Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ミルク

2009-09-19 | 映画(ま行)

■「ミルク/Milk」(2008年・アメリカ)

監督=ガス・ヴァン・サント
主演=ショーン・ペン エミール・ハーシュ ジョシュ・ブローリン ジェームズ・フランコ

自らゲイであることを明かして、ゲイやマイノリティの地位向上の為に活動したハーヴェイ・ミルク氏。以前に地元の映画館でレイトショーで上映されたドキュメンタリー映画(残念ながら観られなかったが)でその存在は知っていた。本作は、そのミルク氏をショーン・ペンが演じた伝記映画である。

言われなき差別を受け続けているマイノリティを救おうとするハーヴェイの勇気と行動には感動する。彼の人柄や周囲の人々に支えられたこともあるけれど、その前向きな行動はやはり人とは違う。落選した選挙であるにもかかわらず、事務所には殺伐とした空気はない。損得勘定ではない人間的なつながりがそこにあるからなのか。「40歳になるのに人に誇れることを何もしていない。」そしてみんなの為に出馬を決意する。自分にこういう行動はとれるだろうか。

 彼の政治活動を快く思わない人々がいる。人には価値観がさまざまあることはもちろんだが、ハーヴェイに異を唱える人々は残念なことに偏見に満ちた人々だった。ハーヴェイは結局、私的な恨みから射殺されてしまうのだが、その裏側にそうした社会的な偏見があったことも無視はできない。射殺した同僚議員ダン・ホワイトはわずかな実刑で社会復帰することになるのが、その証拠ともいえる。この映画で我々が知ることは、何よりもハーヴェイ・ミルクという人物。
「希望がなければ人生は生きる価値などない。だから、希望を与えなければ。」
という彼の台詞は心に響いた。多様な価値観をもつアメリカ社会の現実、そして人間はいかに不寛容な生き物であるか、を僕らはこの映画で思い知る。そうしたことを考える時間を得たことが何よりも収穫なのかもしれない。

ショーン・ペンはいつもよりもやや声を高めに発し、”しな”をつくるような動作で役になりきっている。この人の演技こそが本当にいい仕事だ。この映画でオスカーを獲得したが、それも納得。ガス・ヴァン・サント監督がゲイの映画というと「マイ・プライベート・アイダホ」がある。男娼という役柄でゲイが扱われるだけだし、リバー・フェニックスが美しかった。本作は・・・駅でいきなり「誕生日を一人にさせないでくれ」と言ってナンパしたり(しかも濃厚なキス!)、男性二人が絡み合う場面が続くのは、わかっちゃいるけどちょっと生々しく感じられて・・・。





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4 コメント

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銃が憎い! (ミキスケ)
2009-10-01 15:15:09
見終わってからもしみじみと、ショーン・ペンの名演と
時代背景のどす黒さが生々しく後を引く映画でしたね。

命をかけて存在理由と戦う彼の姿はとても正直で人間臭く、
弱さを隠そうともせずに素直に生きているなあ、と思いました。

しかし、ゲイの映画には名作が多い気が…。
古くは高校生の時に初めて見て衝撃的だった「モーリス」。
ウォン・カーウァイの「ブエノスアイレス」、
そして「ブロークバック・マウンテン」。
ちなみに、私が一緒にお酒を飲んでみたい芸能人は
おすぎとピーコです。
返信する
ミキスケさんへ (tak)
2009-10-04 15:29:47
個人の思いを打ち砕く銃弾。
いろんな人の価値観をお互い認めあえる社会であればよいのに。
素直にそう思える映画でした。

ショーン・ペンはほんっとにいい仕事しますよね。そこで稼いだ分を自身の監督作で費やす。すごいなぁと思います。

ゲイ映画でないけれど、男と男がキスする場面で映画館の暗闇で「ああーっ!」と声をあげそうになったのは、ダスティン・ホフマンが女装する映画「トッツイー」だったりする(笑)。
返信する
こんにちは~☆^^ (メル)
2009-10-31 09:06:31
takさん、こんにちは♪^^

TBどうもありがとうございました☆

ミルクが残した”もしもの時テープ”を撮ってるシーンから始まり、それを基に物語りが進むという展開になっていたので、流れもスムースでしたし彼の人となりがとても良く伝わって来ました。
こんな風にゲイの平等が幕開けたんだなぁ、彼の功績は大きいなぁって思いました。
でも、この後またAIDSの事があって、彼らは受難の時代を迎えてしまうことになりますが・・。
今では、そちらも偏見だったってことがわかってきてますが。
ゲイに対する偏見、その他様々な事に対する偏見って、なかなか無くならないですよね~。

ショーン・ペン、本当に見事に彼を演じてましたよね~!
大げさになりすぎず、でもしっかりと。
さすがだなぁって思いました。
脇の人たちもみんな素晴らしかったし、知らなかったことも知ることが出来たし、とても良いもの見せてもらったなぁって思いました。
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メルさんへ (tak)
2009-11-01 10:52:39
コメントありがとうございます。

ショーン・ペンの熱演あっての映画です。先日「リッジモント・ハイ」をご覧になったようですが、「プレイボーイ」のグラビアの話してるあの頃の彼からすると、成長しましたよね(比べちゃいかんか)。

偏見の恐ろしさを思い知らされるし、こういう人々の活動があったから今があるんだな、とも思いました。

>でも、この後またAIDSの事があって、彼らは受難の時代を迎えてしまうことになりますが・・。
この時代のお話がミュージカル「レント」ですよね。映画も素晴らしかった。
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