堤卓の弁理士試験情報

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20.2.2 訂正審判Q&A(その3)

2008-02-02 15:12:24 | Weblog
訂正審判Q&A(特許庁HP)(その3)


Q13:訂正審判において訂正が認められた場合、第三者が、その訂正が認められたことに対して不服があれば、無効審判で争えば良いのでしょうか。

A13:不適法な訂正がなされた場合は、特許法第123条第1項第8号に該当するため、それを無効理由として無効審判を争うことができます。


Q14:訂正審判を請求する際に、権利者は、通常実施権を許諾されているが設定登録していない(特許法第99条1項に当てはまらない)者に対しても承諾を得る必要があるのでしょうか。また、通常実施権者の承諾がない訂正審判請求であることが明らかとなった場合、特許庁ではどのような対応がなされるのでしょうか。

A14:特許法第127条は通常実施権の登録の有無を要件としていないので、訂正審判を請求する場合には、登録の有無に拘わらず通常実施権者の承諾を得る必要があります。
 特許庁は訂正審判の請求があった場合には登録原簿に記載された通常実施権者の承諾の有無を審判請求時に提出された書面をもって確認します。
 しかし、通常実施権者の承諾を証明する書類が提出されていない場合、あるいは審理中に、許諾のない通常実施権者の存在が認められた場合には、方式上の瑕疵とされ、同法第133条第2項第2号の規定により審判長による補正命令がなされます。
 この補正命令に対し承諾書が提出されない場合には、同法133条第3項の規定により決定をもって審判請求書が却下されます。 


Q15:設定登録されていない通常実施権者は第三者に対抗はできないと理解しておりますが、訂正審判時に設定登録されていない通常実施権者の承諾も必要との関係はどうなっているのでしょうか。

A15:通常実施権者にとって特許権者は第三者にあたりませんので、特許法第99条3項(登録の効果)の規定に関係なく、同法第127条に規定する承諾が必要とされます。


Q16:特許法第126条第2項ただし書きの「九十日の期間内」に続く括弧書部分「(当該事件について第百八十一条第一項の規定による審決の取消しの判決又は同条第二項の規定による審決取消の決定があった場合においては、その判決又は決定の確定後の期間を除く。)」は、判決又は決定により一度審決が取消された後は、無効審判が特許庁に再係属し、再度の審決の審決取消訴訟が提起された後には、特許法第126条第2項本文の原則に戻って、90日間の期間制限を受けるという理解でよろしいでしょうか。

A16:特許法第126条第2項本文により、原則として無効審判の審決取消訴訟の出訴後に訂正をすることはできませんが、出訴後90日間に限っては訂正審判を請求することができます(ただし書)。
 括弧書はただし書にのみに係っていますので、当該90日間における判決または決定の確定後の期間は、訂正審判の請求が認められないこととなり、再度の審決取消訴訟が提起された場合には、提起された日から90日間は訂正審判を請求することができます。


Q17:無効審判の審決取消訴訟で差戻された再係属の無効審判が再度高裁に出訴された場合、2度目の訴訟でも出訴の日から起算して90日以内の訂正審判の請求が認められるのでしょうか。それが繰り返されると審理の遅延になるのではないでしょうか。

A17:2度目の訴訟でも出訴の日から起算して90日以内の期間であれば訂正審判の請求は認められます。
 この場合裁判所は、審理の迅速化の観点から、差戻し決定をせずに、判決を出す可能性が高いと思われます。
 従って、差戻し決定が何度も繰り返される可能性は少ないと考えられます。


Q18:無効審判に対する審決取消訴訟の出訴後に訂正審判の請求がされた場合、中止通知をするとのことですが、なぜ、審理を中止するのでしょうか。差戻し決定がなかった場合、引き続き訂正の可否は審理されるのでしょうか。

A18:差戻し決定がされた場合、訂正審判は差戻された無効審判の訂正請求として吸収されることとなっていますので(特§134の 3)、差戻し決定のされる蓋然性が高い場合には、審理の効率化の観点から、訂正審判の審理を中止する運用としております。
 差戻し決定がなされなかった場合には、請求人からの申し出を待って、審判合議体の裁量により、訂正審判の審理が再開されます。 
 なお、無効審判に対する審決取消訴訟の提起の日から起算して90日以内にされた訂正審判で、かつ侵害事件と同時係属する訂正審判、又は2度目の審決取消訴訟提起後の訂正審判については、迅速な紛争解決のため、又は差し戻しの蓋然性が低いことから、手続を中止せず、速やかに審理を行うこととしております。


20.2.2 訂正審判Q&A(その2)

2008-02-02 15:04:57 | Weblog
訂正審判Q&A(特許庁HP)(その2)
Q8&A8は省略

Q5:訂正拒絶理由通知に対して訂正明細書等を補正することができますか。また、その際の補正の範囲はどうなりますか。

A5:審判長は、訂正審判の請求が特許法第126条に適合しないときは、請求人に訂正拒絶理由を通知し、請求人はこれに対し意見書を提出することができます。
 また、請求人は、請求書の要旨を変更しない範囲で、審判請求書の補正(特§17①)あるいは訂正明細書等の補正(特§17の4)を行うことはできます。
 ただし、訂正明細書等の補正ができる範囲は、訂正事項の削除及び軽微な瑕疵の補正等の微修正に止まります。


Q6:訂正審判の請求書の要旨変更は認められないとのことですが、訂正審判請求書に添付した明細書等も、その要旨変更は認められないと理解してよろしいでしょうか。

A6:訂正審判請求書に添付した明細書等の内容の変更により、請求の趣旨である訂正事項が変わり、請求の基礎である審判を申し立てている事項の範囲や同一性も異なるものとなりますので、基本的には審判請求書の要旨を変更することとなります。


Q7:訂正審判に対して訂正拒絶理由通知がなされた場合、訂正事項の削除若しくは追加の補正ができますか。 

A7:特許法第165条及び同法第17条の4の規定により、意見書及び補正書を提出することができます。
 しかし、訂正拒絶理由通知がなされた場合、その補正が認められることは非常に困難であり、認められない場合がほとんどと言えます(訂正審判の請求の趣旨は、「訂正審判請求書に添付の明細書又は図面に訂正する」とすることであり、その明細書、図面の補正をすることは、訂正請求の審判の請求の趣旨を変更することになると考えられます。)。
 訂正事項の削除補正、誤記の補正は認められることがありますが、追加記載の補正が認められることは難しいと考えられます。
 ただし、訂正審判の請求ができる期間であれば、訂正拒絶理由通知がなされた時点でその審判請求を取り下げ、再度新たな訂正審判を請求する方法もあります。 


Q9:例えば、特許請求の範囲が請求項3まであったもののうち、訂正審判により請求項2を削除する場合、請求項3を請求項2に繰り上げる必要がありますか。

A9:請求項を繰り上げる必要があります。特許法施行規則第24条の3第2号の規定で請求項に付す番号は連続番号としなければならないとされており、訂正明細書中の請求項に抜けは認められません。


Q10:独立項Aについて、請求の範囲の減縮を目的とした訂正をする際、従属項については実質的な請求の範囲を変えないようにするために、独立項Bへと訂正をしました。この場合、独立項Bの訂正について独立特許要件を満たす必要があるのでしょうか。

A10:この場合、従属項から独立項Bへの訂正は、他の請求項についての訂正のために不明りょうとなった記載を釈明するためのものであるので、「明りょうでない記載の釈明」に該当し、独立特許要件は課されません(特§126⑤)。


Q11:実質上、特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正に該当しなければ増項訂正(請求項を増加する訂正)は可能でしょうか。

A11:特許明細書は特許権の内容を公示するものであり、また、訂正の効力は特許登録時まで遡及し、訂正が認められると権利範囲が変更されて第三者の利害に影響を与えることにもなるので、原則として明細書及び図面の訂正は許されないものです。
 しかしながら、特許無効審判の請求に有効に対処できるように、特許法第126条により、一定の事項を目的とするものに限り、明細書又は図面の訂正を許しています。
 ところで、増項訂正は、特許法第126条第1項ただし書きで訂正の目的として規定する「特許請求の範囲の減縮」(1号)、「誤記の訂正」(2号)又は「明りょうでない記載の釈明」(3号)のいずれにも該当しないことは規定の文言上からも明らかですから、特許請求の範囲の項数の増加は許されません。
 ただし、多数項引用形式で記載された一つの請求項を、引用請求項を減少させて独立形式の請求項とする場合や、構成要件が択一的なものとして記載された一つの請求項について、その択一的な構成要件をそれぞれ限定して複数の請求項とする場合は、実質的には一対一の対応関係にあれば増項訂正は可能です。


Q12:訂正請求の際の特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正について、例えば2つの請求項A,Bがあり、そのうち請求項Aを削除し、請求項Bを請求項B’と請求項B”の2つの請求項に分ける訂正は可能でしょうか(訂正前と後では、請求項の合計数では増項になっていない)。

A12:訂正の目的が特許請求の範囲の減縮にあたるか否かについては、基本的には請求項毎に判断されます。請求項Aの削除は特許請求の範囲の減縮にあたりますが、請求項Bは増項訂正になっており、特許請求の範囲の減縮にあたるとは認められません。
 従って、訂正の前後で請求項の合計数が同じであったとしても、訂正要件に違反するものとして当該訂正は許容されません。

20.2.2 平成20年改正法の骨子

2008-02-02 08:03:39 | Weblog
平成20年改正法(案)の骨子が発表されました。

特許法等の一部を改正する法律案について

1.法律改正の目的
 知的財産権の戦略的な活用を促進する観点から、通常実施権等に係る登録制度の見直しを行うとともに、迅速かつ適正な権利の保護のための環境整備を図るため、不服審判請求期間及び特許関係料金の見直し等を行う。

2.法律改正の概要
 知的財産権の戦略的な活用の促進と、迅速かつ適正な権利保護の観点から、特許法、実用新案法、意匠法、商標法及び工業所有権に関する手続等の特例に関する法律について、以下のような措置を講ずる。

(1)通常実施権等登録制度の見直し(特許法・実用新案法)
 ① 特許の出願段階におけるライセンス(他者への実施許諾)を保護するための登録制度を創設。(登録によりライセンシーが第三者対抗力を具備。)
 ② 特許権・実用新案権に係る通常実施権の登録事項のうち、秘匿の要望が強い登録事項(①ライセンシーの氏名等、②通常実施権の範囲)の開示を一定の利害関係人に限定。

(2)不服審判請求期間の見直し(特許法・意匠法・商標法)
 ① 特許制度において、拒絶査定不服審判請求期間(現行:30日以内)を「3月以内」に拡大。また、権利を求める技術的範囲(特許請求の範囲)等の補正可能時期(現行:審判請求から30日以内)を、審判請求と同時にのみ可能と変更。
 ② 意匠制度と商標制度において、拒絶査定不服審判と補正却下決定不服審判に係る審判請求期間(現行:30日以内)を「3月以内」に拡大。

(3)優先権書類の電子的交換の対象国の拡大(特許法・実用新案法)
 ○出願人の利便性向上及び行政処理の効率化の観点から、優先権書類 ※の電子的交換を世界的に実現するため、優先権書類の発行国のみならず、その他の国や国際機関で電子化された優先権書類のデータの受け入れについても可能とする。
※最初に出願した国(第一国)への出願日がその後に出願した他の国での審査上の判断基準日となることを証明する書類。

(4)特許・商標関係料金の引き下げ(特許法・商標法)
 ① 中小企業等の負担感の強い10年目以降の特許料を重点的に引き下げるなど、特許料を引き下げる。(平均12%の引き下げ)
 ② 諸外国と比較して高額であり、中小企業等の利用割合の高い(件数で36%)商標の設定登録料等を引き下げる。(平均43%の引き下げ)
(法施行5年経過後に、料金関係規定の施行状況について検討を行うこととしている。)

(5)料金納付の口座振替制度の導入(工業所有権に関する手続等の特例に関する法律)
 ○国庫金の電子決済インフラの整備に伴い、特許料等の料金の納付手続の簡素化を図る観点から、料金納付について、銀行口座からの振替えによる納付制度を導入。