tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

金融円滑化法とEU問題

2012年08月09日 12時27分38秒 | 経済
金融円滑化法とEU問題
 金融円滑化法という法律があります。サブプライム問題からリーマンショックにかけての世界的な金融問題の発生で、$1=¥120が$1=¥90という急激な円高になり、日本の金融機関もバランスシートが毀損、「貸し渋り」や「貸し剥がし」などという言葉がはやったことは皆様ご承知の通りです。
 
 苦境に立った中小企業を救おうと、当時の金融相(亀井静香氏)のお声がかりで中小企業の借金返済を猶予する努力を金融機関に課したのがこの法律です。いわば、実体経済の苦境を、金融の緩和で幾らかでも救済しようという政策です。2009年末に施行、当初11年度までの時限立法でしたが、2回延長されて、来年3月までになっています。

 中小企業問題と、国際経済問題との違いはありますが、基本的には、今のユーロ圏のような、実体経済の赤字に対し、金融政策(緩和)でどこまで対応できるかという問題と結局は同じことです。

 日銀の白川総裁の、「金融対策は時間稼ぎに過ぎない」という発言を以前紹介しましたが、原因を直さないと問題解決に繋がらないことは、中小企業の場合は良く解ります。
 赤字で借金返済が困難な中小企業に、借金返済を猶予しても、赤字が直らない限り、借金と利息が増えるだけです。

 中小企業関係団体の調査によれば、返済猶予を受けた中小企業で、この制度を利用して、なんとか正常化にこぎつけた企業は約15パーセントだそうです。おそらく血の滲む努力の結果でしょう。マーケットが縮む中で30パーセントの円高(国際的コスト高)に対応するなど容易ではありません。その後さらに80円を割る円高です。日本の場合、不況の原因は円高ですから、それに手を打たない限り企業の対応には限界があります。

 信用調査機関などでは、来年3月後の中小企業の倒産増加を心配しているとのことですが、借金がより大きくなって破綻という事は当然考えられますし、期間を延長しても、つまりは同じことに繰り返しでしょう。

 翻って、ユーロの問題は、金融対策の規模が大きくなれば、「これで一安心」といった雰囲気ですが、本当の問題の所在は、赤字国が、いかに苦しくても、分不相応な支出を減らし、着実な赤字減らしの構造改革をすることしかないのです。

 同じことは、万年赤字のアメリカについてもいえるわけで、本当の解決策は、一時的には苦しくても、赤字国の赤字削減努力だという事を、国際経済機関はもっと明確にした方がいいのではないでしょうか。