司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

司法書士の受任通知

2004-06-02 14:28:10 | 司法書士(改正不動産登記法等)
 多重債務関係事件において、従来弁護士の受任通知には金融庁事務ガイドラインによって取立禁止効があり、受領後貸金業者は債務者本人等に対して直接取立をしてはならないとされていた。司法書士の中にも破産申立書作成(従来よりの業務である。)を受任するにあたり受任通知を発する者がいたが、法的根拠はなく、あくまで事実上取立が止まるに過ぎないものであった(債権者サイドの債権管理上の要請で発していたケースも多かったようである。)。平成15年4月1日以降、同ガイドラインの規定は「弁護士及び認定を受けた司法書士」に改訂された。然るべき改訂であった。
 さて、平成16年1月1日施行の改正貸金業規制法第21条第6項は、「司法書士一般」の受任通知に上記取立禁止効があるように読める。しかし、併せて改訂されたガイドラインにおいて「法第21条第6項に定める司法書士は、認定を受けた者に限る。」とされた。したがって、司法書士の受任通知は、「簡裁訴訟代理関係業務の委任を受けた」旨の通知ということになる。司法書士一般に代理権が認められたわけではなく、あくまで認定を受けた司法書士に限られるのであるから、内容としてはまったく異論のないところであり、当然限定するべきであるが、本法において限定のないものをガイドラインによって限定解釈するのはあり方としていかがなものか?疑問を呈さざるを得ない。
 また、認定を受けた司法書士の代理権も訴訟物の価額が金140万円以下の事件に限られるが、債務整理事件においては「債権者1社につき」「得られる利益」が金140万円以下ということになる。たとえば、利息制限法に基づく引直し計算の結果、金500万円の債務が金400万円に減額できるのであれば、代理権の範囲内ということになる。また、分割弁済の合意が調えば、将来利息相当額が「得られる利益」である。このように、金140万円という基準が現段階での「債務額」によるのではないから、取引履歴が明らかになるまでは代理権の範囲内であるのか否か、不透明であることも多く、そのような場合は、代理権の範囲外であることが明らかになった時点で当該債権者に対する関係においてのみ代理人を辞任し、書類作成に転換、という形で対応することになる。
 受任通知を受け取る債権者サイドでも混乱が見られるようであり、通知を発する司法書士においては、当然過ぎることではあるが、公正かつ誠実に職務を遂行して行くべきであろう。
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