■「さよなら子供たち/Au Revoir Les Enfants」(1987年・フランス)
監督=ルイ・マル
主演=ガスパール・マネス ラファエル・フェジト フランシーヌ・ラセット イレーヌ・ジャコブ
反戦映画はこれまでにも多くの作品が製作された。特に、むごさを直接描いて反戦の主題を打ち出した映画はたくさんある。ホロコーストをテーマとした映画と言えば、「シンドラーのリスト」のようにユダヤ人収容所をまさに描いたもの、「戦場のピアニスト」のようにユダヤ人が隔離されている地区の悲惨な様子を描くもの。映画化された「アンネの日記」も隠れて生活する厳しさが僕らの心に残ったmのだ。それらは僕ら観客の視覚に訴えてくる。だが、この「さよなら子供たち」は違う。同じホロコーストをテーマとしていながら戦場は全く出てこないし、冷酷なドイツ兵が出る場面もそれ程多いわけではない。それでも「さよなら子供たち」が描くホロコーストの怖さは僕らの心に直接響いてくる。それは、戦争が人間の日々の生活を着実に崩壊させていく過程をみせてくれるからだ。
この物語はルイ・マル監督の少年時代の体験に基づいているという。パリが占領下にある大戦中。主人公の少年は疎開先の寄宿舎制の学校で生活している。そこに新たにやってきた少年。勉強もできてライバル視され始めるのだが、実は彼はユダヤ人だった。やがて学校にゲシュタポの捜索が・・・。
ユダヤ人であることを主人公が知ってから先は、観ていてハラハラする。一体いつバレてしまうのか、二人の関係はどうなってしまうのか・・・観ているこちら側まで緊張してしまう。しかもその緊張は映画の最後まで途切れることはない。ゲシュタポに連れて行かれる朝がラストシーン。「ユダヤ人がいるだろう」と教室で言われて、つい振り返ってしまう主人公。その行為が決め手になってしまう。悪いのは戦争。だけど、子供にとってはあの時自分が振り返らなければ・・・との気持ちが残るのは当然。黙って手を振る主人公。物言わぬ場面だけに、そこに込められた監督の長年の思いが伝わってくる。連れ去られる者と見送る者。同じ人間なのに・・・何が違うと言うのだろう。そう思えば思う程切なくなる。
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監督デビューした名匠ルイ・マルが
55歳の時の作品ですね。
彼はその時立ち止まり、自分が歩んできた
人生と自分自身を見つめたのでしょうか。
年を重ねて何回も観たい映画です。
「死刑台のエレベーター」は学生時代に映画館で観ました。なんてクールな映画なんだろう・・・と感激したのを覚えています。「恋人たち」も映画館だったなぁ。「地下鉄のザジ」がお気に入りだったりします。はい。