goo blog サービス終了のお知らせ 

堤卓の弁理士試験情報

弁理士試験に関する情報を提供します。

2019年5月16日 弁理士試験 代々木塾 特許法73条の解説

2019-05-16 13:35:09 | Weblog
2019年5月16日 弁理士試験 代々木塾 特許法73条の解説

(共有に係る特許権)第七十三条
1 特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。
2 特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる。
3 特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない。

〔解説〕
・1項(持分の譲渡、持分の質権設定の制限)
 相続その他の一般承継の場合→他の共有者の同意は不要である。

・2項(確認規定)
(1)別段の定め→特許発明を実施するために他の共有者の同意を要する旨の定めをいう。
 別段の定めがある場合、同意を得ずに特許発明を実施すると、契約不履行責任が生ずるが(民法414条、415条)、特許権の侵害にはならないと解される。
(2)甲と乙が共同で発明イ(AB)について特許権Pを取得し、甲が単独で発明イの利用発明ロ(ABC)について特許権Qを取得した場合において、特許権Pが先願に係るもので、特許権Qが後願に係るものであり、特許権Pに係る発明イの実施について甲乙間に別段の定めがないときは、甲は、乙の同意を得ないで、業として利用発明ロを実施できる。
(3)最高裁昭和44年10月17日判決(一機関)
 先使用権者の注文にもとづき、専ら先使用権者のためにのみ、特許発明の技術的範囲に属する製品の製造、販売ないし輸出をしたにすぎない場合(一機関に該当する場合)には、先使用権を援用することができる。
 この裁判例は、特許権の共有者の一部の一機関にも適用される。共有者の一機関に該当する者の実施は、共有者自身の実施と同一視できる。
 なお、この最高裁判決は、大審院判決の一機関の3要件説には従っていない。正当権原者から製造の依頼を受け、製造した製品のすべてを依頼者に引き渡しているときは、一機関として認定される。

・3項(専用実施権の設定等に対する制限)
 甲と乙の共有に係る特許権について、甲が乙の同意を得ないで、丙に通常実施権を許諾した場合は、3項の強行規定に違反するので、丙の通常実施権は無効であり(民法90条、91条)、乙は丙に対して差止請求権等を行使できる。