tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

正社員不足

2007年07月20日 11時19分42秒 | 労働
正社員不足
 最近企業の人事担当の方のお話を伺っていると、「正社員を切り詰めすぎたので、社内に正社員不足の状態が出てきている、今後は少し正社員を増やしていきたい」といった話を聞きます。

 だからといって、一昔前のように「社内全員正社員で」というのではなく、仕事の内容や、高齢者対応、非正規希望者など非正規雇用も適切に考えながら、それでも正社員を増やしていきたいということのようです。

 この動きには直接的には2つの原因があるようで、ひとつは、長期不況の中で正社員を削りすぎたこと、もひとつは、パートや派遣の賃金水準が上がってきたことがあるようです。

 もともと日本の企業は正社員という雇用形態が好きで、戦後の経済成長の中で、一貫して正社員化を進めてきています。しかし、プラザ合意(1985年)で円レートが2年ほどの間に2倍に切りあがり、日本が世界一人件費水準の高い国(物価も世界一高い国)といわれるようになって、まずは製造業の海外移転、さらにバブルの崩壊以降は、背に腹は替えられず、コストの安い非正規従業員を増やしてきたというのが本当のところでしょう。

 非正規従業員の賃金水準は、企業が決めるのではなく、マーケットが決めます。だから不況がきついほど下がります(企業の労使が決める正社員の賃金は不況でもあまり下がりません)。日本企業は、長期不況の中で世界一といわれるほど高い人件費水準を、非正規従業員の活用で必死に引き下げ、同時に合理化で生産性を上げ、コスト競争力の回復に努力しました。

 その努力がやっと実って、企業が利益を上げられるようになり、景気が徐々に回復してきているということでしょう。やっと企業にも少し余裕が出てきました。削りに削っていた従業員の教育訓練の費用なども少しずつ増えてきているようです。

 こうなると企業は、本来好きだった正社員を増やしたくなります。それに、正社員の賃金は景気が回復してもすぐにはあがりませんが、非正規従業員の賃金水準は労働需給の逼迫で、確実にあがってきます。

 結果は、はじめに述べたような傾向になるのでしょう。最低賃金を政策的に上げるとか、深刻な格差問題に手を打てとか、後追いの議論が盛んですが、日本の経済社会は、健全な復元力を持っているようです。大切なのはこの内蔵された復元力を大事にすることでしょう。