tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

ワークシェアリングへの誤解

2009年01月10日 10時55分26秒 | 労働
ワークシェアリングへの誤解
 不況の深刻化が報道される中でまた「ワークシェアリング」論議が始まるようです。ワークシェアリングは、失われた10年のデフレ不況の中でもたびたび論議されましたが、本当の意味がすでに忘れ去られたようで、また一からの論議になりそうで心配です。

 「ワークシェアリング」は「仕事の分かち合い」と訳され、不況で仕事が少なくなったとき、少ない仕事をみんなで分け合って、雇用を確保する (失業者を出さない、失業者に仕事を分け与えて失業者を減らす) ことと理解されていて、その限りにおいては正しい解釈でしょう。

 問題は「仕事」の解釈です。そこで誤解が起きます。
 「仕事を分ける」といっていますが、本当のことを言えば、「不況で減った人件費をみんなで分ける」、つまり、「乏しきを分け合う」ことが真の命題で、賃金は仕事に「くっついて」いますから、便宜的に、あるいは、解りやすく「仕事を分ける」といっているのです。

 この真の命題(本来の目的)がわからないと、
「仕事は分けたが、賃金は分けない、従来どおり貰う」という主張が出てきます。これでは、仕事を分けてもらった人は、
「仕事はもらえたが、賃金は分けてもらえない」ことになり、ただ働きになってしまいます。
 そこで労働組合などは、「その分は会社が出せばいいではないか」と主張したりします。
 これでは、人件費が増えるだけで、本来のワークシェアリングの目的は達成されません。

 そんな理屈は子供でもわかると言われそうですが、そうではありません。1980年代のヨーロッパでは、失業率が10パーセント前後まで高まり、ワークシェアリングが言われ、労働時間短縮をしましたが、賃金は下げなかったので賃金コストアップになり、スタグフレーション になって大変でした。
 ヨーロッパでこの問題を合理的に解決したのは、オランダのポルダーモデル(パート労働を活用した独特な方法、1990年代後半)ぐらいでしょう。本当の誤解か意図的な誤解か知りませんが、ドイツやフランスでも、この問題はまだ尾を引いているところもあるように見えます。