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日本の国際収支の構造変化:第一次所得収支・サービス収支

2018年09月24日 11時51分44秒 | 経済
日本の国際収支の構造変化:第一次所得収支・サービス収支
 前回、日本の貿易黒字は次第に縮小してきていることを見て来ました。これは生産大国から投資大国へのプロセスで起きるようです。
 国内で作って輸出するより、コストの安い国に工場進出して作る、あるいは輸出先の国で作れば輸出のコストが省け、相手国も喜ぶといった理由が言われます。
 トランプさんが、特に自動車について「日本企業はもっとアメリカで作れ」というような要求をすれば、この傾向はさらに強まります。

 アメリカはこれが行き過ぎて、 アップルの最新製品も殆ど中国で作って輸入するので、貿易赤字が大きくなっているのは当然でしょう。
 それでは日本はどうなのかと言いますと前回指摘の貿易黒字の縮小傾向という事になるわけですが、その反面で、海外に進出した企業が利益を上げ、配当や利子を沢山日本国内の親会社に送ってきます。

 この、海外からの利子・配当収入は国際収支統計の項目としては「第一次所得収支」という項目に集計されています。
 では日本の第一次所得収支の動きはどうなっているかと言いますと下の図です。

日本の第一次所得収支とサ-ビス収支(財務省:国際収支統計 単位億円)


 リーマンショックの後の(平成20年~24年)という低迷期はありますが($1=¥120が円高で80円になりますと、1ドルの配当をもらっても、それまで120円だったのに80円にしかならないという事もあったのでしょう)、ほぼ一貫して増えています。現状では年間約20兆円、500兆円のGDPの4%近くになります。
 ただこれは、国内で生産された経済価値(付加価値)ではありませんので、国内総生産(GDP)には入ってきません。( GNI:国民総所得には入ってきます。もちろん日本として使う事の出来るおカネです)

 上の図では、サービス収支も(見にくいですが)青い線で入っています。これは特許料とか映画やソフト・アプリの利用料などで、日本は技術導入や外国映画などでずっと赤字でしたが、最近は日本からの輸出も増えてそろそろ黒字転換でしょうか。

 こうして、日本の国際収支は、貿易黒字は減りましたが、企業の海外進出や技術、ソフトウエアなどの輸出がそれを補って余りあるほどになり、万年経常黒字国になっているのです。

 では、アメリカはどうなっているかですが、勿論、第一次所得収支もさらにサービス収支はずっと黒字です。しかし貿易収支の赤字が大きすぎて、万年赤字国になっているのです。つまり、企業がコストの安い海外出て稼いだ方が有利という事で、国内生産はそっちのけで海外に出て行ったという事でしょう。 
 企業は自分の利益だけを考え、国の経済構造などには関心が無かったという事になりそうです。国と企業の利益相反の悪い例の典型でしょう。

 この問題に関してはまだ検討すべき問題点がありますが、長くなるので今回は第一次所得収支の問題に絞りました。

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