産業構造審議会 第5回弁理士制度小委員会 議事録
特許業務法人制度について(論点整理)
弁理士事務所の補助員について(論点整理)
○中山委員長 それでは、早速議事に入ります。
初めは、弁理士事務所の在り方に関しまして「特許業務法人制度について(論点整理)」及び「弁理士事務所の補助員について(論点整理)」の資料に基づきまして事務局から説明をお願いいたします。
○稲垣秘書課長 それでは、お手元の資料1及び資料2に基づきまして手短に御説明させていただきます。
まず資料1の特許業務法人制度でございます。
1ページ目、現行制度の概要につきましては、御案内のとおり、平成12年の弁理士法改正におきまして、それまでの個人事務所の経営形態に加えて創設されました特別な法人制度でございます。これは社員が弁理士2人以上で、全社員が無限責任を負うという制度になってございます。6月末現在で、法人数は57にとどまっておりまして、その利用が必ずしも十分に進んでいないという現状でございます。
3、論点にまいりますが、大きく2つございまして、1つが、いわゆる指定社員無限責任制度の導入についてでございます。弁護士法人、監査法人と同様に、ある特定の業務について、それを遂行する社員のみが指定されて無限責任を負い、それ以外の社員は有限責任とする制度についてどう考えるか。
2ページ目にまいりまして、仮にそういう制度を導入するとした場合に、顧客保護の観点からのディスクロージャー、また損害賠償責任保険等についてどう考えるか。
それから、(2)といたしまして、一人法人制度、すなわち弁理士さん1人でも特許業務法人をつくれるという制度にするかどうかということでございます。
4、議論の整理といたしまして、(1)指定社員無限責任につきまして、今までいただきました委員の皆様の御意見といたしましては、お読みいただければおわかりのように、概ねその方向でいいのではないかという感じの御意見をいただいております。
他方、3ページ目の(2)にまいりますと、一人法人制度につきましては、一人法人を認めると、1人で総合的なサービスが提供できるのかが疑問といったような御意見もいただいておりますし、他方、法人化しないと、事務所と個人の資産が分離されないのではないかと、そういったような御意見もいただいております。
4ページ目の対応の方向でございます。
(1)指定社員無限責任制度につきましては、ここに書いてございますように、現行の制度のままでは、特に法人が大規模化していけばいくほど、他の弁理士の業務責任まで負わされるということになりますので、やはり抵抗感が強いということで、特許業務法人化が進まないことの一因となっているのではないかとも考えられます。
もともと平成12年の改正時では、こういったような制度につきましては、他の士業も無限責任制度を採用していたわけでございますが、その後のさまざまな議論の中で弁護士法人や監査法人において指定社員制度が導入されているといったような状況がございます。そして、現在、特許業務法人の平均所属弁理士数が6名程度であるような状況等を考えると、これは導入していく方向で検討していくことが妥当ではないかというふうに考えられるのではないかと思われます。
なお、先ほど申し上げましたように、6名程度ではまだ資産規模が乏しいということもございますので、すぐに制度化するかどうかは別としても、財務諸表や、あるいは賠償責任への加入状況等の情報開示を義務化するのか、あるいはなるべくディスクロージャーすべきであるということだけにとどめておくのか等についても今後議論が必要ではないかというふうに考えております。
引き続きまして、一人法人制度でございます。
これは、顧客への継続的な対応を図るべきであるというのがもともとの設立趣旨でございまして、この趣旨からは外れるのではないかということでございます。他方、弁護士につきましては一人法人が認められております唯一の士業でございますが、これはいわゆる弁護士事務所の多くが1人の経営弁護士が勤務弁護士を雇用する、いわゆる親弁といそ弁という関係のものでございまして、そういったような実態を踏まえて導入されたものですので、7割が一人事務所である弁理士とは状況が違うのではないかということでございます。
したがいまして、本件につきましては、現時点ではまだ時期尚早ではないかということで、引き続き弁理士事務所の実態や他士業における状況等に注視しつつ、今後の課題として検討していくべきではないかということであろうかと思われます。
引き続きまして、資料2の弁理士事務所の補助員の論点でございます。
現行制度におきましては、1にございますように、いわゆる弁理士法において専権業務の規定がございまして、特許出願等に係る手続の代理等については独占業務とされておりまして、弁理士法の第75条、第79条によりまして、弁理士又は特許業務法人以外の者が行った場合には罰則が科されるという規定になっております。
2の問題の所在でございますけれども、独占業務については弁理士自らが行うべきことは当然でありまして、補助員、すなわち弁理士事務所の非弁理士である補助員の方を使用して、付随業務を行わせる場合でありましても、弁理士の監督のもとで適切な範囲で行うべきであるということであろうかと思われます。しかしながら、一部の弁理士ではございますけれども、補助員に実質的な代理業務を行わせているような実態がかいま見えるということがございます。
また、名義貸しにつきましては、現在は弁理士倫理で禁止されておりますが、法律上の規定がないということで、これをどうするかということで、3にございますように、弁理士が補助員に実質的に業務を委ねた場合への対応をどう考えるか。弁理士法に名義貸しを禁止する規定を設けることについてはどう考えるかということでございます。
委員の皆様からの御意見としましては、やはり専権業務である以上、きちんと弁理士本人が対応すべきだという趣旨の御意見を皆様からいただいております。
2ページ目にまいりまして、対応の方向でございます。
まず、どういったような実態になっているのかということでございますが、後ろの方につけでございます別紙1を御覧いただきますと、2003年の弁理士1人当たりの特許出願件数の表がございます。これは2003年時点での出願上位の50事務所だけでございますので、その他の事務所はスコープに入っておりませんが、事務所の年間出願件数を所属弁理士数で単純に割った資料でございます。これを御覧いただきますと、弁理士さん1人当たり200件以上の出願をされている事務所が50件中の14事務所ございまして、300件以上を出願されている事務所も7事務所あるといったような状況でございます。特許の明細書等々を自分で直接書かないにしても、きちんとチェックをして業務を進めていくという観点から考えると、やはりこういったような事務所につきましては相当実質的な業務を補助員に行わせていると考えざるを得ない状況ではないかというふうに思われます。
それから、参考資料2-1を御覧ください。これは、特許庁の中で審査官、審判官全員にアンケートしたものを取りまとめたものでございます。詳しくは、後ほど御覧いただければと思いますが、例えば、手続書類について、審査基準等の理解に乏しいため、明細書・意見書・補正書等に問題がある。あるいは最近の法令・基準等を理解しておらず、古い法令・基準等に沿ったものを作成する。これがこの資料の2ページの手続の1-1、手続の1-2というところに回答がございます。それぞれについては「ほとんど無い」が5割、「時々ある」が4割、「頻繁にある」が8%。最新の法令等を理解していないというものについては、「ほとんど無い」が75%ではございますが、「時々ある」が21%、「頻繁にある」が4%でございます。
応答についての、、弁理士の応対を求めても、自ら対応せずに、常に事務所員に対応させている。あるいは代理人欄もしくは担当弁理士欄に氏名の記載のある弁理士が案件の内容を理解していない。そういったようなものも応答の1-1、1-2にございますように、「時々ある」「頻繁にある」というのが全体では4割から5割に上っております。
事務所員につきましても、事務所員の、のところを見ていただきますと、弁理士の業務範囲の業務を事務所員のみで行っている、あるいは弁理士に相談せずに、事務員だけで対応しているといったようなものも「時々」「頻繁」というのもある程度のパーセンテージ見られるような状況でございます。
本体資料の2ページ目に戻っていただきまして、このような弁理士の行為につきましては、特許庁がそういったような補助員の行う行為について事実上認めてきてしまっているということも問題の1つではあると考えられますので、そういったような点も含め、ガイドラインを整備して対応していくべきではないかというふうに考えております。具体的には特許庁審査官、審判官からの内容等についての連絡の応対は、弁理士事務所においては弁理士のみができるようにする。また、面接においては、事務所の補助員はもちろん補助として一緒に来ていただくのは構わないのですが、内容説明等はできないようにするといったようなことを考えております。
具体的には、別紙2をつけてございますが、こういったような点をベースに今後具体的にどういうことにしていくかを議論していくべきではないかと考えております。
また、名義貸しにつきましては、やはりこれは専権業務との関係で非常に問題でございまして、他士業では、弁護士、社会保険労務士、建築士等について明確な禁止規定がございます。こういったようなことを考えれば、やはり弁理士におきましても、明確に禁止をするという方向で検討すべきではないかというふうに考えております。
以上でございます。
○中山委員長 ありがとうございました。
ただいまの説明につきまして、何か御質問、御意見ございましたらお願いいたします。
神原委員、どうぞ。
○神原委員 弁理士事務所の補助員についてでございますけれども、ただいま御説明いただきました資料2の2ページにありますように、ガイドラインを整備するとともに、弁理士法上において名義貸し禁止規定を設けるという考え方は、大変好ましいことだと思っております。特に2ページの最後の3行ですけれども、「これまでのところ、弁理士の名義貸しが直接問題となるような事件は起こっていないものの、弁理士法においても名義貸しの禁止規定を設ける方向で検討すべきではないか」というところは、大変評価できると思っております。
以上です。
○中山委員長 ありがとうございました。
他に何かございましたらお願いいたします。
どうぞ、相澤委員。
○相澤委員 一人法人についての記述ですけれども、全体として、法人の設立要件等が緩和されている現状も踏まえて判断されるべきではないかなと思います。
○中山委員長 ありがとうございます。
野坂委員、どうぞ。
○野坂委員 名義貸しの問題ですけれども、やはり私も明確に法律に書くことが時代の要請だろうと思います。したがって、ここに書かれております方向性はこれで妥当だと考えます。
それから、以前も議論しましたけれども、特許業務法人制度の問題で、57という法人数は、非常に少ないということですから、何とかこの数を増やして、高度化するいろんなニーズに対応する体制をつくられなければいけないと私は考えます。したがって、57という非常に少ない数字にとどまっている要因として、無限責任制度の問題があるということですから、この新しい体制に改善して、特許業務法人が増えるようなことが望ましいと思いますし、今後この数が増えていくのかどうか、これも当然モニタリングをしなければいけないと私は考えます。
以上です。
○中山委員長 ありがとうございます。
他に御意見ございましたらお願いします。
どうぞ、三尾委員。
○三尾委員 指定社員制度の導入について賛成です。さらに検討していただきたいのは、たとえば弁護士法が指定社員制度を導入した上で、弁護士法人が受任している事件についても、当該弁護士が自ら関与したものに限って利益相反の問題になるというような規定の書きぶりになっていることを参考にして、指定社員制度を導入した上で、個人の弁理士の責任の範囲を明確にするという方策をとるという点です。例えば名義人を法人名にするということではなく、個人の弁理士の名前にして、なおかつ、必要な範囲で利益相反等の責任も限定していく方向で、例えば利益相反規定の条項についてもあわせて見直した方がいいのではないかというふうに考えます。
○中山委員長 ありがとうございます。
他に何かございますか。
どうぞ、戸田委員。
○戸田委員 三尾委員の意見とほとんど同じです。指定社員責任制度は非常にいいことだと思うんですが、出願の願書等には、法人名とともに、社員名をきちんと明記するということを徹底していただきたいと思います。その方が顧客にも安心感を与えると思います。その際、指定社員が10人以上並ぶとかすると、本当に代理しているのは誰なのかよくわからないということも起きるので、運用できちんとコントロールした方がいいと思います。
もう1点、弁理士事務所の補助員についてなんですが、総論としては非常に良いことだと思います。別紙2にガイドラインの案がございまして、この中では考慮していただいているとは思いますが、出願人の知財スタッフの扱いに関しては、弁理士の事務所の補助員とは同列に論じられないところもございますので、運用に当たってはぜひ産業界の意見を聞いていただきたいと思います。
以上です。
○中山委員長 ありがとうございました。
他に何かございましたらお願いします。
どうぞ、澤井委員。
○澤井委員 4ページのところで、教えていただきたいところがあります。
○中山委員長 どちらの資料ですか。
○澤井委員 業務法人の方です。「職業賠償責任保険への加入状況等の情報開示を義務化する」云々と書いてあるのですけれど、これと指定社員が無限責任を負いますということとの関係で、職業賠償責任保険というのは、業務法人が入って、そこに所属する指定社員の弁理士さんは仕事においては無限責任を負うということなんでしょうか。この辺、私は、保険の実態がよくわからないので、とんちんかんな質問かもしれないのですが教えてください。
職業賠償責任保険は、業務法人単位で入って、何か問題が起こったときには、そこに所属していて仕事をした弁理士さんは、無限責任で賠償する必要が生じたときに、ある程度カバーリングはこの保険でやりますということなんですか。
○稲垣秘書課長 業務法人が保険に入っていただいて、指定社員だけの無限責任ではカバーできない場合には、そこを保険で補っていただくということを考えております。
○澤井委員 わかりました。
○中山委員長 他に何かございましたらお願いいたします。
よろしいでしょうか。
それでは、議題もたくさんございますので、次の議事に移りたいと思います。
特許業務法人制度について(論点整理)
弁理士事務所の補助員について(論点整理)
○中山委員長 それでは、早速議事に入ります。
初めは、弁理士事務所の在り方に関しまして「特許業務法人制度について(論点整理)」及び「弁理士事務所の補助員について(論点整理)」の資料に基づきまして事務局から説明をお願いいたします。
○稲垣秘書課長 それでは、お手元の資料1及び資料2に基づきまして手短に御説明させていただきます。
まず資料1の特許業務法人制度でございます。
1ページ目、現行制度の概要につきましては、御案内のとおり、平成12年の弁理士法改正におきまして、それまでの個人事務所の経営形態に加えて創設されました特別な法人制度でございます。これは社員が弁理士2人以上で、全社員が無限責任を負うという制度になってございます。6月末現在で、法人数は57にとどまっておりまして、その利用が必ずしも十分に進んでいないという現状でございます。
3、論点にまいりますが、大きく2つございまして、1つが、いわゆる指定社員無限責任制度の導入についてでございます。弁護士法人、監査法人と同様に、ある特定の業務について、それを遂行する社員のみが指定されて無限責任を負い、それ以外の社員は有限責任とする制度についてどう考えるか。
2ページ目にまいりまして、仮にそういう制度を導入するとした場合に、顧客保護の観点からのディスクロージャー、また損害賠償責任保険等についてどう考えるか。
それから、(2)といたしまして、一人法人制度、すなわち弁理士さん1人でも特許業務法人をつくれるという制度にするかどうかということでございます。
4、議論の整理といたしまして、(1)指定社員無限責任につきまして、今までいただきました委員の皆様の御意見といたしましては、お読みいただければおわかりのように、概ねその方向でいいのではないかという感じの御意見をいただいております。
他方、3ページ目の(2)にまいりますと、一人法人制度につきましては、一人法人を認めると、1人で総合的なサービスが提供できるのかが疑問といったような御意見もいただいておりますし、他方、法人化しないと、事務所と個人の資産が分離されないのではないかと、そういったような御意見もいただいております。
4ページ目の対応の方向でございます。
(1)指定社員無限責任制度につきましては、ここに書いてございますように、現行の制度のままでは、特に法人が大規模化していけばいくほど、他の弁理士の業務責任まで負わされるということになりますので、やはり抵抗感が強いということで、特許業務法人化が進まないことの一因となっているのではないかとも考えられます。
もともと平成12年の改正時では、こういったような制度につきましては、他の士業も無限責任制度を採用していたわけでございますが、その後のさまざまな議論の中で弁護士法人や監査法人において指定社員制度が導入されているといったような状況がございます。そして、現在、特許業務法人の平均所属弁理士数が6名程度であるような状況等を考えると、これは導入していく方向で検討していくことが妥当ではないかというふうに考えられるのではないかと思われます。
なお、先ほど申し上げましたように、6名程度ではまだ資産規模が乏しいということもございますので、すぐに制度化するかどうかは別としても、財務諸表や、あるいは賠償責任への加入状況等の情報開示を義務化するのか、あるいはなるべくディスクロージャーすべきであるということだけにとどめておくのか等についても今後議論が必要ではないかというふうに考えております。
引き続きまして、一人法人制度でございます。
これは、顧客への継続的な対応を図るべきであるというのがもともとの設立趣旨でございまして、この趣旨からは外れるのではないかということでございます。他方、弁護士につきましては一人法人が認められております唯一の士業でございますが、これはいわゆる弁護士事務所の多くが1人の経営弁護士が勤務弁護士を雇用する、いわゆる親弁といそ弁という関係のものでございまして、そういったような実態を踏まえて導入されたものですので、7割が一人事務所である弁理士とは状況が違うのではないかということでございます。
したがいまして、本件につきましては、現時点ではまだ時期尚早ではないかということで、引き続き弁理士事務所の実態や他士業における状況等に注視しつつ、今後の課題として検討していくべきではないかということであろうかと思われます。
引き続きまして、資料2の弁理士事務所の補助員の論点でございます。
現行制度におきましては、1にございますように、いわゆる弁理士法において専権業務の規定がございまして、特許出願等に係る手続の代理等については独占業務とされておりまして、弁理士法の第75条、第79条によりまして、弁理士又は特許業務法人以外の者が行った場合には罰則が科されるという規定になっております。
2の問題の所在でございますけれども、独占業務については弁理士自らが行うべきことは当然でありまして、補助員、すなわち弁理士事務所の非弁理士である補助員の方を使用して、付随業務を行わせる場合でありましても、弁理士の監督のもとで適切な範囲で行うべきであるということであろうかと思われます。しかしながら、一部の弁理士ではございますけれども、補助員に実質的な代理業務を行わせているような実態がかいま見えるということがございます。
また、名義貸しにつきましては、現在は弁理士倫理で禁止されておりますが、法律上の規定がないということで、これをどうするかということで、3にございますように、弁理士が補助員に実質的に業務を委ねた場合への対応をどう考えるか。弁理士法に名義貸しを禁止する規定を設けることについてはどう考えるかということでございます。
委員の皆様からの御意見としましては、やはり専権業務である以上、きちんと弁理士本人が対応すべきだという趣旨の御意見を皆様からいただいております。
2ページ目にまいりまして、対応の方向でございます。
まず、どういったような実態になっているのかということでございますが、後ろの方につけでございます別紙1を御覧いただきますと、2003年の弁理士1人当たりの特許出願件数の表がございます。これは2003年時点での出願上位の50事務所だけでございますので、その他の事務所はスコープに入っておりませんが、事務所の年間出願件数を所属弁理士数で単純に割った資料でございます。これを御覧いただきますと、弁理士さん1人当たり200件以上の出願をされている事務所が50件中の14事務所ございまして、300件以上を出願されている事務所も7事務所あるといったような状況でございます。特許の明細書等々を自分で直接書かないにしても、きちんとチェックをして業務を進めていくという観点から考えると、やはりこういったような事務所につきましては相当実質的な業務を補助員に行わせていると考えざるを得ない状況ではないかというふうに思われます。
それから、参考資料2-1を御覧ください。これは、特許庁の中で審査官、審判官全員にアンケートしたものを取りまとめたものでございます。詳しくは、後ほど御覧いただければと思いますが、例えば、手続書類について、審査基準等の理解に乏しいため、明細書・意見書・補正書等に問題がある。あるいは最近の法令・基準等を理解しておらず、古い法令・基準等に沿ったものを作成する。これがこの資料の2ページの手続の1-1、手続の1-2というところに回答がございます。それぞれについては「ほとんど無い」が5割、「時々ある」が4割、「頻繁にある」が8%。最新の法令等を理解していないというものについては、「ほとんど無い」が75%ではございますが、「時々ある」が21%、「頻繁にある」が4%でございます。
応答についての、、弁理士の応対を求めても、自ら対応せずに、常に事務所員に対応させている。あるいは代理人欄もしくは担当弁理士欄に氏名の記載のある弁理士が案件の内容を理解していない。そういったようなものも応答の1-1、1-2にございますように、「時々ある」「頻繁にある」というのが全体では4割から5割に上っております。
事務所員につきましても、事務所員の、のところを見ていただきますと、弁理士の業務範囲の業務を事務所員のみで行っている、あるいは弁理士に相談せずに、事務員だけで対応しているといったようなものも「時々」「頻繁」というのもある程度のパーセンテージ見られるような状況でございます。
本体資料の2ページ目に戻っていただきまして、このような弁理士の行為につきましては、特許庁がそういったような補助員の行う行為について事実上認めてきてしまっているということも問題の1つではあると考えられますので、そういったような点も含め、ガイドラインを整備して対応していくべきではないかというふうに考えております。具体的には特許庁審査官、審判官からの内容等についての連絡の応対は、弁理士事務所においては弁理士のみができるようにする。また、面接においては、事務所の補助員はもちろん補助として一緒に来ていただくのは構わないのですが、内容説明等はできないようにするといったようなことを考えております。
具体的には、別紙2をつけてございますが、こういったような点をベースに今後具体的にどういうことにしていくかを議論していくべきではないかと考えております。
また、名義貸しにつきましては、やはりこれは専権業務との関係で非常に問題でございまして、他士業では、弁護士、社会保険労務士、建築士等について明確な禁止規定がございます。こういったようなことを考えれば、やはり弁理士におきましても、明確に禁止をするという方向で検討すべきではないかというふうに考えております。
以上でございます。
○中山委員長 ありがとうございました。
ただいまの説明につきまして、何か御質問、御意見ございましたらお願いいたします。
神原委員、どうぞ。
○神原委員 弁理士事務所の補助員についてでございますけれども、ただいま御説明いただきました資料2の2ページにありますように、ガイドラインを整備するとともに、弁理士法上において名義貸し禁止規定を設けるという考え方は、大変好ましいことだと思っております。特に2ページの最後の3行ですけれども、「これまでのところ、弁理士の名義貸しが直接問題となるような事件は起こっていないものの、弁理士法においても名義貸しの禁止規定を設ける方向で検討すべきではないか」というところは、大変評価できると思っております。
以上です。
○中山委員長 ありがとうございました。
他に何かございましたらお願いいたします。
どうぞ、相澤委員。
○相澤委員 一人法人についての記述ですけれども、全体として、法人の設立要件等が緩和されている現状も踏まえて判断されるべきではないかなと思います。
○中山委員長 ありがとうございます。
野坂委員、どうぞ。
○野坂委員 名義貸しの問題ですけれども、やはり私も明確に法律に書くことが時代の要請だろうと思います。したがって、ここに書かれております方向性はこれで妥当だと考えます。
それから、以前も議論しましたけれども、特許業務法人制度の問題で、57という法人数は、非常に少ないということですから、何とかこの数を増やして、高度化するいろんなニーズに対応する体制をつくられなければいけないと私は考えます。したがって、57という非常に少ない数字にとどまっている要因として、無限責任制度の問題があるということですから、この新しい体制に改善して、特許業務法人が増えるようなことが望ましいと思いますし、今後この数が増えていくのかどうか、これも当然モニタリングをしなければいけないと私は考えます。
以上です。
○中山委員長 ありがとうございます。
他に御意見ございましたらお願いします。
どうぞ、三尾委員。
○三尾委員 指定社員制度の導入について賛成です。さらに検討していただきたいのは、たとえば弁護士法が指定社員制度を導入した上で、弁護士法人が受任している事件についても、当該弁護士が自ら関与したものに限って利益相反の問題になるというような規定の書きぶりになっていることを参考にして、指定社員制度を導入した上で、個人の弁理士の責任の範囲を明確にするという方策をとるという点です。例えば名義人を法人名にするということではなく、個人の弁理士の名前にして、なおかつ、必要な範囲で利益相反等の責任も限定していく方向で、例えば利益相反規定の条項についてもあわせて見直した方がいいのではないかというふうに考えます。
○中山委員長 ありがとうございます。
他に何かございますか。
どうぞ、戸田委員。
○戸田委員 三尾委員の意見とほとんど同じです。指定社員責任制度は非常にいいことだと思うんですが、出願の願書等には、法人名とともに、社員名をきちんと明記するということを徹底していただきたいと思います。その方が顧客にも安心感を与えると思います。その際、指定社員が10人以上並ぶとかすると、本当に代理しているのは誰なのかよくわからないということも起きるので、運用できちんとコントロールした方がいいと思います。
もう1点、弁理士事務所の補助員についてなんですが、総論としては非常に良いことだと思います。別紙2にガイドラインの案がございまして、この中では考慮していただいているとは思いますが、出願人の知財スタッフの扱いに関しては、弁理士の事務所の補助員とは同列に論じられないところもございますので、運用に当たってはぜひ産業界の意見を聞いていただきたいと思います。
以上です。
○中山委員長 ありがとうございました。
他に何かございましたらお願いします。
どうぞ、澤井委員。
○澤井委員 4ページのところで、教えていただきたいところがあります。
○中山委員長 どちらの資料ですか。
○澤井委員 業務法人の方です。「職業賠償責任保険への加入状況等の情報開示を義務化する」云々と書いてあるのですけれど、これと指定社員が無限責任を負いますということとの関係で、職業賠償責任保険というのは、業務法人が入って、そこに所属する指定社員の弁理士さんは仕事においては無限責任を負うということなんでしょうか。この辺、私は、保険の実態がよくわからないので、とんちんかんな質問かもしれないのですが教えてください。
職業賠償責任保険は、業務法人単位で入って、何か問題が起こったときには、そこに所属していて仕事をした弁理士さんは、無限責任で賠償する必要が生じたときに、ある程度カバーリングはこの保険でやりますということなんですか。
○稲垣秘書課長 業務法人が保険に入っていただいて、指定社員だけの無限責任ではカバーできない場合には、そこを保険で補っていただくということを考えております。
○澤井委員 わかりました。
○中山委員長 他に何かございましたらお願いいたします。
よろしいでしょうか。
それでは、議題もたくさんございますので、次の議事に移りたいと思います。