tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

最低賃金引き上げ論議

2009年08月20日 10時46分34秒 | 労働
最低賃金引き上げ論議
 最低賃金の改定時期を前にして、今年も引き上げ論議が出ているようです。昔から、最低賃金の論議は理屈よりの感情的なのものに影響されることが多いように感じています。

 最低賃金を貰うような人は弱者で、一生懸命働いてもワーキング・プアーで、気の毒な人たちだから何とかしてあげなければ、といった感じでしょうか。しかしこうした問題は感情論で解決はしないでしょう。無理を通せば、必ずどこかでしっぺ返しが来ます。

 例えば、選挙戦のかなで国家予算の「財源問題」があります。民主党の14兆円の財源はどうなっているのか、などなど。これは健全な論議です。財源がなければ支払えません。

 しかし最低賃金問題では、財源問題はほとんど論議がありません。企業が何とかして払えばいいということのようです。最低賃金引き上げの原資はどこから持ってくればいいのでしょうか。中小企業では、財源のない企業がほとんどでしょう。

 格差縮小という見地からすれば、正規社員など賃金の高い人の分を引き下げて最低賃金上昇の原資を出す、あるいは製品値上げで出す(これは無理でしょう)などでしょう。
 結局、最低賃金引上げは、廃業や雇用削減になることも多いようです。マスコミは日本の最低賃金はヨーロッパに比べて低いといいますが、ヨーロッパの失業率は日本に比べて高いことには触れません。

 最低賃金問題に限らず、賃金問題というのは、それ自体で存在するのではなく、産業構造、雇用構造、労使関係といった日本の産業社会全体の様相が反映されて決まってくるものです。このところの規制改革万能のような風潮の中で、これらの諸構造は、日本的な文化社会的背景の中で善しと感じられるものに比べて、かなり歪んできたのではないでしょうか。

 最低賃金問題も、最低賃金論議に限定せず、最近の格差拡大問題もふくめて、日本の産業構造、雇用構造、賃金構造などの今後のあり方も含め、トータルな論議の一環としてやらなければならない時期になっているのではないでしょうか。


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