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PCTの優先権の主張(その1)(18.4.25)

2006-04-25 08:29:11 | Weblog
PCTの優先権の主張(その1)(18.4.25)

・PCT8条(2)(a)
 (2)(b)の自己指定に該当する場合を除いて、国際出願における優先権の主張は、パリ条約の優先権の主張として取り扱うこととなります。先の出願の出願国と後の国際出願の指定国とが異なる国であれば、パリ条約の優先権として扱うことができます。つまり、パリ条約の優先権は、先の出願国とは異なる国に後の出願をする場合に適用されるものです。

・PCT8条(2)(b)
 後の出願が国際出願であって、先の出願が国内出願又は一の国のみの指定を含む国際出願である場合において、後の国際出願の指定国のうち、先の出願の指定国と同一の指定国については、自国に基づいて自国に優先権を主張するケースですので、パリ条約の優先権には該当しません。
 そこで、この場合には、国内優先権の主張として扱うこととしています。
 ただし、そもそも国内優先権の制度を設けていない指定国においては、この規定は空振りとなります。つまり、国内優先権の制度を設けることを義務づけているわけではありません。

・わが国の取り扱い(審査基準)
(1)先の出願がわが国の国内出願で、後の出願が国際出願である場合
 後の国際出願において指定国からわが国を除外しない場合には、わが国に関しては、国内優先権の主張として扱います。その結果、先の国内出願は、特許法42条1項により先の国内出願の日から1年3月を経過した時にみなし取下げとなります。先の出願が国内出願ですので、特許法184条の15第4項は適用されることはありません。
 後の出願が国際出願ですので、優先権の主張の取下げは、優先日から30月を経過するまですることができます(PCT規則90の2.3)。しかし、優先権の主張の取下げを先の国内出願の日から1年3月以内にしなければ、先の国内出願のみなし取下げの効果を排除することはできません(特42条1項ただし書)。

(2)先の出願が国際出願で、後の出願も国際出願である場合
 先の国際出願においては、通常はみなし全指定となりますので、指定国が一のみであることはありません。ただし、一の国以外の指定をすべて取り下げたとすれば、先の国際出願は一の国のみの指定を含む国際出願となります。
 ここでは、先の国際出願の指定国が複数であり、後の国際出願の指定国に日本が含まれる場合について説明します。
 この場合は、わが国に関しては、他国にされた国際出願に基づいてわが国に後の国際出願をしていることになりますので、優先権についてはパリ条約の優先権であるとして扱うこととなります。後の出願が国際出願ですので、PCT8条(2)(a)の規定を適用する義務があるからです。

(3)先の出願が国際出願で、後の出願がわが国の国内出願である場合
 後の出願が国際出願ではありませんので、後の国内出願についてPCT8条を適用する義務はありません。つまり、PCT8条は、後の出願が国際出願の場合に適用義務があるということです。
 そこで、わが国としては、先の国際出願の指定国にわが国が含まれている場合には、出願人は、パリ条約の優先権を主張するか又は国内優先権を主張するか、自由に選択することができることとしています。
 出願人が国内優先権の主張を選択した場合には、先の国際出願は、特許法184条の15第4項の適用を受けることになりますので、国内処理基準時又は国際出願日から1年3月を経過した時のいずれか遅い時にみなし取下げとなります。

・PCT規則4.9(b)の改正
 昨秋のWIPO一般総会で採択されたPCT規則4.9(b)の改正により、平成18年4月1日から日本国の指定を願書で除外することができるようになりました。
 2004年1月1日に導入されたみなし全指定制度により、国内出願を基礎とする優先権を主張して国際出願をすると、いわゆる国内優先権の主張をしたことになり、 先の国内出願はその出願日から1年3月経過後に取り下げられたものとみなされます。それを回避するためには、先の国内出願がみなし取下げになる前に国際出願から 日本国の指定の取下げ等の手続を別途する必要があります。
 この度のPCT規則の改正により、2006年4月1日以降の新しい願書第Ⅴ欄(国の指定)に日本国の指定を除外するためのボックスが設けられました。このボックスにチェックをすることで簡易に日本国を指定しないようにすることができます。