tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

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物価論議は実証分析をベースに その2

2013年05月29日 08時52分29秒 | 経済
物価論議は実証分析をベースに その2
 ヘリコプターマネーなどと本気で言う学者もいます。ヘリコプターからカネをばらまけばインフレになるという考え方です。通貨を増やせば物価が上がる、まさに単純な貨幣数量説そのものを極端な形で強調したという事でしょう。

 今回もそうした主張が結構されているように思います。日銀が国債などをどんどん買い上げて、市中にカネを流せば物価が上がって、世界に公約した2パーセントのインフレ・ターゲットが実現するといった主張です。

 ところが、今の状態を見れば、日経平均は確かに上がりました、デパートで高級品も売れているようです。地価が下げ止まった所もあるようです。しかし消費者物価は下がり続けています。

 かつて、前川レポートで内需拡大、金融緩和が提唱され、その結果、日本経済がバブルになった時も、株価は勿論、土地・住宅、書画骨董、ゴルフ会員権などは大変な値上がりでしたが、消費者物価上昇率は年平均僅か1.5パーセント です(その間マネーサプライ[M2+CD]は年率9.2%増加)。
 いくらカネをバラ撒いても、消費者物価は殆ど上がっていないのですから貨幣数量説は成り立たなかったのです。現場を知らないと、経済理論は無意味です。

 ではなぜ日本の物価は上がらなかったのでしょうか。理由は簡単で、賃金上昇率が低かったからです。当時、労働組合は第一次オイルショック後の狂乱物価に懲りて、経済成長(生産性向上)に整合した賃金上昇 経済成長(生産性向上)に整合した賃金上昇を良しとしていたのです。
 その結果、賃金コストプッシュは僅少です。その賃金で暮らす国民は企業の物価引上げを許しません。

 前回、物価変動の理由として、内外格差を挙げました。もう1つの理由、つまり2つ目の理由、インフレの原因は、賃金コストプッシュです。賃金コストプッシュですから賃金の上がった分だけ、名目の購買力は上がっています、ですから、物価が上がっても暮らしていけます。企業は物価を上げることが出来ます。

 先進国では賃金コストは国内総コストの7割程度が普通ですから、賃金上昇を物価に転嫁し、物価上昇率を賃上げ要求に加えるというインフレ・スパイラルは容易に起こります。
 そういう意味では、賃金は高いほどいいという労働組合のところでは、金融緩和が忽ち賃上げに反映し、インフレになるということでしょうか。
 そうした欧米の労使関係のもとでは貨幣数量説が正しく見えるのでしょう。(以下次回)


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