経済に及ぼす影響は欧米も日本も同じはずです。日本はインフレにならないと言われてきましたが、この所、日本の消費者物価も上がっています。
2%を超えて、3%台になっていますし、食料品や日用品などの生活必需品は10%前後上がっているのが現状です。

しかし政府も日銀も、インフレ目標が達成されたと喜んでいませんし、日銀も金融正常化に積極的になるわけでもなく、国債金利の変動幅をを0.5%広げた程度です。

しかし、市中銀行は、住宅ローンの金利を引き上げに動くようで、現実は今までのゼロ金利ではなくなりそうです。預金金利を上げるところも出て来るかもしれません。

やっぱり日本も部分的には(値上げし易い所では)インフレになっているのではないでしょうかと思ってしまいます。

インフレの原因には大きく2つの意見があって、金融経済学では、モノよりおカネが増えればモノとカネのバランスが変わってインフレになると考えます。

一方労働経済学では、企業の人件費などのコストが上がると利益が減るので利益確保のために物価を上げるからインフレになると考えます。

日本でも金融緩和でインフレになった時代もありました。カネの足りない戦後はそうでした。第一次石油危機まではそんな雰囲気がありました。
そして第一次石油危機の時は、石油の値上がりに慌て、30%の賃上げをして20%を超えるインフレになりました。最近のアメリカやヨーロッパと同じ(よりひどい)でした。

しかし、そうした経験から学び、慌ててインフレを起こすことをやめました。

第二次石油ショックの時は、落ち着いてインフレは最小限に抑えました。
しかし政府が金融の大幅緩和をやったので、余ったマネーが土地バブルを起こしました。しかし1991年バブルは崩壊して大変苦労しました。

この2回の経験で、日本は石油が上がってもインフレは起こさない、金融超緩和でも地価は上らないという経済を作りました。
では、今の異次元金融緩和のカネはと言いますと多分株式市場や湾岸マンションに少し、後は銀行経由で日本銀行への預金でしょう。使われていないのです。

政府がそれを借りて、いっぱい無駄遣いをしているという批判もあります。

何処かで実体経済の活性化のための政策が故障しているのでしょうね。
(前回もそのあたりを少し書いています。)