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光山鉄道管理局・アーカイブス

鉄道模型・レイアウトについて工作・増備・思うことなどをば。
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大昔のメルクリン基本セットから 線路とパワーパック

2019-10-05 05:20:24 | 鉄道模型 
 先日来続いているメルクリンHOの基本セットのはなし
 あれから手持ちの資料でこのセットについて触れている物がないか調べてみたら、1977年度版工作ガイドブックにそのものずばりの写真が載っていました。

(科学教材社 77年版工作ガイドブック 408Pより画像引用)
 当時の価格は1万5千円。当時の16番でこれとほぼ同じ構成のカツミ模型店のセットがEB58に2軸客車(フリー)の構成で1万4千円ですから外車のテツドウモケイとしては異例な安さだった事が分かります。しかも16番の方が実車の存在しないフリースタイルのショーティモデルである事を考えると一応スケールモデルらしいメルクリンのそれのアドバンスは大きいと言わざるを得ません。
 (まあ「外国型には興味がない」と言う向きにはどうでもいいことかもしれないですが)

 基本セットである以上、線路や給電システムの構成や操作性も語らなければなりません。
 幸い、メルクリンはAC3線式という独自の電気システムを取っているので現行のDC2線式の16番・HOゲージとの違いは割合書きやすいと思います(笑)


 線路は金属道床のお座敷運転対応(ですがレイアウトに使う作例も多い)仕様。
 バラストが明るいベージュにモールド、塗装されているのは同じような形式のエンドウの金属道床レールよりも線路らしいです。


 その金属道床を裏返すと中央にメルクリン特有の第3の軌条が現れます。
 裏から見ると一本の線ですがこのパーツはアブト線路のような形状をしており、表側にポッチの部分が枕木に沿って飛び出しています。
 機関車側にはこの第3軌条から集電するための巨大なシューが備えられ安定した集電を可能にしてます。

 (実際には3番のレール全てに通電しているので2線式よりも物理的に集電は安定しやすい様です。スローが良く効くのもその辺が関係して居そうです)

 3線式のACはそのままではDCの様に極性の入れ替えによる逆転ができないので方向転換時にはパワーパックから制御信号(厳密には通常よりも高い電圧のパルスを送る方式らしいです)をレールに送り機関車側の逆転機がそれを受信して初めて進行方向を変える仕組みになっています。


 ここでユニークなのがメルクリン独自の操作ロジックのパワーパック。
 現在のものとは操作性が異なると思うのでそのつもりで読んでいただきたいのですが、このパワーパック、スロットルレバーひとつ付いているだけで電源スイッチも逆転レバーもなし。
 店頭でチェックした時、速度が調整できるのはわかったのですが、どうやって走行方向を変えるのかとっさにわかりませんでした。
 私でさえそうなのですから、動作確認に9V電池を持ち出してきたショップの店員さんにはなおさらわかるはずがない。
 幸い説明書がきちんと残っていたのでそれと首っ引きでようやく理解しました。

 実はスロットルを「ゼロ」の目盛りのところからさらに左にチョンと押し込むと逆転信号が送られるのです。
 信号を送ると機関車の側では「ジッ」というノイズが一瞬出て逆転が完了したことを知らせます。あとはスロットルを操作し加速させればいいわけです。
 この「パワーパックと機関車がやりとりしている」が如き独特の操作感覚はDC模型にありがちな無機質なところがなく、あたかも機関車が独立した人格でも持っている様な不思議なインターフェイス感があります。

 しかもこのシステムだと「一旦停止してからでないと逆転できません」からこれまたDCにありがちな「全開走行から即逆転できてしまう」オモチャ丸出しの操作事故から模型を保護する働きもあります。

 モデルとしてはごくシンプルなものでありながらかなり洗練された操作性を持つパワーパック、これが40年以上前のものなのですからすごい。
 こうした直感性を重んじる独特な操作ロジックはDCの模型をWindowsに例えるならメルクリンのそれはあたかもMacかI-PHONEのそれを連想させます。

(科学教材社 77年版工作ガイドブック 409Pより画像引用)
 更にこの基本セットにこれまたパッケージ化された拡張セットを組み合わせると複線エンドレスに待避線やカーブポイントを駆使した片渡り線ふたつ、更にはダブルスリップ標準装備のヤードまで装備した驚くほどマニアックなトラックプランのレイアウトが(お金さえあればw)誰にでも実現できてしまうシステム性の高さ!しかもこれは今から40年以上前のモデルなのです。

 現在の基本セットの拡張は単線メインらしいですがそれでもヤードユニットはほぼ同じ構成の様です。このトラックプラン自体「平面構成のレイアウトとしては「誰もがポイント操作でやってみたいことのほぼ全てができる」点ですぐれものと思います。
 今のTOMIXでも拡張セットだけでこれほどのものができるかどうか。因みにこれとほぼ同じ構成は同じ時期のZゲージでも可能な様になっています。

 これほどのシステム性だったら彼の地でメルクリンが普及するのも当たり前と言う気もします。
 とはいえ、今回の基本セットにはポイントがないのでそれらのメリットが実感しにくいのも確かなのですが。