天然居士の独り言

主に日記主体のブログです。

野口武彦さん・・・

2024年06月15日 18時27分27秒 | 日記
 昨日、久我美子さんが逝去された事を書きましたが、
 同じ9日、江戸学の深い造詣で知られた文芸評論家で
 神戸大名誉教授の野口武彦さんが、老衰のため死去しました。
 86歳だったとの事です。
 野口さんは、文芸評論ばかりでなく、
 その深い造詣を元にして、歴史小説も著しています。
 その内、何冊かを読んでいますが、信頼出来る作家だと思っていました。

 最初に読んだのが、2007年7月に読んだ「安政江戸地震」でした。
 野口さんも阪神淡路大震災に遭われ、その経験などを踏まえて、
 様々な史料を駆使して描いたものでした。

 特に一番印象に残っているのが、2014年に読んだ「巨人伝」です。
 安政の大獄を主導した大老の井伊直弼、その黒幕とも言うべき長野主膳の
 二人を主人公にして描いた歴史小説です。
 直弼は猜疑心の強い小心な人物として描かれ、
 長野主膳は権勢欲が強く国学で何事も解決しようとする
 独善的な人物として描かれています。
 その他の登場人物、水戸藩の徳川斉昭や吉田松陰など、
 多くの人物がごく普通の人物として描かれていて、
 大変面白いと思いました。
 歴史小説などでは、
 とかく主人公などの登場人物を美化して描く傾向があります。
 主人公として描く訳ですから、
 それはそれで止むを得ないのかも知れませんが、
 真実の姿とは違ったものになってしまいます。
 野口さんは、そうした粉飾を排して、史実に基づいて描いていますので、
 僕は好きです。

 他には、短編小説集である「異形の維新史」の中の「木造流血」は、
 廃仏毀釈の際の混乱を描いていて、
 本当はそうだったのだろうなぁと思いました。

 野口さんの訃報に接して、改めてその著作などを見ましたが、
 多数の著作を残しています。
 特に面白そうな本もありますので、
 出来れば読んでみたいなぁと思いました。

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