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2023年9月24日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条3項、4項

2023-09-24 03:01:08 | Weblog
2023年9月24日 弁理士試験 代々木塾 特許法126条3項、4項


(訂正審判)第百二十六条


3 二以上の請求項に係る願書に添付した特許請求の範囲の訂正をする場合には、請求項ごとに第一項の規定による請求をすることができる。
 この場合において、当該請求項の中に一群の請求項があるときは、当該一群の請求項ごとに当該請求をしなければならない。


4 願書に添付した明細書又は図面の訂正をする場合であつて、請求項ごとに第一項の規定による請求をしようとするときは、当該明細書又は図面の訂正に係る請求項の全て(前項後段の規定により一群の請求項ごとに第一項の規定による請求をする場合にあつては、当該明細書又は図面の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全て)について行わなければならない。


〔解説〕


・126条3項(請求項ごとの訂正審判の請求)(方式要件)


(1)126条3項は、平成23年改正において新たに設けられたものであり、訂正審判の請求の単位について規定している。


(2)126条3項前段は、訂正審判の請求を特許権単位のみならず、請求項が2以上ある場合には、請求項単位で請求することができる旨を規定している。


(3)126条3項後段は、1の請求項の記載を他の請求項が引用するような引用関係等があるものについては、「一群の請求項」という概念を導入し(120条の5第4項)、これらの請求項は「一群の請求項」として一体的に扱うこととした。
 「一群の請求項」の中で、かりに請求項ごとに訂正の許否判断を行うこととすると、請求項ごとに審決確定の時期が異なったり、その許否判断が分かれたりする場合には、特許請求の範囲の一覧性の欠如が生じることがある。
 そこで、請求項ごとに請求しようとする請求項の中に「一群の請求項」がある場合には、これらの「一群の請求項」を一体的に扱って請求しなければならないことを規定し、「一群の請求項」の中で、請求項ごとに審決確定の時期が異なったり、訂正の許否判断が分かれてしまうことを防止することとした。


(4)「一群の請求項」とは、「当該請求項の中に一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係その他経済産業省令で定める関係を有する一群の請求項」をいう(120条の5第4項)。


 経済産業省令(特許法施行規則)
(一群の請求項)第四十五条の四
 特許法第百二十条の五第四項の経済産業省令で定める関係は、一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係が、当該関係に含まれる請求項を介して他の一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係と一体として特許請求の範囲の全部又は一部を形成するように連関している関係をいう。


(5)特許請求の範囲の一覧性の欠如
 1の請求項の記載を他の請求項が引用するような引用関係等がある請求項に対して、請求項ごとに訂正の許否判断を行うと、訂正が認められた複数の請求項間で審決確定の時期が異なったり、訂正の許否判断が複数の請求項間で分かれたりすることがあり、特許請求の範囲の一覧性の欠如が生じることがある。
 特許請求の範囲の一覧性の欠如が発生すると、引用される側の請求項の訂正内容が、引用する側の請求項に反映されない状況などが生じることになるため、それぞれの請求項について、権利の内容を理解しようとすると、特許登録原簿に記載された審決の確定経緯を追いつつ、訂正前後の異なる複数の特許請求の範囲を読み分けなければならず(このような状況のことを、「特許請求の範囲の一覧性が欠如している」という。)、権利範囲の把握のための負担が増すことになる。
 そこで、平成23年改正に当たっては、1の請求項の記載を他の請求項が引用するような引用関係等があるものについては、「一群の請求項」として一体的に扱うこととし、特許請求の範囲の一覧性の欠如の発生を防止することとした。


(6)具体例
 特許権の設定の登録時の特許請求の範囲の記載は下記のとおりである。
 【請求項1】Aを備えた装置。
 【請求項2】Bを備えた請求項1に記載の装置。
 【請求項3】Cを備えた請求項2に記載の装置。
 請求項2の「B」という記載を「B’」に訂正する場合は、請求項2の記載を訂正する訂正事項によって請求項3も連動して訂正されるから、請求項2及び3が「一群の請求項」を構成する。
 しかし、訂正事項の対象とならない請求項1は、訂正前に請求項2と引用関係があるものの、請求項2の記載を訂正する訂正事項によって連動して訂正されるものではないため「一群の請求項」を構成しない。
 この場合は、請求項2と3について一群の請求項ごとに訂正審判の請求をしなければならない。請求項1は訂正の対象に含める必要はない。


・126条4項(明細書又は図面の訂正と請求項との関係)(方式要件)


(1)126条4項は、平成23年改正において新たに設けられた規定である。
 126条4項は、請求項ごとに訂正審判を請求しようとする場合であって、明細書又は図面の訂正が複数の請求項に係る発明と関係する場合、当該関係する請求項の全てについて請求をしなければならない旨を規定している。
 明細書又は図面の訂正と関連する複数の請求項のうちの一部だけに訂正審判が請求され、その訂正が認められると、明細書の一覧性の欠如(明細書の束)が生じることになる。 
 そこで、特許権者が行う手続によって1つの特許権に複数の明細書又は図面が発生することを防止するために、明細書又は図面の訂正と関連する全ての請求項を請求の対象としなければならないこととした。


(2)特許請求の範囲に記載した文言自体を訂正していなくても、明細書又は図面の訂正によって特許請求の範囲の減縮をする訂正に該当すると解されることがある(最高裁平成3年3月19日判決・クリップ事件)。


(3)明細書の一覧性の欠如(明細書の束)
 明細書又は図面の訂正が、複数の請求項に係る発明と関連する場合に、その明細書又は図面の訂正と関連する複数の請求項のうちの一部の請求項だけについて訂正審判が請求され、その訂正が認められると、その一部の請求項に関連する明細書又は図面は、訂正後の内容が反映されるが、その他の請求項に関係する明細書又は図面については、訂正前の内容のままであるため、請求項ごとに異なる明細書又は図面が発生することになってしまう。
 この場合には、それぞれの請求項について、権利の内容を理解しようとすると、特許登録原簿に記載された審決の確定経緯を追いつつ、訂正前後の異なる複数の明細書又は図面を読み分けなければならず(このような状況のことを、「明細書の一覧性が欠如している」又は「明細書の束」が発生したという。)、権利把握のための負担が増すことになる。
 そこで、平成23年改正に当たっては、明細書又は図面の訂正が複数の請求項に係る発明と関係する場合、当該関係する請求項の全てについて請求をしなければならないこととし、明細書の一覧性の欠如(明細書の束)の発生を防止することとした。


(4)具体例
 特許権の設定の登録時の特許請求の範囲の記載は下記のとおりである。
 【請求項1】Aを備えた装置。
 【請求項2】Bを備えた請求項1に記載の装置。
 【請求項3】Cを備えた請求項2に記載の装置。
 明細書には、下記の記載がある。
 【0101】Aには、A1とA2が含まれる。
 【0102】Bには、B1とB2が含まれる。
 【0103】Cには、C1とC2が含まれる。
(a)明細書の【0101】の記載を下記のとおり訂正するときは、
 【0101】Aには、A1が含まれる。
 Aを含む請求項1~3の全てについて訂正審判の請求の対象としなければならない。
(b)明細書の【0102】の記載を下記のとおり訂正するときは、
 【0102】Bには、B1が含まれる。
 Bを含む請求項2と3の全てについて訂正審判の請求の対象としなければならない。
(c)明細書の【0103】の記載を下記のとおり訂正するときは、
 【0103】Cには、C1が含まれる。
 Cを含む請求項3について訂正審判の請求の対象としなければならない。




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