2022年5月16日 弁理士試験 代々木塾 意匠法37条
(差止請求権)第三十七条
1 意匠権者又は専用実施権者は、自己の意匠権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 意匠権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物品、建築物若しくは画像(その画像を表示する機能を有するプログラム等を含む。第六十四条及び第六十五条第一号を除き、以下同じ。)若しくは画像を記録した記録媒体若しくは内蔵する機器(以下「一般画像記録媒体等」という。)又はプログラム等(画像を表示する機能を有するプログラム等を除く。以下同じ。)若しくはプログラム等を記録した記録媒体若しくは記憶した機器(以下「プログラム等記録媒体等」という。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。
3 第十四条第一項の規定により秘密にすることを請求した意匠に係る意匠権者又は専用実施権者は、その意匠に関し第二十条第三項各号に掲げる事項を記載した書面であつて特許庁長官の証明を受けたものを提示して警告した後でなければ、第一項の規定による請求をすることができない。
・37条1項(差止請求)
差止請求権は、排他性のある権利にのみ、認められる。
独占的通常実施権は、排他性がないので、固有の差止請求は認められない。
独占的通常実施権の場合は、民法423条の債権者代位行使が認められる。
債権者代位行使とは、意匠権が侵害されたときに、意匠権者が有する差止請求権を独占的通常実施権者が原告となって行使することをいう。
独占的通常実施権の侵害を理由とするものではない点に注意が必要である。
・利用意匠の差止請求
後願の登録意匠が先願の登録意匠を利用するときは、26条が適用されるのであるから、未登録意匠が登録意匠を利用する場合にも26条が類推適用されるのは、当然のことである(最高裁平成4年9月22日判決・かわら事件)。
登録意匠が「自転車用ハンドル」であり、第三者が自転車Pを日本国内で業として製造販売しており、自転車Pに係る意匠が登録意匠(ハンドル)又は類似する意匠を利用するものである場合において、意匠権者が37条1項の差止請求をするときは、26条1項を類推して、自転車Pの全体の製造販売の停止を請求することができる。
この場合は、37条2項に基づいて自転車Pの廃棄の請求もすることができる。
・37条2項(付帯請求)
令和元年改正により、侵害の行為を組成したものには、物品のほかに、建築物と、画像を表示する機能を有するプログラムを含む画像と、当該画像を記録した記録媒体又は内蔵する機器(一般画像記録媒体等)と、画像を表示する機能を有するプログラムを除くプログラム等又は当該プログラム等を記録した記録媒体又は記憶した機器(プログラム等記録媒体等)を含めることとした。
令和元年改正により、意匠の保護対象(2条1項)に、建築物と画像を追加することとしたことに伴う改正である。
画像には、その画像を表示する機能を有するプログラム等を含むこととしたので、画像に関係のないプログラム等と区別するために、「一般画像記録媒体等」と「プログラム等記録媒体等」に分けて規定することとした。
意匠権の直接侵害となるもの、意匠権の間接侵害となるものについては、廃棄請求の対象となる。
・「第六十四条及び第六十五条第一号を除き」
64条は、意匠登録表示を規定している。
65条1号は、虚偽表示の禁止を規定している。
・37条3項(秘密意匠の制限)
・規定の趣旨
差止請求権は、侵害者の善意悪意を問わずに、行使することができるものである。しかし、秘密意匠の内容は一般公衆に公示されていないので(20条4項)、秘密意匠と同一又は類似の意匠を善意で実施している者に対して、いきなり差止請求を行うことができるとしたのでは苛酷にすぎると考えられる。そこで、一定の事項を記載し、かつ、特許庁長官の証明を受けた書面を提示して警告した後でなければ、差止請求権を行使できないこととした。
・「第二十条第三項各号に掲げる事項を記載した書面」
20条3項4号の願書等の内容のみならず、20条3項1号~5号の全てについて記載されていることが必要である。意匠公報には、20条3項4号の事項が掲載されていないので、意匠公報の写しのみでは、この要件を満たさない。
・「特許庁長官の証明を受けたもの」
書面の作成を意匠権者等の任意とすると、警告が不当な場合も起こり得る。
出願書類の謄本であって特許庁長官の証明を受けたものであれば、この要件を満たすことができる。
「提示」とは、書面を相手方に示すことをいう。
「警告」とは、相手方の行為が意匠権の侵害であるか又は侵害するおそれがあることを理由としてその行為の中止を求めること、その行為を中止しなければ差止請求権を行使する用意があること、を内容とする意匠権者又は専用実施権者の相手方に対する意思表示をいう。
文書については内容証明郵便で警告をし、図面については配達証明郵便で警告をすることが考えられる。
警告を受けた者は、秘密意匠の存在、内容等について、さらに詳細を調査するため、秘密意匠の閲覧を請求することができる(14条4項4号)。
警告を受けた者は、出願書類の閲覧を請求して、拒絶理由通知書、意見書、手続補正書等の書類を調査して、無効理由の検討をすることができる。
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(差止請求権)第三十七条
1 意匠権者又は専用実施権者は、自己の意匠権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 意匠権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物品、建築物若しくは画像(その画像を表示する機能を有するプログラム等を含む。第六十四条及び第六十五条第一号を除き、以下同じ。)若しくは画像を記録した記録媒体若しくは内蔵する機器(以下「一般画像記録媒体等」という。)又はプログラム等(画像を表示する機能を有するプログラム等を除く。以下同じ。)若しくはプログラム等を記録した記録媒体若しくは記憶した機器(以下「プログラム等記録媒体等」という。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。
3 第十四条第一項の規定により秘密にすることを請求した意匠に係る意匠権者又は専用実施権者は、その意匠に関し第二十条第三項各号に掲げる事項を記載した書面であつて特許庁長官の証明を受けたものを提示して警告した後でなければ、第一項の規定による請求をすることができない。
・37条1項(差止請求)
差止請求権は、排他性のある権利にのみ、認められる。
独占的通常実施権は、排他性がないので、固有の差止請求は認められない。
独占的通常実施権の場合は、民法423条の債権者代位行使が認められる。
債権者代位行使とは、意匠権が侵害されたときに、意匠権者が有する差止請求権を独占的通常実施権者が原告となって行使することをいう。
独占的通常実施権の侵害を理由とするものではない点に注意が必要である。
・利用意匠の差止請求
後願の登録意匠が先願の登録意匠を利用するときは、26条が適用されるのであるから、未登録意匠が登録意匠を利用する場合にも26条が類推適用されるのは、当然のことである(最高裁平成4年9月22日判決・かわら事件)。
登録意匠が「自転車用ハンドル」であり、第三者が自転車Pを日本国内で業として製造販売しており、自転車Pに係る意匠が登録意匠(ハンドル)又は類似する意匠を利用するものである場合において、意匠権者が37条1項の差止請求をするときは、26条1項を類推して、自転車Pの全体の製造販売の停止を請求することができる。
この場合は、37条2項に基づいて自転車Pの廃棄の請求もすることができる。
・37条2項(付帯請求)
令和元年改正により、侵害の行為を組成したものには、物品のほかに、建築物と、画像を表示する機能を有するプログラムを含む画像と、当該画像を記録した記録媒体又は内蔵する機器(一般画像記録媒体等)と、画像を表示する機能を有するプログラムを除くプログラム等又は当該プログラム等を記録した記録媒体又は記憶した機器(プログラム等記録媒体等)を含めることとした。
令和元年改正により、意匠の保護対象(2条1項)に、建築物と画像を追加することとしたことに伴う改正である。
画像には、その画像を表示する機能を有するプログラム等を含むこととしたので、画像に関係のないプログラム等と区別するために、「一般画像記録媒体等」と「プログラム等記録媒体等」に分けて規定することとした。
意匠権の直接侵害となるもの、意匠権の間接侵害となるものについては、廃棄請求の対象となる。
・「第六十四条及び第六十五条第一号を除き」
64条は、意匠登録表示を規定している。
65条1号は、虚偽表示の禁止を規定している。
・37条3項(秘密意匠の制限)
・規定の趣旨
差止請求権は、侵害者の善意悪意を問わずに、行使することができるものである。しかし、秘密意匠の内容は一般公衆に公示されていないので(20条4項)、秘密意匠と同一又は類似の意匠を善意で実施している者に対して、いきなり差止請求を行うことができるとしたのでは苛酷にすぎると考えられる。そこで、一定の事項を記載し、かつ、特許庁長官の証明を受けた書面を提示して警告した後でなければ、差止請求権を行使できないこととした。
・「第二十条第三項各号に掲げる事項を記載した書面」
20条3項4号の願書等の内容のみならず、20条3項1号~5号の全てについて記載されていることが必要である。意匠公報には、20条3項4号の事項が掲載されていないので、意匠公報の写しのみでは、この要件を満たさない。
・「特許庁長官の証明を受けたもの」
書面の作成を意匠権者等の任意とすると、警告が不当な場合も起こり得る。
出願書類の謄本であって特許庁長官の証明を受けたものであれば、この要件を満たすことができる。
「提示」とは、書面を相手方に示すことをいう。
「警告」とは、相手方の行為が意匠権の侵害であるか又は侵害するおそれがあることを理由としてその行為の中止を求めること、その行為を中止しなければ差止請求権を行使する用意があること、を内容とする意匠権者又は専用実施権者の相手方に対する意思表示をいう。
文書については内容証明郵便で警告をし、図面については配達証明郵便で警告をすることが考えられる。
警告を受けた者は、秘密意匠の存在、内容等について、さらに詳細を調査するため、秘密意匠の閲覧を請求することができる(14条4項4号)。
警告を受けた者は、出願書類の閲覧を請求して、拒絶理由通知書、意見書、手続補正書等の書類を調査して、無効理由の検討をすることができる。
代々木塾は、弁理士になってからも役に立つ勉強をする弁理士試験に特化した受験機関です。
2022論文直前事例Q&A講座
2022論文直前模試
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