劇団☆新感線30周年記念興業「薔薇とサムライ」に興奮し感動した
劇団☆新感線の魅力の取り憑かれたのは、「阿修羅城の瞳」の時からだ。市川染五郎の病葉出門(わくらばいずも)と、劇団☆新感線が創る舞台に大きな衝撃を受けた。一言で言えば、「カッコイイ」の一語だった。そして、ひたすら面白かった。
2000年8月に、打ち合わせがあり松竹座を訪れた際に上演していたのが「阿修羅城の瞳」(その時の女優さんは富田靖子だった)であり、それはまさに偶然の産物だ。それまで劇団☆新感線の存在を知らず、「観てみませんか」とパイプ椅子を用意していただいて観たのが最初だ。
そして、その公演が終わって横を見ると、演出家のいのうえひでのりさんがいた(パンフレットでその顔を見ていた)。厚かましくも「いのうえさんですか」と声をかけ確認して、「公演パンフレット」にサインをお願いした。快くサインをしていただけた。これもまた、偶然である。偶然が重なった劇団☆新感線との出会いである。
そして、その後劇団☆新感線の舞台を見続けてきた。我が松たか子も客演した「メタルマクベス」(2006年)は当然観たし、2003年に天海祐希が出演して再演した「阿修羅城の瞳」も観た。そして、今回の「薔薇とサムライ」の前作とも言える、2008年の松雪泰子が客演した「五右衛門ロック」も観ている。その他、何作か観ている。こうしてふり返ると結構観ているなと、少しだけ呆れている自分がいる。
それにしても、今回の「薔薇とサムライ」は劇団☆新感線の30周年記念興業と銘打たれているだけあって、まさに30年の集大成とも言える魅力いっぱいの舞台であった。激しいロックの生演奏の中で、ある意味では荒唐無稽なお話しが展開される。今回は映像が駆使されており、とても大きな効果を上げている。どんでん返しは、まさにお手のもの。
そんな中で、古田新太がいつもの魅力で迫る。そして、まさに「ベルサイユのばら」のオスカルを連想させたりもする、天海祐希のかっこよさにほれぼれする。彼女にしか、この役はできないと言えよう。天海祐希という俳優の魅力に堪能した。そして驚いたのが、松田聖子の娘・神田沙也加の歌唱力だ。とても素晴らしい歌声だし、劇団☆新感線の舞台に浮くことなく上手く馴染んでいた。
それにしても、劇団☆新感線のサービス精神は舞台づくりはもちろんだが、いつも限りなく旺盛に発揮されている。パンフレットは毎回魅力的であり、会場に一歩はいると、大きな立て看板が迎えてくれる。立て看板は二カ所に設置されており、みんな携帯を片手に写真を撮っている。友人に写メするのに絶好であり、若い人の気持ちをよく汲み上げいる。
だからこそと言うべきか、こうした劇団☆新感線の魅力に取り憑かれた人の多いことにも驚かされる。広い梅田芸術劇場(旧梅田コマ劇場)は、満員の観客であった。休憩中の女子トイレの列には、「ここが最後尾」の看板を持って立つ人すらいた。これにも驚いた。劇団を立ち上げて30年、いまや劇団☆新感線の公演はプラチナチケットとなっており、最も手に入りにくい舞台の一つだ。
ともあれ、心地よい春の一日、劇団☆新感線の舞台に興奮しつつ、ひとときの楽しさに身を置き、「明日からも元気で頑張ろう」と元気と勇気をもらった。感動の舞台であった。